本日は,携わっているJAXA M-Vロケット6号機の打ち上げ日.
しかし,今日は南九州地方の大雨により10日以降に延期.
残念ですが,あまり天気が悪いとやはり打ち上げられないので,とりあえず内之浦で待機です.
では,今回は簡単に人工衛星の原理を紹介します.
興味があるかたは,是非考えて理解してみてくださいな.
何か疑問があれば,なんなりとおたずねください.
惑星の周りをまわり続ける天体を衛星といいます.
地球は月という衛星をもっています.もうずいぶん長い間地球のまわり(38万キロ離れている)をまわっています.女性にリズムがあったり,潮の満ち引きなど月はとっても地球に影響を及ぼしています.
人間の手で作った衛星を人工衛星といいます.
では地球のまわりをまわり続けるための原理はどうなっているのでしょうか?
実は人工衛星が地球を回っている”基本”原理はとっても簡単です.
今回は,細かい難しいことはおいといて,基本の原理だけ説明します.
リンゴが地面に落ちる.ニュートンくんが発見した万有引力の法則というものです.
地面に落ちるという法則ではなくて,”すべてのものは,お互い引っ張りあっている”という法則です.
法則というより物理現象なのですが,表現に関してはあまりこだわらないようにしましょう.
全てものがひっぱりあうので,私たち人同士もそれぞれひっぱりあっています.よって,地球とリンゴもひっぱりあっているので,リンゴが地面におちる法則じゃなくて,リンゴと地球がひっぱりあっているということをニュートンくんは言いたかったのですね.
人間同士もひっぱりあっているのに,人間同士が飛んでいってぶつかることはありませんよね.
それはなぜでしょう?
ポイント1:引っ張られる力は,重いものほど強く引っ張る
つまり,人間同士も引っ張られているのですが,人間は軽いのですごくひっぱる力が弱いのです.人間の足腰のほうが強くて,AさんとBさんが並んで立っていても,引き合ってぶつかりあうことはありません.
まあ,そういうことがあったら,ロマンチックが止まらなくて素敵なこともあるかもしれませんね.
こんな小さな力ですが,地球くらい重い物体ですと,引っ張る力が無視できなくなります.飛び降り自殺できるのも,高いビルの上にいる人間を地球がモーレツにひっぱってくれるから落下することができるわけですね.その時,人間を構成している分子よりも,地面の土とかアスファルトのほうが強い(堅いので),人間の構成が分解され,死ぬことができるという仕組みです.話が暗くなりました.
万有引力にはもう1つのポイントがあります.
ポイント2:近づけば近づくほど強く引っ張る
つまり,ニュートンくんが発見した万有引力は,”全ての物体は,近ければ近いほど,重ければ重いほど強くひっぱりあう”といえます.なぜ,ひっぱりあうのか?なぜ近ければ強いのか?なぜ重ければ強いのか?それは,この宇宙を作ったときにきまっているので,しょうがないです!

さて,話を変えます.
車を運転していて,例えば左急カーブを曲がっているときに,車にのっている人はどのような力をうけるでしょうか?左急カーブのときは,体が右に流れますよね?これは,遠心力と呼ばれる力です.
では,
A:時速40キロでカーブを曲がる
B:時速100キロでカーブを曲がる
この2つの場合,どちらが強い遠心力を受けるでしょうか?
経験的にBのスピードが早いほうが強い力をうけると思います.
つまり,
ポイント3:物体が回っているときには回っている外側に力を受ける.しかもスピードが早いほうが強い.

さらにこれはなかなか体感できないのですが・・
ポイント4:物体が重ければ重いほど遠心力は強い.
まとめると,遠心力は,”物体が何かを中心に回っているときに,重ければ重いほど,早ければ早いほど,外側に力を受ける”
実はこの二つの日頃お世話になっている力,”万有引力:リンゴが落ちる”,”遠心力:カーブで外側に力を受ける”だけで人工衛星の基本の原理が説明できます.
人工衛星は,やはり人間がつくったとはいっても物体なので,万有引力の例外ではなく地球にひっぱられて落ちてきます.
そこで,地球の丸(へり)に沿って人口衛星を回してみます.

