31周年記念スピーカー(ナウい女性用インテリアスピーカー)開発開始。

31歳の誕生日がそろそろ迫ってきました。自分への誕生日プレゼントとして、自らスピーカーを自作開発するというXX記念スピーカープロジェクトですが、今年もやりたいと思います。
昨年の30周年記念スピーカーは、完成が結局誕生日を3ヶ月も過ぎてしまいました! 参考:https://www.spacewalker.jp/archives/category/nikolateslaproject

昨年は、SonusFaberの数百万円のスピーカーであるAmatiを自作スピーカーで迫ろうというコンセプトのまま始まりました。ユニットはデンマーク、ノルウェーから個人輸入し、エンクロージャー(外箱)も密度が高いフィンランドのバーチ材を使い、コリコリのスピーカーとなりました。重さも1本35キロを超え、巨大なスピーカー過ぎて、ちょっとやりすぎました。それなりに素敵な音は出ましたので、今年はコンセプトをがらっと変えて、ナウい女の子も使えるような素敵なスピーカーにしたいと思います。

昨年は、ニコラテスラというスピーカー名にしましたが、今年はナウい女の子も使えるということで、名前も素敵なものにしなければなりません。まだ開発中なので素敵な名前が思いついたら、また公開したいと思います。

さて、31周年記念スピーカーは、もうコンセプトは決まっておりまして既に開発に入っています。

・室内の電灯を付けるライティングレールをご存じでしょうか?そのライティングレールにワンタッチで取り付けられるスピーカー。外観はスポットライトのような形でおしゃれに。
・普通の電灯・ライトと同様にレールに付けるだけで、簡単に取り付けられる
・PC・iPod、iPhone 3GsなどからBluetoothでスピーカー内部のBluetooth受信機に音声を飛ばし、同じくスピーカー内部に入っているパワーアンプで増幅し、スピーカーを鳴らす。つまり配線はなしです。ライティングレールから電気だけ取り出して、スピーカーケーブルなどはBluetooth経由で無線で飛ばすので、配線作業が苦手な人でもばっちり!
・ライティングレールは普通天井に近いので、音響的にも部屋を包み込むような配置にできる。またスピーカーを床に置かないのでフロアを有効活用できる。
・スピーカーの音質はスポットライト型なのであまり大きくできないが、できるだけ高音質を狙う。
・もちろん2つ作って、L,Rのステレオには対応する(あたりまえ)

spotlight

いわゆるこんな感じのライトの外観で、ライトではなく、スピーカーになる感じです。音声は、無線で飛ばすので配線はなし!

既に開発はスタートしており、
・Bluetoothモジュールによる音声の送受信:完了
・小型デジタルアンプ部:完了
・ライティングレール:部屋のレールを使う
・ライトの外側部:本当に偶然ですがお知り合いに2つ譲ってもらいました(ほぼ奇跡)
・スピーカーユニット:とっても素敵なDream Creationのウッドコーン・フルレンジスピーカーを使います。

誕生日に間に合うように急ピッチで開発中です!
結構素敵だと思うのですが、皆様いかがでしょうか?

試作品ができて音が良かったら、ご希望の方にクローンを開発します。欲しかったら言ってくださいね。

追記:コメントなどで、iPhone 3G (3GSではない)、iTouchなどでBluetooth A2DPに対応していないと書きましたが、iPhone OS 3.0でサポートする様ですね。少し前はハードウェアの関係で難しいみたいな情報があった気がしますが・・・。まだ私が実際には試していませんので、確かめてみます。

高画質・高音質ベルリンフィルハーモニー[Digital Concert Hall]演奏インターネット配信

久しぶりに感銘を受けるインターネットサービスを見つけました。
世界最高と名高いドイツのベルリンフィルハーモニー管弦楽団(Berliner Philharmoniker)の生演奏を、インターネットのライブ配信で見ることができます。(恥ずかしながら最近知りました)。サービス名は、そのまんまですがDigital Concert Hallです。

・映像はHDクオリティで大変美しい。H.264のHD映像です。
音声はPCM (非圧縮)で大変すばらしい。訂正:320kbps AACとのことです。とはいえ十分すばらしい音質です。
・再生はFlash Playerベースなので気軽に見られる(フルスクリーンも可能)
・生演奏は、演奏開始数時間前から会場をみていられて、臨場感もある。
・時差があるので、生で見るのは少々大変ですが、アーカイブで過去の映像も見られる。
スペックに関しては、http://www.berliner-philharmoniker.de/fileadmin/pressematerial/DCH/Flyer_DCH_09-10_ENG.pdf の14ページを参照とのこと。
・もちろん有償ですが、年チケット(シーズンチケット)が89EURで、1年間全演奏+アーカイブが見放題です。

Berliner Philharmoniker Digital Concert Hall

20090410_bp.jpg

ウェブのインターフェイスも極めてかっこよく、素晴らしいネットサービスだと思います。
インターネットを使って映像・音声のリアルタイム配信なんて、もう何年前からのベタなサービスですが、
やはりコンテンツの質、最新のブロードバンドを使った高音質・高画質映像があると違いますね。普通に感動致しました。

家では、ほとんど騒音がしないデスクトップPCがありまして、そのPCはHDMI経由でハイヴィジョンテレビに接続されています。
このDigital Concert Hallにアクセスし、テレビにフルスクリーンで映像を出し、音声は、光ディジタルで、AVアンプに送り、
AVアンプからプリアウト経由でパワーアンプに接続して、音を鳴らしています。もちろん生演奏にはかないませんが、
大変素晴らしい環境で、家に居ながら大満足です。サンプルで少し見られますので、まずは雰囲気を味わってみてください。かなり引き込まれると思います。

Focal Chorus 826V (仏製スピーカー)との出会いと自作スピーカー熱再燃。

新宿のビックカメラのPure Audioコーナーをたまたま覗いたところ、フランス製のスピーカーメーカーFocalChorus 826Vというスピーカーが置いてありました。Focalは、30周年記念スピーカーを開発するときに、スピーカーユニットの候補に挙がったフランスのメーカーであり、ユニットだけではなく、スピーカーシステムも開発しています。Focalは、過去に日本に輸入されましたが、一度輸入停止になり、去年あたりからまた復活した様です。ユニットの性能を見る限り極めて優秀な会社なので、スピーカーシステムとしてくみ上げた際の音質は大変興味がありました(実際には聞いたことがなかったので)

さて、ビックカメラで視聴できたのは、FocalのChorus 826Vというトールボーイ型のスピーカーです。
ビックカメラ価格で1本12万円(そこから10%ポイント還元)位だったかと思います。

