B&W 805 DiamondとMonitor Audio PL-100を試聴した感想。

B&W (Bowers & Wilkins)の最新スピーカー805 Diamondを某所で試聴する機会がありました。
Monitor Audio製PL-100も置いてありましたので、(個人的に好きなスピーカー達なので)、比較試聴してみました。
Signature Diamondを踏襲しているっぽいし(たぶん)、すごくまとまった音でした。ウリのダイアモンドツィーターですが、今までのアルミよりも高剛性・高硬度ということで、高音側の固有振動数が上がったみたいですね(資料を読む限り・・・)。自作でスピーカーを作ればわかるのですが、金属素材によって当然硬さに違いがあり、高音部(具体的には5kHzを超えたあたりから)、音圧f特が暴れ出します。ダイヤモンドを採用したことで、固有振動数の増加と、その暴れるp-pのレンジが少し下がったようですね。で試聴した結果では、ミッドの良さもあってか、とにかくしっかりと止まる。しっかりとおさまる。出るときはハイスピードで出るという感じでとても上品な音でした(この感想だと、ダイヤを採用した利点と一致しないのですが・・)。とにかく、ミッドとトゥイーターあわせて、とても良くまとまっていて、所有のNautilus 805より洗練された印象でした。素晴らしい完成度。結構差があったので、買い換えに値する進化を遂げていると思いました(高くてすぐには買い換えられませんが)

さて、過去のブログでも紹介しておりますが、B&W 805シリーズの他に個人的に好きなスピーカーがMonitor AudioのPL-100です。これも2本で50万円強ですから結構高級スピーカーです。結構というのは、スピーカーの世界には1000万を超えるスピーカーも多々ありますので、その変態の世界から見れば”結構”なのです。私の様な自作スピーカー人にとってはもちろん超高級です。
PL-100は、高音がリボンツィーターなので、そもそも高音部の音の出し方が805 Diamondとは方式が違います。また、両方ともブックシェルフで体積はだいたい同じではありますが、バスレフダクトが805は前、PL-100が後ろという違いもあります。バスレフ方式は、ヘルムホルツの共振を使って低音部を補強する方式で、現代では一番オーソドックスなエンクロージャー(スピーカーBOX)デザインと言えますが、理論的にはダクトはどこにあってもOKです。しかし、今回の比較でダクトの位置は結構重要だなと実感しました。
さて、試聴した感想ですが。やっぱりPL-100もすごかったです・・・。805 Diamondが先述の通り、中央にぴしゃっと上品にまとまる上質な音という印象に対して、PL-100はすぅーーーとぱっと広がり、だけどリボンとあのハイスピードで軽いミッドの恩恵からでしょうか、ものすごく広がるけど重くない音場という印象でした。なんでこんなに歯切れが良いのかと感心してしまいます。ミッドも本当に軽くて優秀なユニットです。正直言ってしまうと、PL-100の方が私は良い感じかな?と思いましたが、これは好みがあると思うので、是非この2本のスピーカーを比較試聴してみると面白いと思います(値段的にも良いライバルですし)。先に述べたダクトの位置ですが、やはりダクトは後ろにあったほうが音場の広がり的に良いんじゃないかと思いました。この2本はかなり高音質なレベルでの差ですので、甲乙というより好みだと思います。
805 Diamondをお店で見つけたときに店員さんが、”これ、やばいっす”みたいな感じでチャラく話しかけられました。サンプルが入ってきたばかりの805 Diamondをアピールしてくれましたが、どうやら新人さんの様でPL-100と比較したことがなかった様でした。私がPL-100と比較したいと申し出て、実際に店員さんも聞いてみて、”このスピーカーはんぱないっすね”と、またまたチャラく返してくれました(笑

個人のスピーカーの批評なんぞ、これほど怪しいものはなく、また好みもあるものですから、鵜呑みにせず是非ご自身で試聴されることをお勧めします。お金が余って、だけど高音質なスピーカーを欲しいと思っている方は、この2機種はお勧めです。ちなみに、週末少しずつ開発を進めている次世代自作スピーカーは、このPL-100を再現すべくがんばっております。今回久しぶりに試聴してまたモチベーションが沸いてきました。

タングステン加工の実際を通して、レアメタルマーケットの片鱗を見た。

タングステンという金属があります。詳しくは、”タングステン | Wikipedia“を参照頂きたいのですが、原子番号74、比重19.3という非常に重たく、また非常に硬度が高いため、切削工具としても使われている金属です(一部ではアクセサリーにも)。また、鉄、アルミ、銅などに比べて産出量が圧倒的に少なく、いわゆる稀少金属(レアメタル)と呼ばれる金属の1つとして扱われています。

さて、私が行っている人工衛星開発に、このタングステンを使う箇所があります。金属といっても採掘されるごつごつした鉱石の状態では全く使い物にならず、その鉱石からタングステンの純度が高い状態に精錬し、そこから図面通りに加工してもらわないと使えません。タングステンは、レアメタルですからそもそも材料自体を入手するのも大変ですし、またタングステン自体が切削工具になるくらい硬いため加工(任意のサイズにカットしたり、穴を開けるなどの金属加工)がとても大変です。アルミなどの軟らかい金属に比べ、ものすごく硬いのでダイヤモンド切削くらいしか歯が立たず、どんどん先が削れ、加工歯・工具代も重なり、とても加工費が高くなります。

私はある加工を施したタングステン材料の図面を引き、その図面通りにタングステン加工行ってくれる業者を探しました。
まず最初にGoogleで引っかかった業者Aに見積もりを依頼しました。

*ここで予備知識ですが、タングステン加工は板材形状の場合、その板厚の精度を出すのが難しい様です。理由はやはり硬度の問題です。アルミなど軟らかい金属の場合は、1mm厚の板材を作るときに1mmよりも少し厚い部材からフライスで1mmになるまで削れば良いですが、タングステンは材料が高くて更に硬いため、アルミの様に気軽に表面フライスとは行かないようです。(もちろん可能ですが加工費がとても高い)。そういう意味で見積もりには板厚方向の精度も1つ重要な観点となります。

◆業者A:日本の企業。レアメタルをどこからか仕入れてきて、加工に関してもその仕入れ先に依頼して納品する、いわゆるレアメタル商社。自社で加工などはできない。また商社であるため、加工依頼をしても、仕入れ先の見積もりを待つため、見積もりが遅い。

