7月上旬に予定されているロケット打ち上げの準備の為,鹿児島県肝属郡内之浦町というところに来ている.
説明することが多いため,Q&A,箇条書き風に書きます.
1.ロケット?
JAXA(宇宙航空研究開発機構)という日本の宇宙機関が開発した,M-Vロケット(ミュー・ファイブと読みます)の6号機が来月7月上旬に打ち上がります.
JAXAとは,宇宙開発事業団,宇宙科学研究所,航空宇宙技術研究所の日本の宇宙3機関が統合されてできた機関です.
JAXAは,大きなロケットとして,H2aロケット(元宇宙開発事業団)とM-Vロケット(元宇宙科学研究所)を開発しており,今回は,M-Vロケットの6号機の打ち上げです.
H2aロケットは,種子島宇宙センターから,M-Vロケットは,内之浦(正式名称:内之浦宇宙空間観測所(USC))から打ち上がります.
2.M-Vロケット6号機は何をするロケット?
ロケットは,ロケットの先っぽについた人工衛星を宇宙に持っていって切り離すための乗り物です.人工衛星を切り離したあとは,そのまま地上に落下します(回収などもされます)
今回のM-Vロケット6号機には,Astro-E2(あすとり・いーつー)という人工衛星が乗っかっていまして,”何をするロケット?”と聞かれたら,Astro-E2を宇宙の適切な場所に適切なスピードで切り離すためのロケットという回答になります.
3.では,Astro-E2は何をする人工衛星?
興味のある方は,JAXAのAstro-E2概要ページをごらんになってください.目的だけ転載しますと
・広域帯X線分光と高エネルギー分解能X線分光により,銀河団の合体による宇宙の構造形成やブラッックホールの時空構造や高エネルギー現象を解明する.(ブラッックホールはそのまま転載)
・ISAS/JAXAとNASAを中心とする国際協力により開発をすすめ,打ち上げ後は軌道上天文台として国際公募を行う.
・・・・・・・・・・・・・・・・・私でもよくわかりません(汗
日本の宇宙開発は,とっても綺麗な宇宙を扱っているにもかかわらず,その表現がとっても下手です.政治的な側面が多いのはわかりますが,”概要”のページにこの目的ではわかりにくいですね.私たちも例外ではないので,わかりやすい表現に努めます.
要約します.
・宇宙がなぜできたかを調べます.
・地上だと空気とかいろいろな障害物があって不利なので,宇宙で観測できる天文台となります.
実は,これは人工衛星(Astro-E2)のミッションなんですよね.みなさんが聞きたいのは(私も聞きたい),上のような衛星ミッションではなく,”なぜ宇宙ができたかを調べるの?”じゃないでしょうか?
私はAstro-E2関係者じゃないので,あくまで憶測ですが,たぶん
”我々がこうやって生活している地球を作った宇宙がどうなっているんだろう?”っていう純粋な探求心から生まれていると思います.料理人さんが,おいしいモノを作りたいという探求心にちかいものがあるのかなと思っています.
何かを探求,追求したい動機には,その先の目的があるような気がします.
料理人さんは,”なぜおいしいモノを作りたいのか?”と聞けば,お客様のおいしいっていう言葉を聞きたいからとか,もしかしたら,おいしいモノを作れば儲かるからという人もいるかもしれません.
今回のAstro-E2関係者(X線天文学)さんたちは,大勢いらっしゃいますが,宇宙の創世を探求したい理由などを今度聞いておきます.
ちなみに私の専門は,宇宙工学といいまして,上記のX線天文学などから比べると,宇宙創生探求ではなく,どうやったら,ロケットが上手くとぶのか,人工衛星が上手く動くのか,具体的に作る方の研究です.更に分類すれば,私の研究は,ロケットではなく人工衛星の開発系の研究になります.
私が良い人工衛星を作りたいなどの目的は,
圧倒的なスケールを持った綺麗な宇宙を,綺麗にわかりやすく伝えることで,世界が仲良くなるんじゃねーの?っていう理想があるからです.
研究者であるかぎり,よいものを作りたいとか,何かを探求したいという気持ちは当然あります.その気持ちを個人の自己満足でおわらせないで,何らかのアウトプットを専門外の方に伝える努力をしないといけませんね.日本の宇宙開発は私たちも含めそこがド下手です.
宇宙開発の目的を,ロケットを打ち上げることではなく,人工衛星を宇宙にのっけることではなく,人工衛星が行うミッションではなく,そのミッションによってどう人々に影響をあたえられるかを示さないといけないですね.
新聞などで,XXXXロケット打ち上げ成功という記事をみると,非常に萎えます(笑 成功は大切なことですが,ちゃんと伝えるように努力したいですね.