20090327_focal_chorus_826v.jpg
Chorus 826V

音質は極めて良かったです。自作スピーカー家が、敢えてブログに完成既製品スピーカーを取り上げるわけですから、おすすめの製品と言えます。
クラシックと女性VocalのCDを掛けてもらいましたが、低音部を中型のミッドウーファーで構成されているので、ボスボスした重さはないし、女声の高音もきれいに抜け切れて素晴らしい音質でした。
私自身、お店で既製品のスピーカーを視聴したのは久しぶりでした。その時に気がついたのですが、昨年の30周年記念スピーカー作りはいつの間にか耳力(そんな言葉はないですが)を向上させていました。音を聞けば、ユニット間のクロスオーバーの周波数とバスレフポートの周波数(バスレフポート=低音を拡大させる穴)がだいたいわかるようになっていました。私が思った周波数を店員に聞いたところ、カタログを確認し、その値がドンピシャだったのでびびっていました(私もびびりましたが)
いつの間にか身についていたこの”効き耳”は、ちょうど悟空とクリリンが長い間背負っていた甲羅を外してジャンプした時の様な感覚と、ムスカがラピュタに到着して黒い石版の文字が読めたときのような感想です。

話が反れましたが、この効き耳はいわゆる絶対音感のような”才能”ではなく、このくらいの周波数に設定すれば人の声はこんな感じで伸びる(or 分断される)などの”経験”と言えます。30周年記念スピーカーでは、フィルタをFIRのディジタルフィルタで構成していたため、クロスオーバー周波数は任意に設定が可能でした。周波数を変えては聞くという開発の追い込み経験が、この”効き耳”を得る結果となりました。この効き耳による定量的な評価により、自分自身も好きな音の傾向があることに気がつきました。

そういう経験と個人的な好みから、今回のFocalのChorus 826Vというのはとても気持ちが良く素敵なスピーカーでした。1本12万円という値段を一般の人は高いと思うかと思います。一方でFocalのユニットの値段、MDFとはいえ綺麗なエンクロージャー(箱)、心地よくセッティングされた音質など、そして何よりも人件費を考えると、1本12万円は驚異的に安いと思います。30周年記念スピーカーは4ヶ月掛かっていまので、時給で換算すればかなり高額です(笑)円高・ユーロ安の影響もありますが、このスピーカーはかなりおすすめだと思いました。Bose, JBL, Tannoy, B&Wに比べると日本では若干マイナーで、視聴できるお店も少ないですが、ピュア・オーディオ、またはホームシアターのフロントスピーカーに高音質を求めるなら良いスピーカーだと思います。秋葉のヨドバシ、新宿のビックなどで聞けますので、お暇なら聞いてみてください。

さて、今回ふと出会ったFocalのスピーカーで、また自作スピーカー熱が再燃してきました。30.5年記念として、小型のスピーカーをまた作ることを決めました。

東京インターナショナルオーディオショウに行ってきました(オーディオ談義)

表題の通り、この時期に毎年行われてる高級オーディオの祭典「東京インターナショナルオーディオショウ2008」に行って参りました。車で言えば東京モーターショー、カメラで言えばフォトキナ、家電で言えばCEATECにあたる新製品オーディオ機器のイベントです。昨年も行って参りましたが、この1年で私のオーディオの知識は幾分向上しておりましたし、何本もスピーカー、アンプを作った経験からも、今年は客観的に冷静にオーディオを評価できるのではないか思っていました。もう一つの目的として、製作した30周年記念スピーカーのお手本となった本家Sonus FaberのAmati Anniversarioを生で聞き、完成したスピーカーとの音質比較を行うという目的もありました。

実際に行ってみた感想は、例えて言えば、天空の城ラピュタでムスカがラピュタ内の黒石の文字を”読める・読めるぞ”と言って感動したくらいに、各社の製品の実力、構成、性能、使用ユニット、材料原価、木材種類、塗装の方式などが手に取るように分かりました(笑)。まずスピーカーを見れば、何のユニットを使っているかわかりますし、エンクロージャーの大きさ、方式でだいたいの音の感じは予測でき、実際にデモを聞いても”まぁこんなものかな”という感じで掴めるようになっていました。この1年の知識は(善し悪しは置いといて)割りと使えるなと思いました(笑) 。このオーディオショウは、基本的に高級オーディオが中心なので百万円を裕に超える製品ばかりですので、原価を考えると高いなぁという商品がやはり多い印象でした。とはいえ、私の30周年記念スピーカーも設計や製作には多大な時間が掛かっていますし、あれを時給で積み上げていったらそんなものかなとも思いました。

某メーカーでは、提携しているオーディオケーブルメーカーのエンジニアさん(外国人)が、如何にこのケーブルはすげーのかを熱く語っていました。ケーブルのプラグに半田付けをするのは音が劣化するので、全て純銀削りだしで作ったとのことです。いわゆるRCAのアナログオーディオケーブルですが1m数十万円する高級ケーブルです。私からしたら突っ込みどころ満載ですが、その説明に”おおなるほど”と聞いている多くの聴衆の人々を見ると、オーディオは趣味の1つではあるけど、やはり宗教チックだなと思いました(失礼ですが)。オーディオメーカー全体を広い目で見ると、確かにスピーカー屋、ケーブル屋、アンプ屋はそれぞれその分野で最高のパフォーマンスを出そうとがんばっていますが、やはりオーディオは音源から耳に入る音波までのトータルシステムなので、各分野のそれぞれの追求がトータルシステムとしては大して効かない事が多いような気がしました。今回のオーディオショウでは、日本の某高級アンプメーカーが展示品として高級なプリメインアンプのスケルトンモデル(天板がアクリルで中の回路が見えるようになっている)を展示し、中の回路が見せるようになっていました。正直、拙いながらも人工衛星やらいろいろな基板設計をしている私が見ても、高級アンプ製品の基板がすごいとは全く思えず、数百円の海外製半導体がそれほど上手くない半田付けで取り付けられているという印象です。半田は焦げていてそれを洗浄もしていないですし(宇宙に行く基板では考えられない)、基板パターンもこれで本当にカタログに書いてあるような徹底的にノイズを低減なんていえるほど凝ったパターンかなと突っ込みどころ満載でした。あの程度の半田付けレベルで何十万として発売しているアンプの後ろに、半田付けの劣化を気にして全部純銀で削りだしたケーブル屋のこだわりが悲しくて仕方ありません(笑)。これは一例ですが、このように拘りは分かるけど、結果としてその拘りは無効になってしまったり、そもそも人間に半田付けの劣化を認識させることに無理があるので、我々消費者としては、過剰な性能追求をしている高額なオーディオを買う時は一度冷静に判断する必要があると思います。

