30周年記念スピーカー開発(その3:組み立て)

30歳の誕生日を迎えるにあたり開発が始まった30周年記念スピーカー開発プロジェクト(Nikola Tesla Project)ですが、開発に大きな時間が掛かっているのと私も割とばたばたしていて、とっくに30歳の誕生日を超えてしまいました。毎日コツコツと開発し、やっと組み立てのフェーズまで来ました。3次元CADでスピーカーボックスの設計をして、木材加工に結局2ヶ月程度掛かってしまいました。

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幅28cm、奥行き35.4cm、高さ1050cmで割と大型です。重さは現時点で1本29キロありました。
(部屋が超汚いですが・・・)

スピーカーボックスは、見た目単純な形に見えますが、中身はそれなりに計算しており、理想的な音が出る予定です(あくまで予定)。
今回はスピーカーボックスの木材にフィンランドバーチと呼ばれる、密度が高く、見た目も割と美しい材料を使っています。

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スピーカーユニットが取り付けられるフロントバッフルは、スピーカーのフェイスがちゃんと座るようにザグリを入れてあります。
スピーカーユニットは前からねじ止めするわけですが、中に手を入れられないため鬼目ナットをねじ穴の裏側から打ち込んであります。

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内部に入っている吸音材です。
吸音材はかなり悩みましたが、写真のような凹凸のある吸音材を使っています。
結局吸音材といっても極低音は切ることはできません。吸音効果を高めるために、吸音材の厚みをあげる、表面積を増やすなどいろいろな要素がありますが、今回いろいろ選んだ結果、このような凹凸型を採用しました。

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スピーカーの背面です。ウーファー(低音)、ミッドレンジ(中音)、トゥイーター(高音)+アルファで4つのターミナル(スピーカー端子)が用意されています。
このターミナルも割と良いものを使っています。真ん中の黒い穴は低音用のバスレフダクトです。
フィンランドバーチはMDFなどの材料に比べ、どうしても反りがあるため、CAD通りにカットしても組む際にズレが生じます。
それを、ハタガネで押さえながら木工用ボンドで接着していきます。ハタガネを6個使って、木工用ボンドを塗り、超高速で組み合わせハタガネで押さえつけます。
内部構造が複雑であるため、接着箇所が多点あり、ボンドを塗っている間にどんどん乾いてゆき、かなり慌てました。
結果としては、2本とも1ミリもズレることなく組み上げに成功しました。

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フィンランドバーチは表面の木目も美しく綺麗な材料です。
(左から高音、中音、低音ユニットです)

これから音出し調整が始まります。音がまともに出るようになったら、最後に塗装を行う予定です。
塗装は、浜松にあるピアノ塗装を行っている業者に依頼する予定です。
ピアノと同様の鏡面塗装をこのスピーカーに施すことで大変美しいスピーカーになる予定です。
(しかし、音がへぼかったら、塗装なしでこのまま行きます。お金がもったいないので)

自作スピーカーでどこまで高音質が狙えるかわかりませんが、目標は高くもって、
cabasseのLa Sphère
Sonusfaber Stradivari Homage
KEF MUON
Steinway Lyngdorf Model D
などの超高級スピーカーに迫れるように最後調整をがんばりたいと思います。

30周年記念スピーカー開発(その2)

全くもって評判が悪い30周年(30歳)記念スピーカー開発プロジェクト(NikolaTeslaProjet)の”その2”の記事です。 

今回は、Tweeter, Mid, Wooferの音圧周波数特性(SPL Frequency Response)をそれぞれ比較し、3ユニット間の音圧オフセット値を決定します。実際にはスピーカー完成時にコンデンサマイクで計測し調整予定ですが、その前の予想値です。

まず各ユニットの周波数に対する音圧(SPL : Sound Pressure Level)のデータですが、数値データとして各社公開されている訳ではありません。今回は、PDFや画像で公開されている特性図からデータを細かく抽出し、Excelで処理しました。その際、SPL Tracer & SPL Viewerという便利なツールを使っています。画像からデータを抽出するのを支援してくれる重宝ソフトです。

■3ユニットの標準音圧特性
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3つのユニットを標準的な入力(1W, 1m)での周波数特性図です。今回、クロスオーバー周波数は、200Hzと3000Hzを想定しています。見て分かるように、Tweeterが高く、Wooferは低いような感じです。