関連ページ
ASTRO-E2のページ (こちらには詳しく載っています)
4.で,何しにいっているの?
7月上旬にM-Vロケット6号機とAstro-E2は打ち上がります.今回,私が内之浦に来ているのは,ある実験を今回の打ち上げ中に行うために来ています.
現在,ウチの研究室では,2機目の人工衛星Cute-1.7 + APDというものを開発中です.
6/30で打ち上げから2年になり今でも元気に宇宙を飛んでいる人工衛星CUTE-Iの次世代衛星となります.Cute-2よりもちょっと前でラッキーセブンってことで,1.7なんていうナウいネーミングセンスです.上で批判をしながら,Cute-1.7 + APDのホームページを客観的にみると・・・・・・ちょっと分かり難いかもしれません(苦笑
このCute-1.7 + APDは,M-Vロケット8号機(いろいろ理由があって今回の6号機の次は8号機が打ち上がります)で打ち上げられるように努力しています(決定ではありません).ここでポイントがあって,M-Vロケット8号機は,Cute-1.7 + APD衛星の為に打ち上げるロケットではありません!(もちろんCute-1.7 + APDの搭載が決定しているわけではありません)Astro-Fという衛星がやはりメインのミッションとして決まっていて,そこにコバンザメのように,一緒に宇宙まで上がっていって,ちっちゃーく切り離してもらえるように努力しています.衛星は一般的に数トンという大きさですが,我々の衛星は1,2キロという超小型衛星なので,メインの衛星の打ち上げに便乗して,ロケットの先っぽの隙間に載せさせてもらう作戦です!
ロケットが宇宙まで飛んでいって,適切な場所になったら人工衛星を切り離すわけですが,その切り離す装置を,単純ですが”分離機構システム”と言います.分離機構システムは,打ち上がっている間すごい加速度とか振動にも耐えて,衛星を把持しつづけて,よいタイミングになったら確実に切り離すというとっても大変な任務を担っています.人工衛星がどんなに素敵なものでも,分離機構の切り離しに失敗すると,ロケットと一緒に地球に落ちてきてしまうため,分離機構はナメられない大切なシステムです.
今回のM-Vロケット6号機では,8号機でCute-1.7 + APDを分離させるための分離機構がちゃんと動くかを確認する実験をします.(8号機搭載は決定ではありません)打ち上げ振動に耐えて,いいタイミングでダミーの重り(人工衛星に見立てています)を切り離すという,わずか5秒間の実験です.この5秒の実験に開発としては3年近く掛かっています.しかし,人工衛星が人工衛星になれるための大切な分離機構の実験ですから,その5秒はとってもとっても大切なものです.
この分離機構を実証するシステム(TSD)のために,今回M-Vロケット6号機の打ち上げにたずさわっています.
打ち上げまでにTSDをロケットにとりつけて,様々な試験(実際にロケットから分離していいよという信号の受信試験など)を行い,打ち上げ当日を迎えます.
次の書き込みから,この内容で説明したものを視覚的に伝えて行ければと思っています.
M-Vロケット1号機のモックアップと,その先にある打ち上げ台(ランチャー)
(後輩撮影)
更に・・・
内之浦到着の日にTSDの最終組立作業がありました.
ラボのページに掲載しておきました.そこに写真などを掲載していますので,
興味があれば,ごらんくだされ.
TSD最終組立
* Cute-1.7 + APDのM-V搭載は決定しているわけではありません.あくまで将来的に搭載を希望しています.
す・すっごい。
飲んでる時のなおきさんの話も興味深いけど、こんなロケット見ちゃうと、改めてやっぱりスゲー人なんだぁって思っちゃうよ。
ほけーーー。
heizoさん>
こんにちは~.暑さどうですか?
こちらは,この2,3日天気がよくて気持ちがいいです!!
ロケットってやっぱり近くでみるととっても大きくて”綺麗”です.今回,打ち上げにむけてがんばります!
naokiの存在理由を要約したような日記でした。
打ち上げの成功お祈り致します。
*miho*さん>
はろぉ~.元気かな?
シカゴ暑そうだね~.体調は大丈夫かな?
打ち上げ楽しみです!とにかく今は雨など外的要因が無いように願っています.
綺麗にあがっていってもらいたいです!
>研究者であるかぎり,よいものを作りたいとか,何かを探求したいという気持ちは当然あります.
>その気持ちを個人の自己満足でおわらせないで,何らかのアウトプットを専門外の方に伝える努力をしないといけませんね.
強く同意したこ2文,輝いてました.
打ち上げが成功するよう,祈っています.
matsunさん>
ありがとうございます.
今のところとっても順調です.
宇宙好きの立場と研究者の立場を考えながら
スマートに作業をしていきたいとおもいますー