さて、オーディオの音質を最も左右するのはスピーカーです。ケーブル・アンプに対してスピーカーは完全にスピーカーそれぞれ明確に音が違います。しかし、どれが良いかなどの絶対的な判断はできず、むしろ自分で聞いていてその音が好きかということがとても重要だと思っています。昨年、このオーディオショウでSonus FaberのAmatiを聞き、すごく感動した記憶があります(どんな音か覚えていませんが、感動したという行為に対する記憶です)。SonusFaberのAmatiを見てきましたがやはりスピーカーユニットは自作30周年記念スピーカーとほとんど同じユニットで、ミッドレンジに関してはよく見ると私が使っているユニットの方が(カタログ・値段的に)1つ性能が良いものでした。同じユニットでエンクロージャーを設計していますので、内部構造やバスレフのサイズ・構造のアタリはついており、実際のamatiを見ても私の設計とほとんど同じでした。やはり基本的なスピーカー設計理論は同じだなと思いました。さて音質ですが、当日の朝に自宅の部屋で自作スピーカーを聞いていきましたが、やはり数時間後にしかも違う部屋、違う環境(人の多さ=洋服で吸収される)で比較しても何とも言えないのが正直なところです。しかし傾向は明らかに似ていました。Amatiの方が少しウーファーの音圧を上げていましたがあれはこちらもオフセットを掛ければ良いので、調整可能です。ミッドレンジはおそらく緩やかなアナログパッシブフィルター(-6dB / octくらい)で掛けていて、全可聴域に対して割と主張している(音圧を出している)印象でした。とはいえ同じユニットを使ってエンクロの傾向も一緒なのでやはり同じ傾向の音がでていたと思います。そういう意味で今回の30周年記念スピーカーはまぁ成功かなという印象で安堵感がありました。380万円のスピーカー(Amati)と材料費約20万円の自作スピーカーですから、(厳密な比較はできないとはいえ)、まずまずがんばったかなという感想です。

Amatiでのデモは、クリスチアン・ツィマーマン(Krystian Zimerman)のラフマニノフのピアノ協奏曲2番を流していました。スピーカーを拘りはじめて、自作などをしていく内におもったのですが、はっきり言って良いスピーカーでクラシックを聴くのは本当に良いのかなという印象です。ツィマーマンの演奏はおそらく良い演奏だと思います。一方で、録音技術が当時はイマイチで、どんなに音の出口(スピーカー)を拘っても、録音があのレベルでは全く感動は薄いと思いました。もちろん生演奏は、どんなに録音技術やスピーカーが成熟しても、比較対象外として良いものと言われ続け、生で聞かないから感動しないと言われるのでしょうが、それにしても古い録音のクラシックをこの近年全く聞く気が起きません。紀尾井ホールの音響も最悪で、生演奏でも全くもって不満ですが、生の臨場感ということでとりあえず我慢はできます。一方で、録音レベルの悪い古いクラシックを良いスピーカーで聞くほど感情が高揚されない行為もなく、何とも聞く気が起きません。スピーカー・オーディオ好きは、最新の録音で高音質なものでスピーカーをセッティングする傾向があります。私も例外ではないのですが、これを繰り返していると耳がへたに育ってしまい(贅沢になってしまい)、S/Nの悪い古い演奏がむしろ苦痛でしかないようになってしまいます。そんなこんなで、私はあれほど好きであった、フルトヴェングラーなり、ホロヴィッツなり、ルービンシュタインなり、コルトーなりの古いクラシック熱が0になってしまい、例え無名の新人でも近年録音したクラシックしか聴く気か起きなくなってしまいました。これを書いたのは、Amatiという高級スピーカーでも同じ残念な印象を受けたので、やはりJazz Vocalなりがメインになっていくのかなと思った次第です。

それにしても役に立たないエントリーとなっておりますが、お時間があれば今週末の土日、銀座(有楽町)に行く機会がありましたら、高級オーディオという世界に是非触れてみて頂きたいです。オーディオ評論家と呼ばれる人々が、ワインを表現するソムリエの様に豊かな日本語表現でオーディオを語っておられます(笑)。男性率の高さが異常で、年齢層も高すぎで、どう見ても先細りの分野だと危機感を覚えました(笑)。まぁ携帯で音楽を聴く時代ですものね。

さて、私のオーディオ分野の趣味熱もそろそろ終了です。この世界をさわり程度ですがある程度わかりましたし、納得したスピーカー作りや好きなスピーカーも各社比較して見つかりましたし、音楽はもちろん聴いていきますが、オーディオ製作という趣味の時間として掛けるプライオリティは少し下がっていきそうです。趣味を1年に1つとしても、人生で多くて30~40個くらいしか出来ないと思うので、どんどん次に行かないとあっという間に人生が終わってしまいます。次は着物系、和系ですかね。

30周年記念スピーカー開発(その3:組み立て)

30歳の誕生日を迎えるにあたり開発が始まった30周年記念スピーカー開発プロジェクト(Nikola Tesla Project)ですが、開発に大きな時間が掛かっているのと私も割とばたばたしていて、とっくに30歳の誕生日を超えてしまいました。毎日コツコツと開発し、やっと組み立てのフェーズまで来ました。3次元CADでスピーカーボックスの設計をして、木材加工に結局2ヶ月程度掛かってしまいました。

20080902_speaker_diy.JPG 
幅28cm、奥行き35.4cm、高さ1050cmで割と大型です。重さは現時点で1本29キロありました。
(部屋が超汚いですが・・・)

スピーカーボックスは、見た目単純な形に見えますが、中身はそれなりに計算しており、理想的な音が出る予定です(あくまで予定)。
今回はスピーカーボックスの木材にフィンランドバーチと呼ばれる、密度が高く、見た目も割と美しい材料を使っています。

20080902_speaker_diy_6.JPG
スピーカーユニットが取り付けられるフロントバッフルは、スピーカーのフェイスがちゃんと座るようにザグリを入れてあります。
スピーカーユニットは前からねじ止めするわけですが、中に手を入れられないため鬼目ナットをねじ穴の裏側から打ち込んであります。

20080902_speaker_diy_8.JPG
内部に入っている吸音材です。
吸音材はかなり悩みましたが、写真のような凹凸のある吸音材を使っています。
結局吸音材といっても極低音は切ることはできません。吸音効果を高めるために、吸音材の厚みをあげる、表面積を増やすなどいろいろな要素がありますが、今回いろいろ選んだ結果、このような凹凸型を採用しました。