業者Aの見積もり結果:
・材料:タングステン合金(タングステンとニッケルの合金)
・価格(単価):52000円
・納期:3週間
・見積もりレスポンス:2~3日
・加工精度:タングステンの板厚方向は精度が出ない。出そうとすると加工費が跳ね上がる。

アルミ加工では数千円で済む小さな部材ですが、タングステン(合金)ではなんと5万円強ということでした。この時レアメタルを扱うのは大変だと考え始めたわけです。
この業者は、純タングステンではありませんでした。純タングステンはあまりに硬いため加工が困難で、ニッケルを混ぜて合金にすることで硬度を下げ、切削加工するとのことでした。純タングステンだと更に高価になるとのことでした。

業者Aは日本の商社らしく、対応も丁寧で誠実でしたが何せ高い。というわけで、検索でひっかかるタングステンを扱える業者に相見積もりを掛けることにしました。

◆業者B、業者C,業者D:日本の企業。ネットで比較的最初に引っかかりタングステンの”自社加工”を掲げている企業達。つまり、企業Aとは違って、材料はどこから確保しているかわからないが、タングステン加工は自社工場で行い出荷している。タングステン加工を掲げているだけあって、材料調達も安定し、加工技術も自信があるのだろうか、3社とも見積もりが早かった。

業者B,C,Dの内、一番安く見積もった業者Bの見積もり結果:
・材料:純タングステン(合金も選択すれば可能であるが値段はさほど変わらないとのこと)
・価格(単価):17000円
・納期:10日~2週間
・見積もりレスポンス:即日
・加工精度:加工図面に完全に準拠して加工可能。板厚方向は1mm板厚だと10%以内に収まる。

3者とも見積もりレスポンスが早く、対応も丁寧で、しっかりとした企業という印象でした。見積もりを見る限りでも材料費、加工費、行程などがしっかりとまとめられ見積もりだけでその会社の誠実さが伺えた感じです。いわゆる日本のまじめな加工屋という印象でとても好印象でした。値段は3社とも1.7万円~2.5万円で日本企業で、加工もできる企業の場合の相場感がわかりました。若干安かった業者Bにまず発注することにしました。

一方で、この3社を見つけている間、明らかに怪しい業者を見つけました。

◆業者D:日本の企業ではあるが企業の名前が(ここには出せませんが)超怪しい。普通の感覚ではこの名前は使わないネーミングセンス。ウェブサイトでは、タングステンはじめ、あらゆる中国製品を取り扱いますと書いてある、対中国専用の輸入業者という肩書きを掲げている。ウェブサイトもはっきり言ってしまえば汚い(ガチャガチャしている)。しかしウェブサイトの一部に”日本企業では到底だせない価格でタングステンを輸入できて、自信がある”という文言が。そこで、とりあえず同じ図面を使って見積もりを出してみることにしました。

業者Dの見積もり結果:
・材料:純タングステン(と主張)。タングステン合金?対応は可能であるが値段は純タンと変わらない。
・価格(単価):3800円!!
・納期:中国業者が受注後3週間程度(で、現地上海を出荷。数日で日本に到着。輸送料は着払い)
・見積もりレスポンス:中国業者に問い合わせるため、3~4日程度掛かった
・加工精度:問題なく加工できるとのこと。板厚方向?質問の意味がわからない。全く問題ない。

業者Aでタングステン=高いというイメージが脳裏に焼き付いていたため、業者Bの安さに感動し既に発注してしまいました。一方で一番見積もりが遅れて届いた結果がなんと3800円。日本でのアルミと同等、もしくはそれ以下の値段で驚愕致しました。変な前知識が付いていた”タングステンの板厚方向は精度を出すのが難しい”に関しては、質問の意味がわからない。普通に精度は出るとの回答。あまりに安いので、どんな変なものが届いてもいいやという気持ちでとりあえず発注してみました。今後使えるかもしれないので。

◆納品後の製品比較
・業者Bの製品:寸法・交差などはこちらの図面指示通りでした。製品は真空パックで補完された状態で納品され、全面フライス加工(指示はしていない)がされていたため綺麗な表面状態で完璧な状態でした。我々の開発に十分に使えるクオリティでした。満足な製品だったと言えます。

・業者D(中国製)の製品:寸法・交差など指示通りでした。CAD図面から算出される体積と、実際に計った質量より密度を推測しましたが、19.3[g/cm3]であったため明らかに純タングステンです。超高密度金属であるため、不純物が入れば入るほど軽くなるため、間違いなく純タングステンだと推測されました。全面にフライス加工は掛かっていなかったため、見た目は黒ずんでいて汚れている様に見えましたが、しっかりと洗浄して送ってもらえたようです。穴空け加工部などには罫描き後が残っていたりとアナログ感ばっちりですが、我々の指示した図面通りしっかりと作られていました。我々の開発に十分に使えるクオリティでした。業者Bほど洗練はされていませんが、図面だけ見れば、業者Dのクオリティで十分です。

◆まとめ
・(単なる一例に過ぎませんが)中国のタングステン加工に関する市場を肌で感じることができました。(以下で述べることは今回の1例だけを背景に述べているものです。統計学的にサンプル数1なんていうのは何も言えた物ではありません)
・業者Aは、いわゆる”単なる”商社業で正直、今の内に儲けられるだけ儲けておこう的な感じでしょうか。さすがに高いと思いましたので、今後使うことは無いでしょう。サンプルを以前に頼みましたが納品された製品も粗悪な物でした。
・業者B(など日本の加工ができる業者):おそらくは材料を安く仕入れられるラインは確保できているのでしょうね。あとは難切削性のタングステンを、日本の人件費ベースの加工費とどんどん折れるであろう切削歯の実費などが上積みされて3万円程度という値段になったかと思われます。しかしそこは日本の業者だけあって、対応は早く丁寧であり、納品物も美しい製品でした。
業者D:製品を見る限りとてもまじめな中国業者が加工を請け負った様です。少なくとも製品を見る限りそのきまじめさは、製品から読み取れます。タングステンの産出量は中国が世界一とのことです。その豊富な資源(材料)と、加工費が、日本の業者と比べて数倍はおろか”桁”が違う事に驚きました。恐るべき中国加工業者です。

◆たわごと(国際経済を全く知らない1エンジニアが思うこと)