■3ユニットの内、Wooferの音圧を上げ(+6dB)、Tweeterの音圧を下げ(-4dB)た図 
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低かったWooferを6dB上げ、高かったTweeterを4dB下げています。これによりクロスオーバー周波数の200Hz, 3000Hzあたりでほぼ同じ音圧になり綺麗に繋がります。

■3ユニットのレンジ外をカットした図
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クロスオーバー周波数の前後で余計なラインを削除しました。
今回FIRディジタルフィルタを用いるため、急激な減衰で矩形型にフィルタリングできるので、このくらい理想的なレンジカットが可能です。このスペック通り3ユニットが鳴ってくれると低音から高音まで綺麗なフラットスピーカーができそうです。

今回、3ユニットの理想的・期待的な周波数特性ができましたが、これを実現するためには、素敵なスピーカー箱(エンクロージャー)と高性能なディジタルフィルターが必須です。現在、その辺りの設計を行っている状態です。うまくできると良いですが。

30周年記念自作スピーカー開発開始(その1)

来月、ついに30歳を迎えることになりました。誕生日に何かイベントをやったことが無いのですが、 せっかくの節目(?)なので、30周年記念として、また自作スピーカーを開発することにしました。

いままでに細かい物も含めて5台自作スピーカーを開発してきたわけですが、ブックシェルフ型スピーカーの優であるB&W 805スピーカーをなかなか音質・満足度の面で超えられないという経験があります。職場にスピーカーに関してマニアな方がいて(その筋では有名な方なのですが)、その方に相談したところ、周波数特性(以下f特)に固執しすぎていることと、音質はまずユニットで決まるといういわば当たり前の指摘を受けたわけです。オーディオ業界は価格設定が多少酷い状態になっており、ケーブル1mあたり100万円という物まで存在し、何が良い物か、そもそも良い音とはなんなのか不透明な状況になっています。スピーカーに関しては、スピーカーユニットの値段の10倍程度(以上)がスピーカーシステムとしての値段になるという現状が多い様です。たとえば、30万円のスピーカーだったら3万円位がユニット代であろうということです。 今回のエントリーでは、まずスピーカーの音を決定づけるスピーカーユニット選定について紹介したいと思います。

毎年秋に、東京国際フォーラムで、恒例となって開催されているハイエンドオーディオを扱った東京インターナショナルオーディオショウという展示会があります。昨年の秋頃は、個人的にスピーカーやオーディオ熱が高く、ふらっと足を運んだわけですが、その中で強烈に印象に残ったスピーカーメーカーが1つだけありました。私が使っているB&Wは、ダイヤモンドをTweeter(高音用ユニット)に採用した273万円のSignature Diamondというスピーカーを展示し、会場も盛り上がっていました。Sig-Dももちろん素晴らしいスピーカーだったのですが、印象に残った1つのスピーカーは、B&Wではなく、イタリアのSonus Faber (ソナス・ファーベル)のAmati Anniversarioというスピーカーでした。Amatiは、ユーロ高の影響もあり、現在380万円もする高級スピーカーです。Amatiは、16世紀に活躍した現代型のヴァイオリン創始者であるアンドレア・アマティから名前をとっています。ソナス・ファーベルは、イタリア語で”音の工房”というような意味らしく、最高の音源(ユニット)から出される音を、芸術的な木材加工技術により美しく響かせ、イタリアならではのセンスの良い外観を備えた素晴らしいスピーカーを作っているメーカーです。ソナス・ファーベルには、Amatiより高級なStradivariというスピーカーもあります。その名の通りヴァイオリンの名器を残しているアントニオ・ストラディヴァリから名前を付けています。Amati, Stradivariのようなスピーカーは外観も含め大変に素晴らしいわけですが、さすがに数百万円もスピーカーに使うことは財政的に困難です(無理です)。そこで、せめてAmati, Stradivariが使っているユニットを使って自作をしようと考えました。つまり、スピーカーの箱(エンクロージャー)さえ、素敵に作れればとても金銭的に手が届かないソナス・ファーベルに少しは近い音が出るかも知れないと考えたわけです。