20080902_speaker_diy_5.JPG
スピーカーの背面です。ウーファー(低音)、ミッドレンジ(中音)、トゥイーター(高音)+アルファで4つのターミナル(スピーカー端子)が用意されています。
このターミナルも割と良いものを使っています。真ん中の黒い穴は低音用のバスレフダクトです。
フィンランドバーチはMDFなどの材料に比べ、どうしても反りがあるため、CAD通りにカットしても組む際にズレが生じます。
それを、ハタガネで押さえながら木工用ボンドで接着していきます。ハタガネを6個使って、木工用ボンドを塗り、超高速で組み合わせハタガネで押さえつけます。
内部構造が複雑であるため、接着箇所が多点あり、ボンドを塗っている間にどんどん乾いてゆき、かなり慌てました。
結果としては、2本とも1ミリもズレることなく組み上げに成功しました。

20080902_speaker_diy_7.JPG
フィンランドバーチは表面の木目も美しく綺麗な材料です。
(左から高音、中音、低音ユニットです)

これから音出し調整が始まります。音がまともに出るようになったら、最後に塗装を行う予定です。
塗装は、浜松にあるピアノ塗装を行っている業者に依頼する予定です。
ピアノと同様の鏡面塗装をこのスピーカーに施すことで大変美しいスピーカーになる予定です。
(しかし、音がへぼかったら、塗装なしでこのまま行きます。お金がもったいないので)

自作スピーカーでどこまで高音質が狙えるかわかりませんが、目標は高くもって、
cabasseのLa Sphère
Sonusfaber Stradivari Homage
KEF MUON
Steinway Lyngdorf Model D
などの超高級スピーカーに迫れるように最後調整をがんばりたいと思います。

30周年記念スピーカー開発(その2)

全くもって評判が悪い30周年(30歳)記念スピーカー開発プロジェクト(NikolaTeslaProjet)の”その2”の記事です。 

今回は、Tweeter, Mid, Wooferの音圧周波数特性(SPL Frequency Response)をそれぞれ比較し、3ユニット間の音圧オフセット値を決定します。実際にはスピーカー完成時にコンデンサマイクで計測し調整予定ですが、その前の予想値です。

まず各ユニットの周波数に対する音圧(SPL : Sound Pressure Level)のデータですが、数値データとして各社公開されている訳ではありません。今回は、PDFや画像で公開されている特性図からデータを細かく抽出し、Excelで処理しました。その際、SPL Tracer & SPL Viewerという便利なツールを使っています。画像からデータを抽出するのを支援してくれる重宝ソフトです。

■3ユニットの標準音圧特性
nikola_3units_spl_freq_nominal.jpg
3つのユニットを標準的な入力(1W, 1m)での周波数特性図です。今回、クロスオーバー周波数は、200Hzと3000Hzを想定しています。見て分かるように、Tweeterが高く、Wooferは低いような感じです。

■3ユニットの内、Wooferの音圧を上げ(+6dB)、Tweeterの音圧を下げ(-4dB)た図 
nikola_3units_spl_freq_adj.jpg
低かったWooferを6dB上げ、高かったTweeterを4dB下げています。これによりクロスオーバー周波数の200Hz, 3000Hzあたりでほぼ同じ音圧になり綺麗に繋がります。

■3ユニットのレンジ外をカットした図
nikola_3units_spl_freq_adj_filtered.jpg
クロスオーバー周波数の前後で余計なラインを削除しました。
今回FIRディジタルフィルタを用いるため、急激な減衰で矩形型にフィルタリングできるので、このくらい理想的なレンジカットが可能です。このスペック通り3ユニットが鳴ってくれると低音から高音まで綺麗なフラットスピーカーができそうです。

今回、3ユニットの理想的・期待的な周波数特性ができましたが、これを実現するためには、素敵なスピーカー箱(エンクロージャー)と高性能なディジタルフィルターが必須です。現在、その辺りの設計を行っている状態です。うまくできると良いですが。

お車にお乗りの方へアンケート!

お気軽にお答え頂きたいのですが、お車(チャリンコにオーディオ付けている人も可)のオーディオはどうされていますか?オーディオソース(音源)と、スピーカーについて教えてください。少し参考にしたいので。コメントもしくはメールで頂けると幸いです。

1)音源・アンプなどについて
回答例:
・CDプレーヤー
・MDプレーヤー
・iPod接続プレーヤーが搭載されている
・iPod + FMトランスミッター
・iPod + 自作DAC + 自作AMPなど
・iPod以外のオーディオプレーヤー
・CDプレーヤーなどを標準の物から高音質なものに変更している(型番など)
・ラジオしか聴かない。
・チャリンコの漕ぐ力で発電し音が鳴っている(宮下好み)
・カラオケできるようにマイクが付いている(笑
など。ご自由に。

2)スピーカー
回答例:
・車に付いていたのそのまま
・業者にたのんでスピーカーを付け替えた
・自分でスピーカーを買ってきて付け替えた
・車の軽量化をはかるためスピーカーを取り外した
など、ご自由に。

1,2)共通で何かコダワリや、改造した理由などもお気軽に教えて頂ければと思います。長くなりそうならメールでもOKです。車って音楽を聴く環境としては結構最適ですよね。音量も上げられますし。複雑な内部空間なので、音響設計は難しいとは思いますが、少し興味があります(車を買うことは今のところ興味がありませんが。)。

30周年記念自作スピーカー開発開始(その1)

来月、ついに30歳を迎えることになりました。誕生日に何かイベントをやったことが無いのですが、 せっかくの節目(?)なので、30周年記念として、また自作スピーカーを開発することにしました。

いままでに細かい物も含めて5台自作スピーカーを開発してきたわけですが、ブックシェルフ型スピーカーの優であるB&W 805スピーカーをなかなか音質・満足度の面で超えられないという経験があります。職場にスピーカーに関してマニアな方がいて(その筋では有名な方なのですが)、その方に相談したところ、周波数特性(以下f特)に固執しすぎていることと、音質はまずユニットで決まるといういわば当たり前の指摘を受けたわけです。オーディオ業界は価格設定が多少酷い状態になっており、ケーブル1mあたり100万円という物まで存在し、何が良い物か、そもそも良い音とはなんなのか不透明な状況になっています。スピーカーに関しては、スピーカーユニットの値段の10倍程度(以上)がスピーカーシステムとしての値段になるという現状が多い様です。たとえば、30万円のスピーカーだったら3万円位がユニット代であろうということです。 今回のエントリーでは、まずスピーカーの音を決定づけるスピーカーユニット選定について紹介したいと思います。