タングステンはたまたま中国が最大産出国ではありますが、その他のレアメタルも含め、中国はアフリカを中心に強烈なレアメタル外交をしていることが知られています。かなり強引な手段を使ってレアメタル確保のための国家間の契約を次々に結んでいるそうです。このあたりに日本のぼっちゃん外交(=国際会議に出て行って握手している写真だけを撮ってくる)とは目的もその後の戦略も雲泥の差があります。今回の加工品はかなり簡易な物ですが、実情を考えると材料費と加工費にここまで差が付いてしまうとさすがに日本の製造業は心配になってきます。リチウムを含め、レアメタルを扱う業種は材料確保にこれだけ差を見せつけられると、グローバルマーケットのこの時代では全く勝ち抜けないと、今回実体験で感じました。日本はこれから、エコカ-・電気自動車などで売り出すといってもその心臓部となるバッテリの材料であるリチウムがないわけですから圧倒的に不利です。

Google, Apple, Amazon, Microsoftなどの米国企業は、それぞれWeb, iPhone/iTunes Store, 物流・通販, OS/OfficeSuiteのそれぞれの分野でデファクトを勝ち取り、人類全体の活動でどうしても”彼らを通過せざるを得なく”、その度にチリンチリンとお金が落ちて行きます。いわゆるインフラ・プラットフォームとして抑えている状態です。中国のレアメタル市場の確保は、何か物を作るときには必ず中国材料プラットフォームを通るようになり、非常に強力な状態になります。

米国は80年代~90年代に日本に追いつかれ・追い抜かれ、NYCのビルを日本企業が独占なんていう時代がありました。しかしその後でも、しっかりとIT,バイオ、軍事、金融で技術・設計・スキームの頂点は抑えていますし、近年のネットワーク時代になっても先に挙げたような4社など、まだまだトップ企業が乱立しています。つまり80年代に製造業は日本にやられた(当時日本の人件費は安かったし、勤勉だったから)けど、いわゆる設計部(製造分野に限らず、IT,バイオあらゆる分野の一番先頭の技術)に置いては常に世界一を確保・維持し続けているのはすごいことです。日本はバブル崩壊後、何とか立ち直ったと勘違いをしておりますが、無駄に増えてしまった人件費(平均年収)の為に製造業は人件費の安い中国・東南アジアに持って行かれました。ちょうどアメリカが80年代に日本にやられた構図ですね。しかし、こうなった現状で、日本にはほとんど”設計部”がありません。自動車業界・カメラなどの一部の分野のみです。(それも先述の通りレアメタル問題が今後立ち上がってくる)

そう考えてみると日本の80~90年代の栄光はやはり三日天下でした。トップは相変わらず米国にあり、ほとんどの分野の最先端の設計図は米国にある。知人の米国の大学の授業の話(Chesbrough教授の論議(2) @ A Golden Bearの足跡)を聞けば、世界中の頭脳が集まっていて毎回の授業を緊張感を持って望んでいるアカデミズムが失われていないようです。替返(替わりに出席の返事をする事)、過去問・過去レポートデーターベースなどが発展しているヌルイ日本の大学とは雲泥の差です。

経済評論家の人たちは、”日本の経済を支えているのは中小企業で、今後キーを握っているのは小さな町工場のおっちゃん達だ”みたいなことをよく言います。勘違いにもほどがあります。プロジェクトXの見過ぎです。確かに”痛くない針”の岡野工業などの世界に誇る企業はあると思います。しかしそれは氷山の一角の一角の一角です。(私の零細企業ももちろん含め)、日本の中小企業のおっちゃん達は仕事が大して出来るとは思えません(大変失礼ですが、衛星を作って多くの企業と付き合っていますが心からそう思います)。日本の年収は下がってきていますが、それでも日本という国で生きていくために必要な額としては最低限額があり、その額は途上国に比べれば非常に高いものです。いろいろな製品には細かい部品がアセンブリされているわけですが、全ての部品が”痛くない針”の様な精度を要求するものではありません。そう考えると、やはり途上国の安い加工業者という形になってしまうかと思います。そう考えると、今後日本を支えるのはおっちゃん達ではないことは明白です。人件費(年収)が世界水準でみて上がってしまった日本では製造業が中心いう国家戦略では食っていけないってことです。しかも今回の経験で、加工業に置いてはレアメタルをがっつり持って行かれているので、今後はますます太刀打ちできません。

技術立国日本。エンジニアとしては嬉しい言葉ですが、製造業をやるのは発展途上の人件費が安い国です。日本は資源がない。食料もない。だけど人件費だけは上がってしまいました。現状殆どの分野の設計図は、この30年間で、あまり日本には蓄積してこられませんでした。この状態で我々がやるのは、いろいろな分野の”設計者”=真っ白な紙から新しい創造物を考えられる人材の育成であり、そう言ったビジネスです。iPhoneの裏面には、”Designed by Apple in California / Assembled in China”と書いてあります。まさにこの構図です。Appleは、ジョブスが居る限り、これからもどんどん楽しい製品とサービスを作っていくでしょう(ジョブス,ウォズ世代が居なくなった後のアップルも楽しみですが)。その時には、中国の人件費も上がり、今度はAssembled in Africaになっているかもしれません。個人が、企業がとにかく新しいものを創造する姿勢・癖をつけ、発信し行動していかなければなりません。私もこの腐った政治と財政に不安を感じながら、1エンジニアとして、更に創造し、発信していく側になるように努力しなければと考えています。

*ここからは更にレアメタルとは関係のないたわごとになります。

そう考えると、世界トップの設計者達が川の上流から流す有用な情報を、Twitter網というみんなで川に入り横に並んで手をつなぎ、流れてくる情報を誰かが拾うという(いわゆるソーシャルフィルタリング)技術に興奮し、”こんな情報拾ったよ”なんて、じゃれていてはだめです。言ってみればそれは情報の受け取る側、もっと言ってしまえば宝くじでいう、並んで買うサイドの行為と言えます。手をつないで情報を拾うことは、これだけ情報があふれる今、効率よく探すという技術としては有用ですが、それはあくまで”過去の創造後の”情報集めです。逆にその情報を使って、常に自分で創造し発信していく側に回る努力を意識をしなければならないと思います。(もちろんTwitterのオープンなAPIはすばらしいと思います。作った人は明らかに上流で創造物を流している人物です)
今日発売のiPadも(輸入してまで早く買っている私が言うのもなんですが)、さっさと使って飽きて、それに変わるプラットフォームなりインフラを起こせないか、またはプラットフォームの経年的な変化(iTune Storeプラットフォームもいずれ廃れて変わるでしょう)に色あせないキラーコンテンツ創造に真剣に取り組まなければならないと思います。とにかく、川の上流側に向かう意識で、下流でせき止め側に喜んで進んではいけません(世の中そう言う流れですが)。

ま、宇宙から見れば日本没落云々なんてどうでも良いことなんですけどね。

iPadを3週間使ってみた感想。(はやるのか?買いなのか?)