上の図にあるように,地球のへりに沿って飛ぶと,
A:万有引力によって地球の中心にひっぱられる
B:遠心力によって,外側にひっぱられる
ことになります.このAとBが同じ力でひっぱりあったとしたらどうでしょう?いつまで落っこちず,かといって地球の外にも飛んでいかず,ずっと地球の周りをまわることができます.
これが人工衛星の原理です.
ここでポイントは,人工衛星の回るスピードです.
遠心力は,上で説明した”ポイント3”に従って,スピードが早ければ遠心力が強くなっていきます.
地球の引力と同じ遠心力になるスピード,つまり人工衛星のスピードを”第1宇宙速度”といいます.
では,人工衛星のスピード:第1宇宙速度はどのくらいだと思いますか?
私たちが開発した人工衛星CUTE-Iは,秒速8キロくらい.時速に直すと時速28800キロというモーレツなスピードで飛んでいます.地球の引力と同じくらいの遠心力を得るためには,時速28800キロを出さないといけないってことですね.時速288800キロですと,地球1周が40000キロなので,約1時間半で地球を1周してしまいます.恐ろしいスピードですね.1日15周ちかく地球を回っています.
ここで疑問が生じているかもしれません.”ポイント1”,”ポイント4”の関係です.重さが重いほど,引力は強くなり,重さが重いほど遠心力が強くなるという点です.実はこれは上手い具合に釣り合っています.重さが重ければ引力を強くうけますが,重さが重ければ遠心力も強いので,人工衛星のスピードはその重さに関係ありません.スペースシャトル(もちろん地球の周りをまわっているので人工衛星です)とCUTE-Iは,重さはあんなに違ってもスピードはほぼ一緒です.
さて,最後に”ポイント2”にとってもおもしろい話があります.地球から引っ張られる引力は,近ければ近いほど強いというものでした.逆にいえば,遠ければ遠いほど引っ張られる力が弱いことになります.人工衛星は,地球の引力と,遠心力の力が釣り合って回り続けられるということでした.
つまり,地球から離れれば,遠心力が小さくても釣り合うため,つまり人工衛星のスピードもゆっくりでいいことになります.

CUTE-Iは,地上から840kmの高さを飛んでいます.その引力と釣り合うためには,時速28800kmが必要でした.1方,今年3月に打ち上げ先週から正式運用がはじまった気象衛星ひまわりは,36500kmという非常に遠いところにいます.地球からかなり遠いので,引力が弱く,その引力に釣り合う速度は,時速9500kmです.この時速は1日に地球を1回まわる速度です.
気象衛星ひまわりの映像をよく天気予報でみますよね.その映像はいつも日本の映像ですよね.ひまわりは静止衛星といって,いつも日本上空にいます.実際にひまわりはその場に静止しているわけではありません.地球はひまわりと同じく1日に1周自転しています.静止衛星は,実際に静止しているわけではなく,地球の自転と同じスピードで飛んでいます.
人工衛星のこの基本原理によると,地上でもすごいスピードを出せれば人工衛星になることができます.しかし,地上には空気があって,人間が走るときも向かい風ではスピードが落ちちゃいますよね?それと同じで,空気抵抗によってせっかくの衛星のスピードが落ちてしまい,遠心力が弱くなってすぐ地上に落ちてしまいます.その為,地球の空気が無くなる高度100キロ以上に打ち上げています.
ロケットは,
・空気がないくらいまでの高さまで持ち上げる
・人工衛星に第1宇宙速度まで加速して切り離す
ための乗り物になります.
人工衛星は,宇宙をエンジンで飛んでいるようなイメージがありますが,
ロケットから遠心力と引力が釣り合うスピードをもらって切り離されているため,
エンジンとか無くてもずっと飛んでいることができます.ちなみにCUTE-Iは200年近く地球を回り続けます(いろいろな影響で永遠にはまわっていない.地球におっこちる)
逆に今,壊れた衛星が地球のまわりをうようよ漂っているため,宇宙デブリ(ゴミ)として深刻な問題になっています.我々の開発している次の衛星Cute-1.7 + APDは,自分で実験が終了後地球におっこちる軌道離脱の仕組みを持っています.
いかがでしょうか?非常に長文ですのでいったい何人が最後まで読んでくれたか甚だ疑問ですが,こんな原理で人工衛星はとんでいます.
これから,ロケット打ち上げというニュースをみたら,”お?このロケットはなんの人工衛星が乗っているのかな?”とか思ってくれるとうれしいものです.