毎年秋に、東京国際フォーラムで、恒例となって開催されているハイエンドオーディオを扱った東京インターナショナルオーディオショウという展示会があります。昨年の秋頃は、個人的にスピーカーやオーディオ熱が高く、ふらっと足を運んだわけですが、その中で強烈に印象に残ったスピーカーメーカーが1つだけありました。私が使っているB&Wは、ダイヤモンドをTweeter(高音用ユニット)に採用した273万円のSignature Diamondというスピーカーを展示し、会場も盛り上がっていました。Sig-Dももちろん素晴らしいスピーカーだったのですが、印象に残った1つのスピーカーは、B&Wではなく、イタリアのSonus Faber (ソナス・ファーベル)のAmati Anniversarioというスピーカーでした。Amatiは、ユーロ高の影響もあり、現在380万円もする高級スピーカーです。Amatiは、16世紀に活躍した現代型のヴァイオリン創始者であるアンドレア・アマティから名前をとっています。ソナス・ファーベルは、イタリア語で”音の工房”というような意味らしく、最高の音源(ユニット)から出される音を、芸術的な木材加工技術により美しく響かせ、イタリアならではのセンスの良い外観を備えた素晴らしいスピーカーを作っているメーカーです。ソナス・ファーベルには、Amatiより高級なStradivariというスピーカーもあります。その名の通りヴァイオリンの名器を残しているアントニオ・ストラディヴァリから名前を付けています。Amati, Stradivariのようなスピーカーは外観も含め大変に素晴らしいわけですが、さすがに数百万円もスピーカーに使うことは財政的に困難です(無理です)。そこで、せめてAmati, Stradivariが使っているユニットを使って自作をしようと考えました。つまり、スピーカーの箱(エンクロージャー)さえ、素敵に作れればとても金銭的に手が届かないソナス・ファーベルに少しは近い音が出るかも知れないと考えたわけです。

馬鹿っぽいですが、私もソナス・ファーベルなどに真似をして、今回の30周年記念スピーカーに名前を付けることにしました。こうなると自分の好きな偉人達の名前かと考え、多くの尊敬する偉人達の名前が浮かぶ分けですが、交流システム、通信機などを作り、語学、芸術などに極めて堪能であった天才Nikola Teslaにしました(笑)。というわけで、何回にも渡って紹介するこのスピーカープロジェクトは、ニコラ・テスラプロジェクトとなりました。

さて、スピーカーユニット選びです。上述の通りAmati、Stradivariで使用されているユニットをそのまま購入できれば良いのですが、さすがに完全に同じものは、ソナス・ファーベル独自カスタマイズ商品ですので買うことはできません。そこで、Amatiなどを実際に購入し隅々まで写真をとって公開されている方のブログや、Amatiなどの記事を見て、近いユニットを予想して購入いたしました。

■Tweeter (高音部ユニット) : ScanSpeak R2904/7000-50 Ring Radiator
http://www.tymphany.com/r2904-700005

20080627_scanspeak_2904.JPG

このTweeterユニットはAmati, Stradivariと同じ製品だと思っています。見た目もそっくりですし、ソナス・ファーベルは長年TweeterにScanSpeakを採用していますから間違いないでしょう。このTweeterは、Raven, Accutonなどの変態ユニットを除けばほぼ最高スペックのユニットです。20kHzを大きく超える特性も含め、どんな音がするか楽しみなユニットです。ここでScanSpeakの紹介をすると、その名の通りScandinavia半島から名前が採られているデンマークの会社の高級・高性能ユニット会社です。特にTweeterで高い評価を得ている会社(ブランド)です。ソナス・ファーベルなどの100万円を超える高級スピーカーで多く使われています。今回、米国の商社を通して購入しました。

■Mid range (中音部ユニット):Audio Technology FLEX UNITS 4 H 52 06 13
http://www.audiotechnology.dk/iz.asp?id=4|a|122|||

20080627_flexunits01.JPG

職場のスピーカーに詳しい方に意見では、3ウェイスピーカー(高音・中音・低音の3つのユニットに分けるスピーカー)において、音質を決めるのは、Mid > Tweeter >>>> Wooferであるとのこと。また、ミッドレンジは、人声を含め大変重要な周波数域であるので、ここをケチるとシステム全体のクオリティが下がってしまいます。今回、デンマークのAudio Technology社の15cmミッドレンジを選択しました。このAudio Technology社は、大変高音質のユニットを作り上げることで有名なメーカーで、同じく有名なDynaudio社から技術者が暖簾分けしてできた会社の様です。型番を見ると4 Hの後に51, 06, 13などの数値がありますが、この数値は、ボイスコイルの直径などの値で、注文時に独自に指定できます。大変マニアックな会社です。Amati, Stradivariは、ミッドレンジにこのAudio Technologyの15cmミッドレンジを使っていることまでは外観から分かっています。ただ、後半の細かい指定の値などはわかりませんのでとりあえず、デフォルト値で注文しました。ちなみにこのユニットはAudio Technologyに直接連絡を取り、購入しました。(関税がたっぷりかかりましたが・・・)

■Woofer (低音部ユニット):SEAS Prestige L22RNX/P (H1252) 8″ Aluminum Cone
http://www.seas.no/index.php?option=com_content&task=view&id=114&Itemid=136

20080627_seas_h1252.JPG

低音部を司るウーファー選びはかなり悩みました。Amati, Stradivariは、それぞれ22cm、26cmのウーファーを2本づつ搭載しています。また、その表記は、”軽量アルミ・マグネシウム合金コーン”ということで、アルミニウムとマグネシウムの合金を使っているユニットを使っている様でした。いろいろな記事を調べて、メーカーは、ノルウェーのSEASという会社のユニットであることは分かりました。SEASのコンセプト(社のスローガン?)は大変かっこよくThe art of sound perfection by SEASです(笑)。その名に示すように、ScanSpeak, Audio Technology社と並ぶ超高性能ユニット会社です。SEASは数多くの製品を扱っていますが、最高級グレードシリーズのSEAS Excelシリーズと、2番目に素敵なSEAS Prestigeシリーズがあります。22cm, 26cmのウーファーのシリーズを見てみますと、Excelシリーズは、マグネシウムのウーファーが、Prestigeシリーズは、アルミニウムのウーファーがありました。つまり、Amati, Stradivariは、このマグネシウムとアルミニウムを合金にして使ったカスタムメイドのユニットであると予想できました。では、私のスピーカーではどちらかを使うべきかですが、もちろんExcelシリーズを使えば良いのですが、いかんせん高い!マグネシウムやアルミなどのを使ったユニットは低音部では綺麗な立ち上がりの特性が出ますが、高音部でバタバタ暴れます。マグネシウムとアルミの違いによる特性の変化は、使いたい低音部ではなく、高音側のこのバタバタっぷりと、インピーダンス増大がマグネシウムを使っているSEAS Excelの方が少ない感じでした。今回ウーファーは低音~200Hzまでしか使わないため、この違いはほとんど無視できるだろうと考えました。また、Mid, Tweeterに比べWooferはシステム全体の音質にあまり影響を与えないのと、コスト削減の為にPrestigeシリーズの22cmウーファーにしました。更に低音で有利な径の大きな26cmではなく22cmを選んだ理由と、Amati, Stradivariがウーファーを2本づつ積んでいるにも関わらず1本しか搭載しない理由に関しては後述致します。

