東京インターナショナルオーディオショウに行ってきました(オーディオ談義)

表題の通り、この時期に毎年行われてる高級オーディオの祭典「東京インターナショナルオーディオショウ2008」に行って参りました。車で言えば東京モーターショー、カメラで言えばフォトキナ、家電で言えばCEATECにあたる新製品オーディオ機器のイベントです。昨年も行って参りましたが、この1年で私のオーディオの知識は幾分向上しておりましたし、何本もスピーカー、アンプを作った経験からも、今年は客観的に冷静にオーディオを評価できるのではないか思っていました。もう一つの目的として、製作した30周年記念スピーカーのお手本となった本家Sonus FaberのAmati Anniversarioを生で聞き、完成したスピーカーとの音質比較を行うという目的もありました。

実際に行ってみた感想は、例えて言えば、天空の城ラピュタでムスカがラピュタ内の黒石の文字を”読める・読めるぞ”と言って感動したくらいに、各社の製品の実力、構成、性能、使用ユニット、材料原価、木材種類、塗装の方式などが手に取るように分かりました(笑)。まずスピーカーを見れば、何のユニットを使っているかわかりますし、エンクロージャーの大きさ、方式でだいたいの音の感じは予測でき、実際にデモを聞いても”まぁこんなものかな”という感じで掴めるようになっていました。この1年の知識は(善し悪しは置いといて)割りと使えるなと思いました(笑) 。このオーディオショウは、基本的に高級オーディオが中心なので百万円を裕に超える製品ばかりですので、原価を考えると高いなぁという商品がやはり多い印象でした。とはいえ、私の30周年記念スピーカーも設計や製作には多大な時間が掛かっていますし、あれを時給で積み上げていったらそんなものかなとも思いました。

某メーカーでは、提携しているオーディオケーブルメーカーのエンジニアさん(外国人)が、如何にこのケーブルはすげーのかを熱く語っていました。ケーブルのプラグに半田付けをするのは音が劣化するので、全て純銀削りだしで作ったとのことです。いわゆるRCAのアナログオーディオケーブルですが1m数十万円する高級ケーブルです。私からしたら突っ込みどころ満載ですが、その説明に”おおなるほど”と聞いている多くの聴衆の人々を見ると、オーディオは趣味の1つではあるけど、やはり宗教チックだなと思いました(失礼ですが)。オーディオメーカー全体を広い目で見ると、確かにスピーカー屋、ケーブル屋、アンプ屋はそれぞれその分野で最高のパフォーマンスを出そうとがんばっていますが、やはりオーディオは音源から耳に入る音波までのトータルシステムなので、各分野のそれぞれの追求がトータルシステムとしては大して効かない事が多いような気がしました。今回のオーディオショウでは、日本の某高級アンプメーカーが展示品として高級なプリメインアンプのスケルトンモデル(天板がアクリルで中の回路が見えるようになっている)を展示し、中の回路が見せるようになっていました。正直、拙いながらも人工衛星やらいろいろな基板設計をしている私が見ても、高級アンプ製品の基板がすごいとは全く思えず、数百円の海外製半導体がそれほど上手くない半田付けで取り付けられているという印象です。半田は焦げていてそれを洗浄もしていないですし(宇宙に行く基板では考えられない)、基板パターンもこれで本当にカタログに書いてあるような徹底的にノイズを低減なんていえるほど凝ったパターンかなと突っ込みどころ満載でした。あの程度の半田付けレベルで何十万として発売しているアンプの後ろに、半田付けの劣化を気にして全部純銀で削りだしたケーブル屋のこだわりが悲しくて仕方ありません(笑)。これは一例ですが、このように拘りは分かるけど、結果としてその拘りは無効になってしまったり、そもそも人間に半田付けの劣化を認識させることに無理があるので、我々消費者としては、過剰な性能追求をしている高額なオーディオを買う時は一度冷静に判断する必要があると思います。

さて、オーディオの音質を最も左右するのはスピーカーです。ケーブル・アンプに対してスピーカーは完全にスピーカーそれぞれ明確に音が違います。しかし、どれが良いかなどの絶対的な判断はできず、むしろ自分で聞いていてその音が好きかということがとても重要だと思っています。昨年、このオーディオショウでSonus FaberのAmatiを聞き、すごく感動した記憶があります(どんな音か覚えていませんが、感動したという行為に対する記憶です)。SonusFaberのAmatiを見てきましたがやはりスピーカーユニットは自作30周年記念スピーカーとほとんど同じユニットで、ミッドレンジに関してはよく見ると私が使っているユニットの方が(カタログ・値段的に)1つ性能が良いものでした。同じユニットでエンクロージャーを設計していますので、内部構造やバスレフのサイズ・構造のアタリはついており、実際のamatiを見ても私の設計とほとんど同じでした。やはり基本的なスピーカー設計理論は同じだなと思いました。さて音質ですが、当日の朝に自宅の部屋で自作スピーカーを聞いていきましたが、やはり数時間後にしかも違う部屋、違う環境(人の多さ=洋服で吸収される)で比較しても何とも言えないのが正直なところです。しかし傾向は明らかに似ていました。Amatiの方が少しウーファーの音圧を上げていましたがあれはこちらもオフセットを掛ければ良いので、調整可能です。ミッドレンジはおそらく緩やかなアナログパッシブフィルター(-6dB / octくらい)で掛けていて、全可聴域に対して割と主張している(音圧を出している)印象でした。とはいえ同じユニットを使ってエンクロの傾向も一緒なのでやはり同じ傾向の音がでていたと思います。そういう意味で今回の30周年記念スピーカーはまぁ成功かなという印象で安堵感がありました。380万円のスピーカー(Amati)と材料費約20万円の自作スピーカーですから、(厳密な比較はできないとはいえ)、まずまずがんばったかなという感想です。