馬鹿っぽいですが、私もソナス・ファーベルなどに真似をして、今回の30周年記念スピーカーに名前を付けることにしました。こうなると自分の好きな偉人達の名前かと考え、多くの尊敬する偉人達の名前が浮かぶ分けですが、交流システム、通信機などを作り、語学、芸術などに極めて堪能であった天才Nikola Teslaにしました(笑)。というわけで、何回にも渡って紹介するこのスピーカープロジェクトは、ニコラ・テスラプロジェクトとなりました。

さて、スピーカーユニット選びです。上述の通りAmati、Stradivariで使用されているユニットをそのまま購入できれば良いのですが、さすがに完全に同じものは、ソナス・ファーベル独自カスタマイズ商品ですので買うことはできません。そこで、Amatiなどを実際に購入し隅々まで写真をとって公開されている方のブログや、Amatiなどの記事を見て、近いユニットを予想して購入いたしました。

■Tweeter (高音部ユニット) : ScanSpeak R2904/7000-50 Ring Radiator
http://www.tymphany.com/r2904-700005

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このTweeterユニットはAmati, Stradivariと同じ製品だと思っています。見た目もそっくりですし、ソナス・ファーベルは長年TweeterにScanSpeakを採用していますから間違いないでしょう。このTweeterは、Raven, Accutonなどの変態ユニットを除けばほぼ最高スペックのユニットです。20kHzを大きく超える特性も含め、どんな音がするか楽しみなユニットです。ここでScanSpeakの紹介をすると、その名の通りScandinavia半島から名前が採られているデンマークの会社の高級・高性能ユニット会社です。特にTweeterで高い評価を得ている会社(ブランド)です。ソナス・ファーベルなどの100万円を超える高級スピーカーで多く使われています。今回、米国の商社を通して購入しました。

■Mid range (中音部ユニット):Audio Technology FLEX UNITS 4 H 52 06 13
http://www.audiotechnology.dk/iz.asp?id=4|a|122|||

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職場のスピーカーに詳しい方に意見では、3ウェイスピーカー(高音・中音・低音の3つのユニットに分けるスピーカー)において、音質を決めるのは、Mid > Tweeter >>>> Wooferであるとのこと。また、ミッドレンジは、人声を含め大変重要な周波数域であるので、ここをケチるとシステム全体のクオリティが下がってしまいます。今回、デンマークのAudio Technology社の15cmミッドレンジを選択しました。このAudio Technology社は、大変高音質のユニットを作り上げることで有名なメーカーで、同じく有名なDynaudio社から技術者が暖簾分けしてできた会社の様です。型番を見ると4 Hの後に51, 06, 13などの数値がありますが、この数値は、ボイスコイルの直径などの値で、注文時に独自に指定できます。大変マニアックな会社です。Amati, Stradivariは、ミッドレンジにこのAudio Technologyの15cmミッドレンジを使っていることまでは外観から分かっています。ただ、後半の細かい指定の値などはわかりませんのでとりあえず、デフォルト値で注文しました。ちなみにこのユニットはAudio Technologyに直接連絡を取り、購入しました。(関税がたっぷりかかりましたが・・・)

■Woofer (低音部ユニット):SEAS Prestige L22RNX/P (H1252) 8″ Aluminum Cone
http://www.seas.no/index.php?option=com_content&task=view&id=114&Itemid=136