2010/05/10追記:一番下に購入先情報を追記。
2010/05/14追記:”一瞬起動”に関して追記。こんな強力なメリットを書き忘れていました。
2010/05/14追記:”iPadの改善点”について追記

******** 本文は以下より ****************

iPodを開発用に購入してから3週間が経ちました。このエントリーでは、その個人的な雑感を述べたいと思います。日本でも今月末(5/28)の発売を控え、5/10から予約が開始されます。その前に何かの参考になれば幸いです。
(* 私は米国に行った際に開発用に購入して来ました。日本では技適がまだ取れていませんので、日本国内で原口大臣と同様に違法に使用することはありません)

非常に長くなってしまったので、赤字の部分だけ斜め読み頂くだけでも、iPadの雰囲気が伝わるように工夫しました。

iPodの細かいスペックは言わずもがなですが、iPadの公式サイトをご覧ください。私の感想は、iPodの何となく見えてきた魅力は、ウェブのスペック(仕様)からだけでは見えてこない、つまり、”iPhone, iTouchの画面がでかいデバイスではない”という印象です。このブログでは、いろいろな場面で使った感想・感じ・雰囲気を箇条書きで、雑に述べていきますので、何かその内の1つでもピンと来たら、ご予約の検討にされてみてはと思います。

1)画面の大きさは想像以上に魅力的。
iPhone / iTouchに比べて、物理的にも解像度的にもiPadは4倍の画面面積があります。(iPad = 1024×768 @ 9.7インチ | iPhone = 480×320 @ 3.5インチ)
iPadを使ってみると、この画面の大きさは単純にiPhoneより大きいという予想できる恩恵以上の、かなり大きな力・アドヴァンテージがあることが体感できます。

PCでウェブを見る精神状態でPC用ウェブページを見られる。つまり、フルブラウザの搭載が当たり前になった今の携帯電話で、大きなPCのウェブページを、スクロールを多用させ、とりあえず見られるという状態ではありません。当たり前の事を言っていますが、ウェブを普通に見るという精神状態が、iPhoneが大きくなっただけでしょとは違う感覚がiPadにはあるということです。これが、iPhoneと同様に”瞬時”に起動して、しかもベッドに入っても、ソファに寝っ転がってもできるという感覚を想像してください。

◆付属のカレンダーアプリ(google カレンダー、Exchangeサーバーなどと連動可能)は、大画面の恩恵で大変見易くなりました。横置きにして、1ヶ月間表示にしたときが感動で、まさに机の上に置く紙の卓上カレンダーと同じものです。これもiPhoneでスケジュールが”見ることができた”、から紙媒体のカレンダーを置き換えうるものであり、更にネット経由で各カレンダーと同期しますから、卓上カレンダーだけでなく、手帳をも置き換えられる可能性があります。

◆マルチアカウント対応の付属のメーラも横置きで見たときが秀一で、私の様に数個のメールアカウントを切り替えているユーザーは、左にアカウント+フォルダ構成(受信トレイ・振り分けフォルダ)、右にメール本文が表示できるので、可視性も良く使いやすいです。Word, Excel, PDF, JPEGなどの添付ファイルは当たり前ですが表示できますので、メールチェックという機能としては完璧です。ちなみに、日本のiPhoneは、softbankが、専用のメアド(@i.softbank.jp)を提供しています。それは、IMAPでアクセスするメールアカウントなのですが、iPadでそのアカウントにアクセスしても、絵文字が表示されません。iPhoneにはsoftbankの何らかの実装が入っているのかもしれませんね。

◆ブラウザ・メーラーなどで多用するキータッチ式のキーボードですが、横置きにすれば、1つ1つのボタンがかなり大きいので、それなりに使いやすくなりました。物理キーボードの約30%(慣れれば50%位も?)のスピードで入力ができるのではないでしょうか。とはいえ、やはり物理キーボードには(今のところ)敵いません。物理キーボードだと、指が落ちた瞬間に、キーの位置を触覚で微妙に調整を行っていますよね。iPadではそれがないので、ミスタッチが多いです。ただ、これがキー溝が無いことの問題かはまだわかりません。FとJのホームポジションに常に正確に戻っていられれば、ミスタッチも減るのかもしれません。FとJの位置のボッチ(でっぱりマーク)が物理キーボードでは役に立っているかもしれません。これは、慣れと、インプットメソッド(+サジェスト)での文字補完機能などで、精度は上げられそうな気がします。Googleなどでは、検索窓の入力中でどんどんサジェストが入りますし、タイプミスも”もしかして”で保管されますから、こういうバックの技術も合間って、iPadのキーボードはかなりの高速タイピングが期待できます。実際には、全指を使って打つことはまだ難しく、左右の人差し指と中指を、北斗百裂拳のように打っていることが多く、素人ブライドタッチみたいな状態です。

◆ここまで書いていて思うことは、横置きで使っていることが多い様です。ウェブもメールもカレンダーもキーボードも、Youtube, ビデオも含め基本横置きで使うことが多いです。パソコンのディスプレイも640×480のVGA時代から始まり、1024×768、1600×1200, 1920×1200などのように発達してきていますが、考えてみればみんな横長のアスペクト比ですよね(人間の眼が横に配置されていますし)。携帯、iPhoneなどが縦使いが多く、iPadで横置きが多いというところからも、iPadは携帯の延長ではなく一つ上のレイヤーのデバイスなのかなと思っています。

◆電子書籍リーダーとして
この部分はiPadの発展に大きく影響していると思うので、後で1つのテーマとして扱います。結果を述べると、電子書籍リーダーとしては最高に使えます

◆動画、Youtubeは解像度と画面が大きいですから当たり前ですが良い感じです。iPadの解像度が、DVDの解像度(720×480でしたっけ?)よりも解像度があるんですよね。なのでDVDの程度の動画はもちろん、Youtube HD動画などは大変美しく見られます。私は、谷将貴ツアープロコーチの動画をiPadに入れてありますが、とても良い感じです。ゴルフ練習場で活躍中です。

◆マップアプリは、カーナビとして使える可能性がある。(ただし3Gモデル)
画面が大きいので、マップは大変見やすいです。”経路”機能を使えば簡易カーナビとして使えるかもしれません。一方で、GPS機能は、3Gモデルしかついていませんので、Wi-Fiモデルだけですと少し厳しいかもしれません。Wi-Fiの位置情報サービスで数10m程度は決まる様ですが・・。