20080627_all_units.JPG

とりあえず全てのユニットが海外から到着しましたので、記念撮影です。このユニット達を最高に奏でられる最高の箱(エンクロージャー)、ディバイディングネットワーク(音声信号を高音・中音・低音に分けるフィルタ回路)ができれば、去年の展示会で聞いたソナス・ファーベルに近づけるかもしれません。すくなくともこのユニット達を使った市販スピーカーは100万円を軽く超えて販売されています。

■Wooferのサイズと本数決定
もうここまで来ると誰も読んではいないと思いますが、ウーファーユニットをPrestigeシリーズにし、22cmのサイズを選び、1本だけ搭載している理由を紹介したいと思います。

まず、先ほども説明した22cmのSEAS Excelのウーファー(EX0022)と、採用が決まったSEAS Prestigeのウーファー(H1252)の比較です。


今回、ウーファーでは200Hz程度までしか使う予定がないので、極低音から200Hzまでの特性はほとんど一緒です。むしろf0(最低共振振動数)は、H1252の方が低くなっています。200Hzまでの使用であれば、ExcelとPrestigeの差はほとんどないと判断しました。

次に、22cmのPrestige H1252と、26cmのSEAS Excel EX0026の比較です。

低音になればなるほど、振動板の振幅は大きく触れる必要があるので、基本的には径が大きいユニットの方が低音に関しては有利と言われています。この図からも分かるように26cm (EX0026)の方が、200Hzまでの特性において音圧が高く、理論通り26cmの方が有利と考えるのが一般的です。しかし、今回のスピーカーでは、後述する方法によって、22cmの方が(少し)ですが有利になると判断し、敢えて26cmではなく22cmを採用しました。

今回のスピーカーのウリは2つあります。1つは、ソナス・ファーベルの高級スピーカーと同じ高級・高性能ユニットを用いること。もう1つは、音質を大きく左右するディバイディングネットワーク(Dividing Network)を、パッシブアナログフィルタではなくディジタルフィルタを使うことにあります。今回の様に高音・中音・低音の3ウェイスピーカーの場合、アンプからスピーカーケーブルを伝わって届くアナログ信号を、1)低音用にローパスフィルタ、2)中音用にバンドパスフィルタ、3)高音用にハイパスフィルタというコイルとコンデンサーによって構成されるアナログフィルタによって、アンプからの信号を低音域、中音域、高音域に分けて、それぞれのユニットが自分の専門の周波数領域だけ出力し、3ユニット全体として、可聴域全体(20Hz – 20kHz)の音を出すのが一般的です。

一方で今回のシステムでは、基本的に音源(音楽)は、パソコンで管理し、そのデジタルデータを、FIR(有限インパルス応答)フィルターを掛けて、3領域にディジタル領域で分けてしまい、3個のDAC(Digital Analog Converter)でアナログ信号として取り出し、3個のパワーアンプで増幅して、3本のユニットにそれぞれ入力します。つまり、パッシブのアナログフィルタは必要なく、もともとアナログ信号は低音・中音・高音でカッチリ分けられた信号が入力する予定です。

アナログフィルタに対するディジタルフィルタ方式のメリット・デメリットは

●メリット:CPUを全力で回すことで、ハイパス・バンドパス・ローパスのフィルタの傾斜(減衰)が急傾斜で切れる。ほとんど矩形型のフィルタが実現可能です。(例えば-96dB / octなど = 1オクターブが増減すると-96dB落ちる急勾配のフィルタ)。アナログフィルタで-96dB/octのフィルターを作るのは素子の数も多くなり、大変高額にもなり大変です。
●デメリット1:高速なパソコン、静かなパソコン(パソコンの動作音がうるさくては意味がありません)、左右で6ch分の高音質DAC、左右で6ch分のパワーアンプが必要になり、機材投資が大変
●デメリット2:低音・中音・高音の3ユニットのボリューム同期が難しい
●デメリット3:FIRフィルタを叩けば叩くほど遅延が発生し、再生ボタンを押してから音がでるまで時間がかかる(笑

デメリット2に関して、今回、映画Blu-ray, DVDなどで使われるAVアンプをうまく用いています。今の映画は、5.1ch, 7.1chのスピーカー(つまり6本のまたは、8本のスピーカー)で録音されており、後ろからの音声を表現して臨場感などを出しています。つまり、7.1chのAVアンプであれば、8個のパワーアンプが搭載されていることになります。今でこそ、HDMIなどでマルチチャネルの音声をディジタル転送できますが、少し前まで高音質マルチチャネル音声は、アナログケーブル(RCA)で転送していました。その名残で、普通のAVアンプだと7.1chつまり8本のアナログ入力端子を備えています。つまり、パソコンから左右で合計6本のアナログ出力を、このアナログ端子にいれれば、6個のパワーアンプを1台のAVアンプで対応できるわけです。しかもAVアンプは、各チャネル事に+-10dB程度のスピーカーレベル(音量)調整オフセットができます。つまり、低音部だけ3dB上げるなどの調整が可能で、調整後は、リモコンのマスターボリュームすれば、低音部だけ3dB上がった状態で他のチャネルも同期してボリュームが動くわけです。これにより、デメリットであったパワーアンプを複数用意する問題と、ボリュームの同期が普通に売っているAVアンプで実現可能になります。

さて、この各チャネル事に+-10dBのオフセット調整できることが一つのポイントになります。次の図を見て下さい。

この図は、22cmのPrestige H1252と、26cmのSEAS Excel EX0026の比較に、Mid Rangeと繋ぐ200Hzで同じ音圧になるように、22cmのH1252を約2dBほど上に上げた(ボリュームオフセット)状態を追加した場合の比較です。先述の通り、各チャネル事に自由にボリュームをオフセットできるためこのように音圧の上下は調整できます。200Hzにおいて同じ音圧で比較すると26cmより22cmの方が特性綺麗です。しかも、26cmだと箱の内容積も大きく取らなければならず大変です。値段も22cmの方が安い事から、今回22cmのウーファーを選択しました。
また、Amati, Stradivariとウーファーを2本搭載しています。低音は波長が長いので音の重ね合わせが容易に起きます。今回Tweeterが93dB位の音圧(平均的に)、Mid rangeが90dB位に対して、ウーファーは86dB程度の音圧なので少し音圧が低くなっています。アナログのパッシブフィルターの場合、各チャネル事に音量の調整ができないため、ウーファーの音圧不足を改善するために高級なウーファーユニットを2つ搭載しているわけです。理論的には2倍なので2本で3dBの音圧アップになります。ソナス・ファーベルでは2本使うことで3ユニットの音圧をある程度調整しているわけですね。今回、AVアンプで各チャネル事音圧が微調整できるので、ウーファーは1本で問題ありません。また理想的には2本使って3dBアップになる音の重ね合わせもユニットそれぞれでばらつきはありますし、音の重ね合わせも複雑ですから1本で音圧が出るのであればそちらの方が綺麗な音になります。
今回、FIRによるディジタルチャンネルデバイダー+3ch DAC + 3chアンプにより低音・中音・高音が混ざることなく最高の音が出せるのではないかと期待しています。