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低音部を司るウーファー選びはかなり悩みました。Amati, Stradivariは、それぞれ22cm、26cmのウーファーを2本づつ搭載しています。また、その表記は、”軽量アルミ・マグネシウム合金コーン”ということで、アルミニウムとマグネシウムの合金を使っているユニットを使っている様でした。いろいろな記事を調べて、メーカーは、ノルウェーのSEASという会社のユニットであることは分かりました。SEASのコンセプト(社のスローガン?)は大変かっこよくThe art of sound perfection by SEASです(笑)。その名に示すように、ScanSpeak, Audio Technology社と並ぶ超高性能ユニット会社です。SEASは数多くの製品を扱っていますが、最高級グレードシリーズのSEAS Excelシリーズと、2番目に素敵なSEAS Prestigeシリーズがあります。22cm, 26cmのウーファーのシリーズを見てみますと、Excelシリーズは、マグネシウムのウーファーが、Prestigeシリーズは、アルミニウムのウーファーがありました。つまり、Amati, Stradivariは、このマグネシウムとアルミニウムを合金にして使ったカスタムメイドのユニットであると予想できました。では、私のスピーカーではどちらかを使うべきかですが、もちろんExcelシリーズを使えば良いのですが、いかんせん高い!マグネシウムやアルミなどのを使ったユニットは低音部では綺麗な立ち上がりの特性が出ますが、高音部でバタバタ暴れます。マグネシウムとアルミの違いによる特性の変化は、使いたい低音部ではなく、高音側のこのバタバタっぷりと、インピーダンス増大がマグネシウムを使っているSEAS Excelの方が少ない感じでした。今回ウーファーは低音~200Hzまでしか使わないため、この違いはほとんど無視できるだろうと考えました。また、Mid, Tweeterに比べWooferはシステム全体の音質にあまり影響を与えないのと、コスト削減の為にPrestigeシリーズの22cmウーファーにしました。更に低音で有利な径の大きな26cmではなく22cmを選んだ理由と、Amati, Stradivariがウーファーを2本づつ積んでいるにも関わらず1本しか搭載しない理由に関しては後述致します。

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とりあえず全てのユニットが海外から到着しましたので、記念撮影です。このユニット達を最高に奏でられる最高の箱(エンクロージャー)、ディバイディングネットワーク(音声信号を高音・中音・低音に分けるフィルタ回路)ができれば、去年の展示会で聞いたソナス・ファーベルに近づけるかもしれません。すくなくともこのユニット達を使った市販スピーカーは100万円を軽く超えて販売されています。

■Wooferのサイズと本数決定
もうここまで来ると誰も読んではいないと思いますが、ウーファーユニットをPrestigeシリーズにし、22cmのサイズを選び、1本だけ搭載している理由を紹介したいと思います。

まず、先ほども説明した22cmのSEAS Excelのウーファー(EX0022)と、採用が決まったSEAS Prestigeのウーファー(H1252)の比較です。


今回、ウーファーでは200Hz程度までしか使う予定がないので、極低音から200Hzまでの特性はほとんど一緒です。むしろf0(最低共振振動数)は、H1252の方が低くなっています。200Hzまでの使用であれば、ExcelとPrestigeの差はほとんどないと判断しました。

次に、22cmのPrestige H1252と、26cmのSEAS Excel EX0026の比較です。

低音になればなるほど、振動板の振幅は大きく触れる必要があるので、基本的には径が大きいユニットの方が低音に関しては有利と言われています。この図からも分かるように26cm (EX0026)の方が、200Hzまでの特性において音圧が高く、理論通り26cmの方が有利と考えるのが一般的です。しかし、今回のスピーカーでは、後述する方法によって、22cmの方が(少し)ですが有利になると判断し、敢えて26cmではなく22cmを採用しました。

今回のスピーカーのウリは2つあります。1つは、ソナス・ファーベルの高級スピーカーと同じ高級・高性能ユニットを用いること。もう1つは、音質を大きく左右するディバイディングネットワーク(Dividing Network)を、パッシブアナログフィルタではなくディジタルフィルタを使うことにあります。今回の様に高音・中音・低音の3ウェイスピーカーの場合、アンプからスピーカーケーブルを伝わって届くアナログ信号を、1)低音用にローパスフィルタ、2)中音用にバンドパスフィルタ、3)高音用にハイパスフィルタというコイルとコンデンサーによって構成されるアナログフィルタによって、アンプからの信号を低音域、中音域、高音域に分けて、それぞれのユニットが自分の専門の周波数領域だけ出力し、3ユニット全体として、可聴域全体(20Hz – 20kHz)の音を出すのが一般的です。

一方で今回のシステムでは、基本的に音源(音楽)は、パソコンで管理し、そのデジタルデータを、FIR(有限インパルス応答)フィルターを掛けて、3領域にディジタル領域で分けてしまい、3個のDAC(Digital Analog Converter)でアナログ信号として取り出し、3個のパワーアンプで増幅して、3本のユニットにそれぞれ入力します。つまり、パッシブのアナログフィルタは必要なく、もともとアナログ信号は低音・中音・高音でカッチリ分けられた信号が入力する予定です。