フォトフレームとしては完璧です。近年フォトフレームが流行りで、結構売れている様ですね。ただ写真を表示するだけの普通のフォトフレームは、iPadが来てしまうと存在価値はありません。低価格くらいしか魅力がありません。Sonyは高級路線で2万を超えているフォトフレームが出ていますが、iPadが4万中盤(?)から発売されることを考えると、すぐにでも発売を引っ込めた方が良さそうです(もちろんSonyの上位機種はHDMI出力などがあるわけですが、iPadの外部画面出力なりネットワーク出力なりで、いずれ(次機種?)解決されるでしょう)

◆(ニッチな使い方ですが)オーディオ出力ソース+ジャケット表示デバイスとしての素敵かもしれません。
LPレコードはもちろん、CDすら売れないこの時代、音楽はネットダウンロードが主流になっています。一方で私も含めピュアオーディオと呼ばれる狂信的な音楽”聞き”(機器)好きの連中は、CDやLPのジャケットの綺麗さも一つの楽しみだったりします。ジャズなどのLP判のジャケットデザインは秀逸でとてもかっこいいのが多いです。彼らは何百万円も掛けている家のオーディオで、LPまたはCDなどを聞く際に、いちいちそのジャケットを斜め45度の台において、このジャケットの曲を掛けているんだぞ的な誇示をするわけです。ジャケットも含めての音楽アルバムなんだと。iPadはiPod機能(=音楽再生機能)は言わずもがな搭載されている訳ですが、音楽再生中にジャケットのアルバムアートワークが画面一杯に拡大されて表示されます。この”大きさが”私からすれば”おお”っと思う訳で、iPadを同じように45度に傾けてオーディオの前に置いておけば、ジャケット披露には使えるなという印象を持ちました。
ここには(簡単に解決できる)課題がいろいろあります。まず、iTunesの各オーディオファイルに埋め込めるアルバムアートワークを解像度の高い綺麗なものを用意しなければなりません。今までのアートワークは低解像度の物が多く、iPadで拡大されるとシャギーやJPEGのブロックノイズが目立って全く美しくないです。私は自分でジャケットの写真で撮って取り込んでいましたが、iPadまでの解像度を考えず小さめに取り込んでいるものが多かったです。今までのアルバムを全部高解像度で撮り直すはだいぶ萎えますが、上記の為にはがんばらないといけません。
また、高音質で再生するためには、iPadから後段のDACにデジタルデータ”で”渡さなければいけませんが、ここにもいろいろ問題があります。私の環境では、DENONのDCD-1650SEというCDプレーヤーをDAC代わりに使っています。CDプレーヤーなのですが、外部からSPDI/Fの光デジタル入力と、USB経由でのデジタルデータ取得ができる機種であるため、外部ソースのデジタルデータを内蔵のDACを通して、プリアンプ・パワーアンプに渡しています。過去にも述べていますが(avexの”microSD”による楽曲販売について、ナウイのか考える。)、CDはさすがに時代遅れでして、これだけフラッシュメモリが安くなった時代に敢えてモーター+レーザーでの非接触呼び出しをする必要はありません。私もこのCDプレーヤーはSACDを希に聞く以外は、iTouchに入っているデジタルデータを入力してDACとして使っています。同じ様にiPadも接続してみましたが、現時点では再生できません。iPadのドックコネクタは、カメラが付いたりUSB、カードリーダーが付いたりといろいろ機能が拡張されているようなので、少しプロトコルが変わっているのかもしれません。DCD-1650SEをはじめ、デジタルで音声を引っ張れるOnkyoのND-S1など機種は動作確認が必要です。この問題は、ファームウェアのアップで対応してもらえるのか少々心配です。iPadでジャケットを大きく表示し、デジタルデータのままDACに渡し、プリメインアンプに渡すというのがオーディオヲタク達には喜ばれると思うのですが・・・。
また、ヘッドフォンで聞く限り、iPhone/iTouchに比べて、iPadは明らかに音質が良くなりました。iPad内蔵のDACが良いのか、筐体が大きいためグランドが広くとれているからか?わかりませんが、音質は向上しています。

SSH / Telnet端末としては、”本格的には”使えない印象。サーバー・デーモンの管理程度なら問題なし
これもややニッチな使い方かもしれませんが、iPad対応アプリiSSH – SSH / VNC Consoleを使って、私の管理しているLinuxサーバーにリモートログインしてみたところ、画面が大きいためかなり良い感じに思えました。しかし、やはり1024×768とはいっても、その半分がキーボードで使われているので結構厳しいです。またキーボードが数字キーが無いのと、テンキー、矢印キー、頻繁に使うキー(コロン・セミコロン・|バー、括弧系文字)が、切り替えないと出せないため、かなり使いづらいです。これはキーボード問題を解決しないと、本格的には使えない印象です。実際にviを使って、C++言語でhelloworldを書いてコンパイルしてみましたが、超時間がかかりました。おそらく、デーモンの起動・再起動など管理程度なら問題ないので、そういう使い方をするのでしょうね。VPNクライアント(L2TP, PPTP, IPSec)を付属しているので、サーバーの管理などは非常に便利かと思います。また、キーボード問題も外部物理キーボードをbluetooth経由で接続できるので、解決してしまうんですよね。

◆リモートデスクトップクライアント端末としては、少しは使えるかも。
これもややニッチな使い方かと思いますが、iPad対応のアプリRDP(from MochaSoft)を使って、遠隔地のWindowsPCにリモートログインしてみました。iPad付属のVPNクライアント(PPTP)経由で遠隔地のLANに接続し、VPN経由で、Windowsにリモートログインしたところ、全く問題なく自分のPCにログインすることができました。複雑な作業は面倒ですが、少し自分のPCに保存されているwordファイルを開いて見るとか、そんな使い方なら全く問題なく使えます。上記のSSHとも含め、このあたりはiPhone / iTouchでもできましたが、やはり画面が大きいので、少し”使う気”になれるかなという印象です。

そんなこんなで、いろいろな場面でiPadを使ってみると、画面の大きさはやはり魅力でして、iPhoneで何とかやっていたというものを、本格的に使ってやろうという場面が多々多かった気がします。細かいことを書きましたが、やはり、ウェブ、メール、スケジューラ、電子書籍、これに関しては最高だと思いました。