さて、”その1”からガッツリ書きましたが、30周年記念スピーカーは、最高級のユニットとディジタルフィルターにより理論的にとても素敵な音が出る予定です。後は、極めて重要な箱の設計をしっかりと行わなければなりません。あと数回このテーマでブログを書きたいと思っています。

ウッドコーンユニットによる自作スピーカー製作(PARC Audio)

懲りずにまた自作スピーカーを作成した。最近、ごく狭い領域で話題になっているウッドコーンスピーカーユニットを用いて作ってみた。本エントリーは、オーディオ・スピーカーに興味の無い人にとっては極めて退屈な内容である。

昨年末に秋葉原のコイズミ無線に立ち寄ったところ、ソニーの元スピーカーエンジニアがスピンオフして起業したベンチャー企業Dream CreationのスピーカーブランドPARC Audioのウッドコーンユニットを見かけた。その時は未だ発売前で、サンプルユニットをコイズミ無線で聴かせており、その音の歯切れの良さに心地よさを覚え、すぐに注文予約をした。12月下旬には入荷していたのであるが、なかなか忙しく、エンクロージャー(スピーカーの周りの箱・木材加工で作る)やディバイディングネットワーク(スピーカーの中に入る音域を分けるフィルタ回路)の開発ができず、最近になるまで部屋の片隅で眠っていた。これではいつまで経っても完成しないし、ちまたではビクターのウッドコーンスピーカーも流行はじめているので、ここは一発合間を見つけて製作することにした。

まずは完成した外観から紹介。

20080510_parc_speaker1.JPG

20080510_parc_speaker4.JPG

今回のスピーカーは、WooferとTweeterの2ウェイのユニットで構成されており、背面の上に見えるように1つのダクトを用いたバスレフ(Bass Reflex、または位相反転型)スピーカー構成となっている。木材には、板厚15mmのMDF(Medium Density Fiberboard, 密度不明:東急ハンズ新宿店のクラフト工房で購入)を用いている。

Woofer(低音ユニット) : Dream Creation PARC Audio DCU-171W 17cmウーファー
20080510_parc_speaker2.JPG

写真からも分かるように大変美しいウッドコーンによるウーファーユニットである。実際に音も素敵なのであるが、ヴァイオリンなども木材だし、ウッドコーンというだけで良い音がでてしまうのではないかと思ってしまう(笑)。DCU-171Wの製品のページに周波数特性や各種ユニットの性能が公開されているので、自作スピーカーとしてはとても扱いやすい。周波数特性を見ると2kHzあたりまで綺麗にフラットな特性が出ていたので、JAZZボーカルなどを好んで聴くため、人声域(80Hz – 1kHz位)は、このウーファーでカバーし、それ以上高音は後述のトゥイーターに任せることにした。

Tweeter(高音ユニット) : Dream Creation PARC Audio DCU-T111S 25mm ソフトドーム・トゥイーター
20080510_parc_speaker3.JPG

25mm (1インチ)のソフトドーム・トゥイーターである。DCU-T111Sの製品のページには、同じく周波数特性や各種性能が記載されており、その周波数特性によると500Hzあたりから20kHz近くまでほぼフラットな特性がでており、音圧も先のウーファーの90dB/W/mに対して91dB/W/mと近いことから、アッテネータなどのを介在する必要もなく、単純に組み合わせられるのかなと思い選択した。

以上のウーファー・トゥイーターを、人声域をウーファーがカバーする形で、2150Hzのクロスオーバー周波数で2ウェイにすることに決定した。つまり、ウーファーには、ローパスフィルター(高音域をカット)を、トゥイーターにもハイパスフィルター(低音域をカット)を付けることで、お互い同じ音域を切り分けて音が鳴る仕組みである。アンプからの出力を、2つのユニットに上記のようにフィルタリングする回路をディバンディングネットワークと呼び、その回路を作成して、スピーカーの中に入れてある。

ネットワークの設計は、フィルタ回路に関する本を読めば簡単ではあるが、巷には自作スピーカーマニアも多く、ウェブアプリやソフトウェアで簡単に計算ができる。たとえば、Bachagi.h氏のスピーカー設計プログラムにおけるネットワーク設計プログラムを用いれば、スピーカーユニットの特性を入力し、何Hzでカットしたいかを入力すればフィルター回路に必要なコンデンサ・コイルの容量を計算してくれる。今回の計算結果のページをPDFで保存しておいたので、一応公開しておく。フィルターの種類は何種類か存在するが、今回は、12 dB / oct, -6dBクロスを採用している。

ネットワーク回路のパーツ
ウーファー用:ローパスフィルタ
・L1 : 0.82mH : TRITEC EPOXY-MOLD OFC COIL 0.83mH @ コイズミ無線
・C1 : 10uF : MUNDORF MCAP63/10.0 @ コイズミ無線 計算結果では11.4uFであるが10uFを採用。
トゥイーター用:ハイパスフィルタ
・L1 : 0.47mH : TRITEC EPOXY-MOLD OFC COIL 0.47mH @ コイズミ無線
・C1 : 6.6uF : MUNDORF MCAP63/3.3 @ コイズミ無線を2並列
背面のスピーカーケーブル端子台
TRITEC TERMINAL T-93 @ コイズミ無線

エンクロージャーは、東急ハンズに提出した木材カット図面(PDF)を公開するので、必要であれば参考にしてほしい。(留意:木材E, Fは4つずつあれば十分であるが予備として8個注文した)。エンクロージャーの中には、同じく東急ハンズで購入した白い吸音材を内部全面(ネットワーク回路の部分は当然避けてある)に貼ってある。外形寸法は、28cm x 33cm x 45cm(W, D, H)となった。内部容積は31.5Lである。今回ははみ出たボンドの拭き取りなども丁寧に行ったため、外観は結構綺麗である。MDF木材が割と綺麗なので塗装は行わない(手抜き)

