映画「ディア・ドクター」を見てきました。映画監督「西川美和」さんの映画は、前作の「ゆれる」を見て大変感動し、この映画も是非みたいと思っておりました。
見る映画と言えば邦画が多く、洋画はヨーロッパ映画か、ミニシアターでのマニアックな作品程度です。少なくともハリウッドのアクションは特別な理由が無い限り退屈なので見ることはありません。VFXが毎年発達していて凄い技術だと思いますが、逆に凄すぎて非リアル感たっぷりで萎えてしまいます。昨日見てきた「劔岳」(もちろんCGは使っているとは思いますが)の自然の猛威を見ると、逆にVFXの精度が上がれば上がるほど、チープに見えるなぁと思いました。
さて、邦画を好きな理由は英語が苦手なのもありますが、日本語らしい”行間を読む”的な、台詞と台詞の間にある奥ゆかしい感覚があるからだと思っています。つまり、台詞で全て言ってしまうチープな映画に比べ、その台詞に込められたもっと深い意味であったり、出演者の立場に自分が仮になった場合にどう思うだろうか?など、映画を通してその世界に入っていけるような感覚がとても好きで、つい邦画ばかり見てしまっています。もちろん洋画にも良い映画はたくさんあり、私も好きな映画はありますが、きっと字幕を通しているからなのでしょうね、淡々と見てしまうことが多い気がします。
西川監督の映画は、前回のゆれるでも相当に考えさせられましたし、本作「ディア・ドクター」でも随分考えさせられました。笑福亭鶴瓶さんが過疎村の唯一のドクターとして登場するわけですが、いわゆる日本の現在の僻地医療の実態をベースとしたお話というものであれば、普通の映画だったと思います。この映画はその実態の紹介なんぞほんの序の口で、その後に人間ドラマ、医療とは?医者とは?人を救うとは?先生とは?など色々考えさせられる映画でした。
学校の教師も、医者も、弁護士も、代議士も”先生”と呼ばれます。goo辞書で先生を調べて見ると
(1)学問・技芸などを教える人。また、自分が教えを受けている人。師。師匠。また、特に、学校の教員。
(2)学芸に長じた人。
(3)師匠・教師・医師・弁護士・国会議員などを敬って呼ぶ語。代名詞的にも用いる。また、人名のあとに付けて敬称としても用いる。
(4)親しみやからかいの気持ちを込めて、他人をさす語。「大将」「やっこさん」に似た意で用いる。
(5)自分より先に生まれた人。年長者。
goo辞書”先生”より引用
(5)の様な”先に生きる”=先生という文字通りの言葉から、人に教える人という様な意味までたくさんありますね。
これだけInternetなどで情報が共有され、医療の分野に限らずあらゆる分野で国際学会が開かれ最先端の技術が研究・議論されている現代、最新の(医療)技術はある意味統一化されています。とはいえ医療技術の統一化は最近の事であり、少し前までは、”この葉っぱを煎じて飲ませると頭痛が治る”とか、そういう先人達の知恵みたいなものが各地方・村などにあり、それを一番よく知っている長寿のおじいさんみたいな人が尊敬され、まさに”先生”だったのかなって思います。資格社会の今、医師免許を持っているのが先生なのか、親が医者だから医学部に行った人が先生なのか、ブラックジャックみたいな技術だけ一流の人が医者なのか、この映画の笑福亭鶴瓶さんが演じているような人が先生なのか、いろいろ考えさせられました(ちょっとネタバレですが・・)
西川監督は、”ゆれる”も含め、オススメの映画監督だと思います。