2)電子書籍について
電子書籍の発展が、iPadが成功するかを左右するみたいな情報が多く飛び交っているのではないかと予想されます。私も同様の意見です。遅ればせながら、最近村上春樹さんの1Q84を読み始めたのですが、なにせハードカバーで本が大きい!。出勤用のバッグには、NotePC + 財布などに1Q84が入るともうパンパンで、ジッパーを閉めるのがきつい状態でした(バッグが小さいからなんだけど)。そこで、iPad + PDFリーダーのアプリ(CloudReaders = 無料:良いソフトです)で試しに本を読んでみることにしました。1冊100円で自分の書籍を裁断しPDF化してくれる会社”BOOKSCAN“にお願いして、1Q84と実家にあった北斗の拳(漫画)をPDF化してもらいました。実際に読んでみた感想は、全くもって書籍と同じ、全く問題なしです。紙を実際にめくる感覚など・・・なんていうアナクロな考えは遠に消え去り、普通に読めます。活字の1Q84はもちろん、コマをおいかける漫画も全く問題なく読めます(しかも早く)。それ以降、出勤バッグには、NotePCとiPadになったので、パンパン状態は解消されました。NotePCを持っているならPDFリーダーを立ち上げて見れば事は足りるのですが、電車に乗ってNotePCを使うのは(私はしますが)一般の人はしないと思うので、やはり良いデバイスだと思います。しかし、立ち乗車でiPadによる読書は少し厳しいかもしれません。日本の混雑した車内で、iPadを片手に本を読むにはすこし重すぎるかもしれません。iPadの重さに関しては、後述します。
さて、私はBOOKSCANでPDF化してもらいましたが、これは全くエコではありません。紙に出力して、また電子データに戻しているわけですから。やはり出版物を直接電子データで購入できる仕組み必要です。ここは明言を避けますが、日本の出版業界の既得権益と、Apple, Amazonなどの新参者との権力争いですね。出版業界は、利益激減を裏腹に、電子データだとコピーが出回るとかいってしばらく阻止してくるかもしれませんね。おそらく、Apple, Amazonなどの電子書籍出版側は、著者に対して、紙媒体の出版業界よりも大幅に高い印税で釣ってくると思いますので、この両者がどのように折り合いをつけていくか楽しみです。いずれは、電子書籍化になるわけですから、出版業界はへんなブロックを掛けて崩壊するよりは、日経新聞の様にどんどん前向きに出て行った方が良いと思います。とはいえ、実際には、私のスキャンしてもらった1Q84のPDFも、コピーが出回れば1800円の値段を払わなくて済むわけで、コピー問題は真剣に取り扱う必要がありますね。アメリカはAmazon Kindleが売れているらしいので、日本では、iPadをきっかけになかなか進まなかった電子書籍化インフラが整備されるのか楽しみなところです。
日本では、村上春樹さんくらいの大物文壇が、今後電子書籍しか記事を書きませんくらい言わないと変わらないかもしれませんね。私としては、iPadを使っての読書が相当に快適だったので、どんどん進んで欲しいと願っています。

3)Wi-Fiモデルか3Gモデルか?
日本では、3Gモデルに対して、NTT DocomoがMicroSIMをサービス提供することが発表されました(その後、3Gはsoftbankだけになりました。Docomoの戯言でした)。iPadは、いろいろ使ってみてやはりネットに繋がっていないとおもしろくないです。ネットに繋がっていないと電子書籍くらいしかやることがありません。よって、E-mobileのPocket Wi-Fi + iPad Wi-Fiモデルか、iPad 3Gモデルのいずれかで常にネット環境は確保しなければならないと思います。私は、Wi-Fiモデルを購入しましたので、Pocket Wi-Fiとの連携でネット環境を確保する予定しています。また、DocomoのM-Zone(Mopera U)に契約しているので、東京の地下鉄、スタバ、マックなどでは、Wi-Fiが確保できています。(M-Zoneはお勧めです。M-Zoneはほとんどの駅で飛んでいるので、駅に到着している1~2分の間でメールチェックはできますし、打ち合わせの際にスタバ・マックなどを選べ ば、多くの場面で確保できます。現Docomoユーザーは、数百円で使えます)。一方で、Pocket Wi-Fiのバッテリーの持ち時間、小さいとはいえ持ち歩く必要がある点、接続したりすることの煩わしさを考えると、やはり3Gモデル+ M-Zoneが最強かなと思います。カーナビとして使う場合は3Gモデルが必須ですね。
Docomoの価格体系も発表されていないし、3Gモデルの値段は10万近くになりそうな様相ですが、可能であれば3Gを買っておけばより楽しめるのではないかと思います。

4)ストレージ容量は必要か?
16GB, 32GB, 64GBと発売されるわけですが、私はWi-Fi で16GBと一番弱気な機種を買いました。これは使い方次第かと思いますが、電子書籍のデータが結構大きいのと、画面が大きいので写真・動画を載せる可能性が高く、大きいに超したことは無い印象です。ちなみに北斗の拳のPDFが1冊約70MB程度(200ページ)で結構使います。こち亀全169巻ですと12Gになるので、16Gモデルですとこち亀だけで終わってしまいます(笑)。参考になれば。

5) 雑感・いろいろと思った事。
レストランなどで、さっと出せる
先日、知人のフランス人と、割と良い感じのフレンチレストランに行ったのですが、そこでiPadを割と自然に使えました(もちろん本来はよろしくないのかもしれませんが)。いわゆる良い感じのレストランで、NotePCを取り出して、トップカバーを開いてとなると、高さ方向があるため、目立ちますし、きれいなテーブルの上では広げられません。それを平置きできるiPadは、まぁまぁ出しやすいかなと思いました。平置きなので、一緒に居た全員が、のぞき込むことができます。NotePCだと画面が立つので、見る人の方向に向けなければならないですよね。それとみんなが指を伸ばしてページをめくるなど、結構いろいろな使い方ができました。このレストランの場面で、みんなでのぞき込んでいる場面が、iPadっておもしろいなと思いました。iPadは加速度センサが付いているのでどの方向に向けてもコンテンツが回転されて表示されるわけですが、人間は結構逆転していも文字や写真は理解できるもので、平置きのiPadのコンテンツを4方向からみても、問題はなく、結構会話は弾むものです。 ネットにつないでウェブなどを見れば、会話の中で出てきた内容にささっと検索することもできますし、良いデバイスだなぁと思われます。
上記で、さんざん”NotePC”的に使えると機能重視の解説をしてきましたが、そのNotePC級の機能を、こういった環境でささっと出せることに、このiPadのおもしろさがあるのではと思っています。NotePCだと仰々しい、携帯だとこぢんまり、そこを埋めるものだと思います。