さて、本題の音質であるが、まず自分の耳で主観的に聞いた感想は
・音の歯切れがとても良く、人の声(Jazz Vocal系)は、とてもスッキリとして聞こえる。とても心地よい。
・ギター、バイオリンなども同じく歯切れ良くスッと出る感じで気持ちがいい。
・低音から高音へのつなぎは上手く行っており、とても聞き疲れしない感じで、主観的には全音域ある程度フラットなのかなという印象

以上の様な感想を持ち、自作スピーカーとしては及第点かなという感じである。おそらく某社の101スピーカーよりはよっぽど良い音が出ている。ギター、ヴァイオリンなどの弦系の音もとても柔らかく、伸びやかである。ダクトの周波数を無理に下げすぎていないので、無理に高音を強調したような箱鳴り的なボスボス感もなく、バランスが良い感じである。

さて、主観的な評価だけでは、そこらのオーディオ評論雑誌と同じであるので、計測を行った。
計測方法:
・ソフトウェア:Bachagi.h氏のMySpeakerを利用したピンクノイズを発生させて、マイクで取得しFFTを掛ける方法
・コンデンサマイク:ベリンガーEMC8000
・マイク取得、DAC : M-AUDIO Fast Track Pro
・パワーアンプ: DENON PMA-2000AE
20080510_parc_speaker5.JPG

写真の様に、スピーカーからピンクノイズ(全周波数領域に対してフラットな音声信号)を出して、特性がフラットなコンデンサマイクで取得し、FFT(高速フーリエ変換)を掛けて、実際にどの程度の音が出ているかを計測した。理想的なスピーカーであれば、全領域がフラットな音が取得できるはずであるが、理想的なスピーカーは未だ実現されておらず、低音側は落ち、波形がフラットではなく、ギザギザに荒れるのが一般的である。スピーカー屋は、低音を如何に出すか?如何に波形をフラットにするか?などを日々研究している。

20080510_parc_speaker7.JPG

参考までに、B&W N805と昨年自作したAltecのスピーカーの特性を比較表示する。
B&W N805

自作Altec CD408-8A 4本ダクトバスレフ

今回の特性を見ると、ネットワークによるウーファー・トゥイーターのつなぎはある程度上手く行っており、そこそこにフラットの特性になっている。昨年作成したAltecのスピーカーよりもギザギザっぷりが少ない様だ。低音も50Hz程度まで出ているので、低音多用のパイプオルガンや、ハリウッド映画の爆弾馬鹿映画をビリビリ感じたいみたいな要求が無ければ十二分に高音質スピーカーとして使えそうなスピーカーと言える。今回は割と見た目も綺麗なので結構良いスピーカーができたかなと思っている。

20080510_parc_speaker6.JPG

部屋にスピーカーが溢れて来たが、写真右上のAltecは知人の新婚さんが引き取ってくれることになっているので、ちょっとほっとしている。

最後に、今回採用したスピーカーユニットを作っているDream Creationは、音が素晴らしいのはもちろん、開発者(代表者)が親身になって丁寧に質問に答えてくれるなどとても好印象である。興味があれば、宮下家に聞きに来て頂いてもOKですし、ちょうど今週末に国際フォーラムで開催されている変態オーディオのイベント”HI-END SHOW TOKYO 2008 SPRING“に出展されているようなので、足を運んでみてはいかがであろうか?

しばらく自作スピーカーはいいかなと思っているが、先日Sonus Faber の500万円オーバーのスピーカーを聴いて、ちょっと感動してしまい、ScanSpeakSEASのユニットを使った自作スピーカーをいずれは作りたいなぁと思う今日この頃である。

最後にどうでも良いことなのですが、ドリカムの録音って何であんなにクオリティが悪いのか不思議でたまりません。未来予想図IIなど聴くだけである一定の時期を懐古してしまうような歌唱力もある素晴らしい曲ばかりなのに、なぜあんなに録音がヘボいのか全く意味がわかりません。せっかくの良い音楽が残念でなりません。

ブーニンコンサート@サントリーホール

11月18日(日)サントリーホールで行われたブーニンのピアノコンサートに行ってきました。
考えてみればサントリーホールは改修後初めて訪れました。どこが改修されたかわかりませんが、やはり紀尾井ホールなどに比べれば響きが良いホールであると感じました。

さて曲目。

J.S.バッハ=W.ケンプ:目覚めよと呼ぶ声あり BWV645
ベートーヴェン:ピアノソナタ第8番ハ短調「悲愴」Op.13
シューマン:アラベスク Op.13
ベートーヴェン:ピアノソナタ第17番ニ短調「テンペスト」Op.31
ショパン:舟歌 Op.60
(アンコール)ショパン、マズルカとワルツ(?)かな。

最初は固い演奏でしたが、休憩を挟んだテンペストあたりからとても良い運指になってきました(失礼ですが)。ベートーヴェンのソナタも素敵でしたが、やはりショパンコンクール優勝者だけあって、舟歌とアンコールのショパンの2曲はとても素晴らしかったです。ブーニンを聞いたのはおそらく7,8年ぶりかと思います。前回はあまり気にならなかったのですが、今回ペダリング時に床を蹴る動作が多く、結構耳に付きました。ああいう弾き方と言えばそれきりですが、もう少し抑えても良いのかなと思いました。ピアニッシモにあたりの表現はさすがといった感じです。S席でアリーナ席だったのですが、位置がピアノに対して左側でしたので、音響的には若干不利な場所でした。一方で久しぶりに聞いたスタインウェイはやはり素晴らしい音がしました。音の周波数でいうと、テンペスト3楽章あたり結構40Hz付近の音が出ているように感じました。スピーカーセッティングの参考になりそうです。

さて、2時間の演奏を聴いている時にクラシック音楽についていろいろ考えていました。クラシック音楽は人類にとってのある意味究極のディジタルデータかなと思いました。私などスピーカーを作ったりするのを楽しんでいる人間としては、CDなどのディジタルデータをいかに信号のまま部屋に再現するかを目指してスピーカーを調整しているわけです。今は、マイク技術も録音技術も発展しているため、ピアニストなりアーチストの出した音を保存することができるわけですが、ベートーヴェンを始めクラシックの作曲家たちは、音ではなく楽譜というディジタルフォーマット(音が劣化しないという意味でのディジタルと表現する)で数百年を超えて音を残している訳です。今回のブーニンももちろんべートーヴェンを会ったことはありませんから、ベートーヴェンの曲に込めた思いは、楽譜というデータ以上には存在しないわけです。その解釈の違いとテクニックで現代まで演奏され音になっているわけですから、クラシック音楽はディジタルデータかなと思ったわけです。ベートーヴェンが300年後の年末に毎年第9が世界中で歌われていることを予期したかわかりませんが、今後も残っていくだろう人類のディジタルデータであるクラシック音楽をこれからも楽しんでいこうと思いました。