アナログフィルタに対するディジタルフィルタ方式のメリット・デメリットは

●メリット:CPUを全力で回すことで、ハイパス・バンドパス・ローパスのフィルタの傾斜(減衰)が急傾斜で切れる。ほとんど矩形型のフィルタが実現可能です。(例えば-96dB / octなど = 1オクターブが増減すると-96dB落ちる急勾配のフィルタ)。アナログフィルタで-96dB/octのフィルターを作るのは素子の数も多くなり、大変高額にもなり大変です。
●デメリット1:高速なパソコン、静かなパソコン(パソコンの動作音がうるさくては意味がありません)、左右で6ch分の高音質DAC、左右で6ch分のパワーアンプが必要になり、機材投資が大変
●デメリット2:低音・中音・高音の3ユニットのボリューム同期が難しい
●デメリット3:FIRフィルタを叩けば叩くほど遅延が発生し、再生ボタンを押してから音がでるまで時間がかかる(笑

デメリット2に関して、今回、映画Blu-ray, DVDなどで使われるAVアンプをうまく用いています。今の映画は、5.1ch, 7.1chのスピーカー(つまり6本のまたは、8本のスピーカー)で録音されており、後ろからの音声を表現して臨場感などを出しています。つまり、7.1chのAVアンプであれば、8個のパワーアンプが搭載されていることになります。今でこそ、HDMIなどでマルチチャネルの音声をディジタル転送できますが、少し前まで高音質マルチチャネル音声は、アナログケーブル(RCA)で転送していました。その名残で、普通のAVアンプだと7.1chつまり8本のアナログ入力端子を備えています。つまり、パソコンから左右で合計6本のアナログ出力を、このアナログ端子にいれれば、6個のパワーアンプを1台のAVアンプで対応できるわけです。しかもAVアンプは、各チャネル事に+-10dB程度のスピーカーレベル(音量)調整オフセットができます。つまり、低音部だけ3dB上げるなどの調整が可能で、調整後は、リモコンのマスターボリュームすれば、低音部だけ3dB上がった状態で他のチャネルも同期してボリュームが動くわけです。これにより、デメリットであったパワーアンプを複数用意する問題と、ボリュームの同期が普通に売っているAVアンプで実現可能になります。

さて、この各チャネル事に+-10dBのオフセット調整できることが一つのポイントになります。次の図を見て下さい。

この図は、22cmのPrestige H1252と、26cmのSEAS Excel EX0026の比較に、Mid Rangeと繋ぐ200Hzで同じ音圧になるように、22cmのH1252を約2dBほど上に上げた(ボリュームオフセット)状態を追加した場合の比較です。先述の通り、各チャネル事に自由にボリュームをオフセットできるためこのように音圧の上下は調整できます。200Hzにおいて同じ音圧で比較すると26cmより22cmの方が特性綺麗です。しかも、26cmだと箱の内容積も大きく取らなければならず大変です。値段も22cmの方が安い事から、今回22cmのウーファーを選択しました。
また、Amati, Stradivariとウーファーを2本搭載しています。低音は波長が長いので音の重ね合わせが容易に起きます。今回Tweeterが93dB位の音圧(平均的に)、Mid rangeが90dB位に対して、ウーファーは86dB程度の音圧なので少し音圧が低くなっています。アナログのパッシブフィルターの場合、各チャネル事に音量の調整ができないため、ウーファーの音圧不足を改善するために高級なウーファーユニットを2つ搭載しているわけです。理論的には2倍なので2本で3dBの音圧アップになります。ソナス・ファーベルでは2本使うことで3ユニットの音圧をある程度調整しているわけですね。今回、AVアンプで各チャネル事音圧が微調整できるので、ウーファーは1本で問題ありません。また理想的には2本使って3dBアップになる音の重ね合わせもユニットそれぞれでばらつきはありますし、音の重ね合わせも複雑ですから1本で音圧が出るのであればそちらの方が綺麗な音になります。
今回、FIRによるディジタルチャンネルデバイダー+3ch DAC + 3chアンプにより低音・中音・高音が混ざることなく最高の音が出せるのではないかと期待しています。

さて、”その1”からガッツリ書きましたが、30周年記念スピーカーは、最高級のユニットとディジタルフィルターにより理論的にとても素敵な音が出る予定です。後は、極めて重要な箱の設計をしっかりと行わなければなりません。あと数回このテーマでブログを書きたいと思っています。