◆(ぶっちゃけ:汚い話)トイレにも持って行かれる
汚い話ですが、敢えて書いておきますと、Wi-Fiがどの家庭にも飛びつつある今、トイレ内にも飛んでいるわけです。そうなると、iPadはトイレに持って行かれるんですよね。トイレで本を読む人がいるのですから、電子書籍という側面では、不思議ではありません。一方で、上のレストランの話の裏腹で、トイレにNotePCだと仰々しいですが、iPadならさっと持って入れる。この感覚は携帯をトイレに流しちゃう人が多いことを考えると携帯は持ち込んでいるですよね。書籍の側面、携帯の側面でiPadは全世界のトイレにどんどん進出するかと思われます。この話を書いておくと宮下のiPadは毛嫌いされそうなので、ちゃんと消毒します。

◆会社のミーティングをiPadを持って参加してみた
会社の定例ミーティングには、NotePCをもって参加していましたが、最近はiPadで参加しています。進捗報告と今週の予定は、カレンダー機能を使えば話せます。メールベースの内容はメーラーで確認できるということで、NotePCが無くともスマートに会議には参加できそうな様相です。しかし、議事録当番の時はNGでした。ミスタッチの多い現段階では、議事録メモは間に合いませんでした。iPad + キーボードを持っていくなら、NotePCでいいじゃんってことなので、このあたりのビジネスユースは、どうiPadが入り込んでいくか楽しみなところです。

電車の中で取り出すと、内容は隠せない
混雑した電車の中では、自分のメールは後ろの人に読まれている可能性があります。女性の多くは見えづらいシートを貼っている様ですが、液晶メーカーからすれば多くの方向から見えるように視野角を広げる努力をしているわけで皮肉な状態です。iPadに関してもそのようなシートは発売されるのかもしれませんが、それはあまりに面積が広いので防ぐのは不可能だと思います。実際に電車の中でiPadを取り出して、北斗の拳を読むわけですが(笑)、どう考えても隣の人は一緒に読むことができます。iPadを使って、読む物はホクケンかよと思われているかもしれません。というわけで、ウェブ、メール、電子書籍としてはかなり使えますが、電車の中ではコンテンツはオープンなので、卑猥な小説を読む方には向かないかもしれません。スポーツ新聞のエロコーナーを思いっきり見ているおじさまもたまに見かけますので気にしないのかもしれませんが。

意外と重たくて手首が疲れる
これは結構重要な問題です。スタバで1~2時間だらだらiPadを使ってみたところ、画面が結構反射するので、机に平置きだとやや見難い感じです。そこで、自分に正対させるように手首を使って45度傾けて支えるわけです。両手なら気にならないのですが、片手はコーヒーも飲みたいわけですし、ずっと両手で支えるのは体制が変です。そこで片手で45度を支えるのですが、これが結構重たくて疲れます。折りたためる45度の置き台みたいなものは売れるかもしれませんね。この重さは、電車で立っているときに片手で支えるのも同様に厳しいかと思います。次世代では軽くなるのでしょうか?画面の大きさは魅力ですが、逆に重さは少しネックかもしれません。もちろん膝の上に置く、机の上に置く環境では問題ありません。

◆教育目的ツールとして、
長くなるのであまり触れませんが、アプリ次第、制度次第でとても有用、魅力でしょうね。Crayon PhysicsのiPad対応版がでたら買ってみたいと思います。

◆いろいろな操作端末として、
wifi + 3GでIP接続ができるわけですから、いろいろな物の遠隔操作デバイスとしては使えますね。

クックパッドなど、”手が汚れた環境で使える”
日本でトップ級にアクセス数があるクックパッドですが、まさにiPadでクックパッドを表示して、キッチンに持ち込むという使い方は良いかもしれません。物理キーボードではないのでタイピングが遅いと書きましたが、逆に物理キーボードじゃないメリットとして、キーボードの間に料理中の手で付いた小麦粉が落ちることがないわけです。これはむしろメリットです。料理を作りながら、食材で汚れた手でもiPadは使えますし、その後表面を掃除すれば良いので、むしろこういった場面はiPadの独壇場かもしれません(とはいえ、ホームスイッチ、イヤフォン穴などは防塵・防滴ではないのと思うので注意が必要です)

◆iPad的ウェブサイトが出てくるかも?
上記のクックパッドは、基本的にはレシピを参照するだけですので、iPadなどではとっても快適に見られるサイトです、逆に”2ちゃんねる”の閲覧は最悪です。まず、現iPad搭載のSafari(ウェブブラウザ)はウェブページの内容の検索ができないので、2チャンネルの昔のサイトデザインは全く向いていません。スレッド名が多量に並んだ分岐ページでは、iPadはとても大変です。Googleで検索して2ちゃんねるのページが引っかかって、そこに飛んでもキーワード検索ができないのでたどり着けません。そう考えると、2ちゃんねる的なサイトは、iPadには向いておらず、”ページをスクロールして、押していくだけ”のサイトが向いていると言えます。これはどんどん人間が退化している気もするのですが、そういう誘導系のサイトデザインが好まれるかもしれませんね。逆に2ちゃんみたいなサイトは、ビューワーみたいなアプリで対応していくのかなと思います。クックパッドは偶然かもしれませんが、iPadとの親和性が高く、参考サイトになると思います。

◆(2010/05/14追記)一瞬起動のメリット
そういえば書き忘れていましたが、iPhone OSですので、iPadはスリープ状態から、瞬時に起動できます。こんなメリットを書き忘れていました。上記で紹介した、”PCサイトをストレスなく見られる”という行為が、さらに瞬時に始められるというメリットは強大です。さっと起動、さっと検索、さっとスリープ。現状、Win7ですと、スリープにしておけば瞬時起動は可能ですが、電気代を考えると電源オフ or 休止状態に入らざるを得ません。そうなると起動にSSDを使っても1分はかかるので、勝負になりません。一瞬起動のメリット。これはiPhone / 携帯では当たり前ですが、大変なメリットです。