Amatiでのデモは、クリスチアン・ツィマーマン(Krystian Zimerman)のラフマニノフのピアノ協奏曲2番を流していました。スピーカーを拘りはじめて、自作などをしていく内におもったのですが、はっきり言って良いスピーカーでクラシックを聴くのは本当に良いのかなという印象です。ツィマーマンの演奏はおそらく良い演奏だと思います。一方で、録音技術が当時はイマイチで、どんなに音の出口(スピーカー)を拘っても、録音があのレベルでは全く感動は薄いと思いました。もちろん生演奏は、どんなに録音技術やスピーカーが成熟しても、比較対象外として良いものと言われ続け、生で聞かないから感動しないと言われるのでしょうが、それにしても古い録音のクラシックをこの近年全く聞く気が起きません。紀尾井ホールの音響も最悪で、生演奏でも全くもって不満ですが、生の臨場感ということでとりあえず我慢はできます。一方で、録音レベルの悪い古いクラシックを良いスピーカーで聞くほど感情が高揚されない行為もなく、何とも聞く気が起きません。スピーカー・オーディオ好きは、最新の録音で高音質なものでスピーカーをセッティングする傾向があります。私も例外ではないのですが、これを繰り返していると耳がへたに育ってしまい(贅沢になってしまい)、S/Nの悪い古い演奏がむしろ苦痛でしかないようになってしまいます。そんなこんなで、私はあれほど好きであった、フルトヴェングラーなり、ホロヴィッツなり、ルービンシュタインなり、コルトーなりの古いクラシック熱が0になってしまい、例え無名の新人でも近年録音したクラシックしか聴く気か起きなくなってしまいました。これを書いたのは、Amatiという高級スピーカーでも同じ残念な印象を受けたので、やはりJazz Vocalなりがメインになっていくのかなと思った次第です。

それにしても役に立たないエントリーとなっておりますが、お時間があれば今週末の土日、銀座(有楽町)に行く機会がありましたら、高級オーディオという世界に是非触れてみて頂きたいです。オーディオ評論家と呼ばれる人々が、ワインを表現するソムリエの様に豊かな日本語表現でオーディオを語っておられます(笑)。男性率の高さが異常で、年齢層も高すぎで、どう見ても先細りの分野だと危機感を覚えました(笑)。まぁ携帯で音楽を聴く時代ですものね。

さて、私のオーディオ分野の趣味熱もそろそろ終了です。この世界をさわり程度ですがある程度わかりましたし、納得したスピーカー作りや好きなスピーカーも各社比較して見つかりましたし、音楽はもちろん聴いていきますが、オーディオ製作という趣味の時間として掛けるプライオリティは少し下がっていきそうです。趣味を1年に1つとしても、人生で多くて30~40個くらいしか出来ないと思うので、どんどん次に行かないとあっという間に人生が終わってしまいます。次は着物系、和系ですかね。

東京インターナショナルオーディオショウに行ってきました(オーディオ談義)」への4件のフィードバック

  1. 初投稿です。こんにちは。
    これ見てて、先週の授業で学んだ、ワインビジネスに凄い近いなあ、と思いました。
    1本数万~数十万円するワインが、途中のプロセスでいかに劣化しているかと考えると、
    高級品というのは本当にイメージや夢で勝負しているんだなあと。
    もう少ししたら私のブログにもこの辺の話をのっけようと思います。
    では、今後もよろしくです。

  2. こんにちは。

    ワインビジネスもオーディオ業界と同じ感じがしますね(私は詳しくありませんが、ワインの評価法がかなり主観的なことから同じような臭いがしますね)。
    この辺は、良い面・悪い面があるような気がしています。
    ブログでのこのあたりの記事を楽しみにしています。私もこのあたりのビジネスモデルに結構思うところがあるのでコメントしたいところです。
    よろしくー。

  3. マランツのショールームにご一緒させて頂いた際に、録音条件のよろしくない古いクラシックを聴いてそこはかとなくがっかりしたことを昨日のことのように思い出しました。
    演奏の美の追求と録音の完璧さの追求とは全く関係がありませんので、その両方を満たしている録音に出会うことは難しいですよね。特にクラシックでは、過去の演奏家の録音をいかにリマスタリングなどしても最新の録音には全くかないませんが、芸術性に感動することと、録音再生の美しさに感動することの両方を追求し始めると、なかなか後戻りが出来ない気がしていて、個人的には環境が許さないこともあり、オーディオ道には足を踏み入れないようにしています。

    それにしても、まさか製作にまで手を広げられるとは当初は思っておりませんでしたが、こうしてあっけなく終了するとも想定しておりませんでした。。今日たまたまご自宅の近辺をうろついていたのですが、近いうちにまたお邪魔させて下さい。

  4. dairaさん

    こんにちは!先日のメールを見るに海外に行かれているのかなと勝手におもっておりました。是非、今度自作のスピーカーも聞きにいらしてください。
    マランツのショールームでも、やはりクラシックは、録音の悪さ(不明瞭さ)が良いスピーカーで際だつだけで、いまいちでしたよね。実際にレコードへの録音による劣化も大きいですが、当時のマイクも性能がいまいちで、全く聞く気が起きません。難しいものですね・・・。

    自分の専門は今後も一生研ぎ澄まして行きたいですが、それ以外の分野は趣味としてその世界観や考え方の一部でも片鱗を見て回りたいなと思っています。そういう意味で、どんどん趣味を切り替えていきたいと思っています。

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