6)誰が買うのか?
◆私の様な新し物好きの馬鹿野郎はまず飛びついて良いでしょう。おもしろいです。+3G契約か、PocketWiFi + M-Zone(Mopera)公衆無線LANの準備はお忘れ無く。
◆モバイル系(軽量)NotePC+常時ネット環境を持っている人は?
私の状態でもありますが、基本的に機能面だけ見れば、その状態は超えませんので必要がないかと思います。一方で上で書いた、NotePCでは仰々しくて出せない環境でささっと使える感覚は、少し新しいものでここに面白さが発見できそうなら買ってみても良いかもしれません。私もいろいろ考えたのですが、家・職場には超強力なデスクトップPCがあり、専門のCAD, 開発ソフトなどを多用しています。そういう場所ではそれを使えば良い。一方で出勤中、外出先まで、完璧のPC環境が必要か?というとそうではないかもしれません。そうなると、意外と持ち歩きはiPadだけで事足りる場面もあるかもしれませんよ。と書いておいて、私は、NotePCとiPadを持ち歩いていますが、この体制がどうなるか今後楽しみです。
◆奥様達、女性の一人暮らし(OL,女子大生など)は?
女性達の生活は想像の域をでませんが、iPadでほとんど事足りてしまうのではないですか?ウェブ見て、Youtube見て、音楽聞いて、メール(は携帯か・・)。下手なネットブックにお金出すよりも、スマートで良いかもしれません。ちょっと大きいかもしれませんが、女性でも持ち運べるぎりぎりのサイズだと思います。

7)FLASH非搭載について思うこと。
私もiPhoneを長年使っていて、FLASHサイトが見られないのは大変不満でした。少なくなってきましたが、FLASH(swf)を1つだけページのど真ん中に張ってあるサイトが、iPhoneでは何ともならないわけです。町でレストランを探して、レストランのサイトに行くと、無駄に凝ったのかそういうサイトがあり電話番号すら調べられないケースが多々ありました。しかし、先日JobsがFLASH非搭載についてプレゼンしました(ジョブズCEOがiPhoneへのFlash非搭載について声明-AppleはWeb標準を重視。「Flashこそがクローズド」)。この演説でこの問題は終了したと思います。今後ウェブデザイナーはFLASHを1つだけ貼ったようなサイトは作らないでしょう。今のiPhoneの普及率と、このプレゼンでAppleは今後FLASHをサポートしないと表明したことで、サイトの発注者は、デザイナーに”iPhone/iPad”でも見られるようにしてねとなるかと思います。動的ウェブがJava AppletやDHTML(いわゆるjavascriptを使った動的サイト)としてはやりだした時に、FLASHはそのアニメーションとインタラクティブ性でシェアを勝ち取りました。今度は、iPhoneの端末のシェア数という力でまた変わっていくだけのことだと思います。私もテキストベースが好きなので、HTML5はとても期待しておりますので、良い流れだと思います。

8)まとめ
だらだら書きましたが、iPadは携帯とNotePCの間に1つのレイヤーを作ったデバイスなのかなと思います。むしろNotePCの大半の機能を搾取し、上に押しやって入り込んだようなイメージかもしれません。パソコンの機能(むしろ実用面)の8割位はiPadが、携帯性を備えた上で実現し、残り2割のビジネス的、テクニカル的な使い方はNotePC,デスクトップとして上に追い出された様な印象です。このエリアはPDAなりタブレットPCなり構想はたくさんありましたが、毎回失敗しました。今回、再三にわたる参戦ですが、iPhone/iPodでこれだけシェアを取ったアップルが、成功するか楽しみなところです。おそらく常時ネット接続が確保できる現代だと、過去のように失敗しないのでは?と思います。
1年後、iPad全然売れていないねぇとなっているのか、電車に乗れば、iPadでみんなが本を読んでいるのか、楽しみですね。
私のようなガジェット好きは、iPadはいろいろ楽しめると思いますよ。

9)追記
・2010/05/08 23PM追記:SoftbankがSIMロック状態でプランを発表しましたね。この時期にSIMロックかよとだいぶ残念ですね。私はSoftbankキャリアの弱さが嫌いなので、Softbankラインはなしかなと思います。Apple StoreでSIMロックフリーで購入し(本体を買い切り)、Docomoの方が良い気がします。とはいえDocomoがまだプランを発表していないので、調査は必要ですが・・・。なんかiPadは、分割で購入っていうイメージでもないんですよね。私も含めE-mobileなど別キャリアでのネット環境を持っている人は、このあたりのプランをどうするか悩ましいところですね・・・。E-Mobileをお持ちでないなら、AppleStoreで3Gモデル本体購入、Docomoで3G契約+MoperaU(M-Zone)契約が最強かと思います

・2010/05/10 5AM追記:Apple Store(ウェブ)でiPadの予約が始まりましたね。予定通り4万後半からです。またウェブショップでは、Wi-Fiモデルのみのようですね。Softbankキャリアで行く人は、Softbankショップでの予約が早く入手できるのかな?、Docomoで行く人は、Apple Store銀座などの直営店に足を運んで予約しなければようですが、かなり情報が錯綜しているようですねはっきりいってDocomoの動きが悪すぎて、やる気があるのかと思いますね。上にも書きましたが、Pocket WiFiなどを持っていない人は、3Gモデルに行くべきです。カーナビとして使う人はもちろん、ささっと出してすぐ使う感じを考えるとPocket Wifiよりも3Gの方が圧倒的に利便性は高いと思います。iPadを買う人は絶対に持ち出すような人たちだと思うので(笑)、是非3Gモデルを。

・2010/05/11 1AM 追記:なんとDocomoがiPadから撤退なのですね。完全にこの会社終わっていますな。何やっているんですかね。先日、iPadのmicroSIMに参入なんて社長が言っていましたが、現iPhoneのSB網、SIMロックまわりをその方が全く理解していない状態での戯言だったのですな。全くの論外でありますね。電電公社時代(親方日の丸時代)の電柱インフラは評価すべきですが、現代の状況を全く理解できていない会社の様ですね。iPadが成功するかわかりませんが、電子書籍のターニングポイントとも言える、この製品に(失敗・成功はおいておいて)こんな形で撤退という状況に、全くお話になりません。iPadに参入すると社長自ら言ったのですから、10日の時点で、撤退しますくらいのプレスリリースをすべきで、この辺りも全く論外の対応でした。

・2010/05/14 iPadの改善点について
会議に持ち込み、メモ用に利用した際に問題が起こった。会話中、指がiPadに触れていることがあります。iPadを落とさないようにiPadの縁を持っていることが多いのですが、その縁の近くにはBSキーがありまして、ふとしたときにそのキーを押しっぱなしにしていることが何度かありました。つまり会議のメモが相当消えてしまいました。undoがiPadには無いので、そのメモは失われました・・・。物理キーボードは触覚でわかりますが、押しっぱなし時には非判定する機能は必須だと思います。

何か質問があればコメント欄に。