“Rapido” 自作スピーカープロジェクト: その2: ユニット特性SPL、フィルター設計など

バッタバタで圧倒的開発が遅れている32周年記念自作スピーカープロジェクト”Rapido”のその2です。誕生日も毎年のことながら余裕で通過しました(苦笑)。本プロジェクトの過去の内容は、“Rapido”カテゴリーをご覧ください。

Rapidoは、2ウェイのブックシェルフスピーカーになる予定です。理由は、私がフロア型、トールボーイ型よりもブックシェルフ型が好みだからです。
あれだけ好きだったクラシックは大学学部時代位からあまり聴かなくなりました。理由は私の好きなマエストロは録音が古く、その頃の録音をそれなりにちゃんとしたオーディオシステムで聴くと、音が悪すぎて気持ち悪くなってしまうからです。そういう意味では現代のクラシックの演奏を聴けば良いのですが、最近はヴォーカルを含むJazzばかりで、気合いを入れて聴くというよりはBGMとして聴くといったスタイルです。
そういうスタイルですと、どうもトールボーイなどで聴くのは重すぎて好きになりません。ブックシェルフ型のスピーカーをピリっと慣らす方が心地よく感じています。

さて、”Rapido”では、

高音部: Tweeter : Fountek NeoCD 3.0 リボン型
中・低音部:Mid Woofer : Accuton C173-6-096

のユニットを選択しました。この2つのユニットは価格差がありすぎて、価格の面からすればバランスが悪いのですが、NecCD 3.0はMonitor Audio PL-100に近いユニットであること、またデータシートの性能(を信じると)を見る限りとても良い特性を示しているため採用に至りました。
Accutonは、高性能ユニットメーカーとして相当有名です。超高級スピーカーなどでScanSpeak, SEAS, AudioTechnologyなどと並んでよく採用されるユニットメーカーです。NeoCD 3.0が高能率のユニットですので、能率が高いミッドウーファーを選択しました。それがC173-6-096です。海外から納品されて空中で鳴らしてみましたが、ピリっと軽くとても良いユニットである印象です。

さて、スピーカーユニットの性能は、T/Sパラメーター(Thiele/Small Parameters)という指標で性能を評価されることが多いです。まさにThieleさんとSmallさんが考えたものですが、何十年経った今も頼りにしている指標です。そのT/Sパラメーターやデーターシートから読み取れる性能から、パッシブなディバイディングネットワーク、すなわちフィルターの設計を行います。人間が一般的に聞き取れる周波数帯域は20Hz ~20kHz位です。この帯域を、2つのユニットで鳴らすわけですが、アンプからの出力信号を低音部・高音部に分けてユニットに入力しなければなりません。


図1: 2つのユニットの単体の音圧の周波数特性

図1で示す様に、今回は2750Hz程度のカットオフ周波数で高音・低音に分けることにします。2つのユニットの仕様をみてもこの位の周波数を推奨しています。


図2: 理想的なフィルター

図1の状態から図2の様にばっつり高音・低音にカットできれば良いのですが、現実はかなり困難です。以前作った30周年記念スピーカーでは、この部分に多段タップのFIRディジタルフィルタで急激なフィルタを施しましたが、何せ音が良くない!今回は、デジタルフィルタを使わずに典型的なアナログのパッシブフィルタを用います。そこで、


図3: 3次のフィルター(-18dB/oct)

図3は、高音部にハイパスフィルター、低音部にローパスフィルターをそれぞれ3次のパッシブフィルターを施したものです。この3次のフィルターを実現すべく、コイルやコンデンサを使ってフィルタ回路を設計します。


図4: コイル・コンデンサは、デンマークのJantzen Audio製を採用しました。日本ではあまり売っていないメーカーで、売っていたとしても下位グレードの物です。今回採用した物は、Superior Z-capシリーズというもので、Jantzen Audioでは上から2番目のグレードです。トップのZ-Silverシリーズは、さすがに高すぎてとても買えません(1本5000円!!!)。Jantzenは、海外通販+円高効果でうまくやればかなり安く購入できます。Jantzen Audioは本当に品質が良く、このコンデンサも外装がつるつるで綺麗です(音には関係ありませんが・・・)


図5: Rapidoフィルタ回路

図5のような基板を開発します。普段FPGAの回路などを作っているので、ドが付くほど簡単な回路です。ささっと設計しました。


図6: 同じくRapidoのフィルタ回路です。

* コメント欄でのご指摘の通りコイルに角度を付けて配置する必要がありますね。

さて、今回のエントリーでは、Rapidoプロジェクトのユニット特性および、フィルター設計について紹介しました。
開発がかなり遅れていますが、これからスピーカーの箱(エンクロージャー)の設計です。はやく仕上げないと・・・・。

“Rapido” 自作スピーカープロジェクト: その2: ユニット特性SPL、フィルター設計など」への8件のフィードバック

  1. えーと、私はデジタルチャンデバな人間なので、ネットワークを組んだことはないのですが、
    複数のコイルを使うときには磁気結合を避けるために直角に配置するか、なるべく離して
    配置した方が良いのではないでしょうか?
    余計なお世話だったらごめんなさい。

  2. seasfanさん

    そうですね。コイル同士干渉があります。写真でわかるようにコイルのピラピラが長いので実際に配置する際には角度を付けて配置することになりそうですね。私もデジチャンな人間でしたが、どうもいまいちなんですよね。パッシブフィルタもなかなかいいですよ。

  3. 最近このブログを見つけました。私のやりたいことや知りたいことがたくさん載っていて趣味も近いようなので楽しく読ませて頂いています。
    NikolaTeslaProjectやRapidoをみて私もスピーカーの自作を行ってみたくなりました。
    特に他の自作されている方に比べて完成品がとても美しいと思いました。
    もしお時間がありましたらmiyashitaさんのオーディオの構成などを記事にして頂けると助かります。

    ちなみにですが、NikolaTeslaProjectはどうなったのでしょうか?タグに登録されてる記事を一通り読んだのですが完成が見あたりませんでした。もし見落としていたらごめんなさい。あ、それか聞いちゃいけなかったらもっとごめんなさい(笑)

  4. kiyomuraさん

    コメントありがとうございます。いえいえ、かなり中途半端な状態が続いておりましてお恥ずかしい限りです。本業がバッタバタで、しかも趣味が多い物ですから、開発が遅くてしょうがありません(反省)

    NikolaTeslaProjectは、文章でどこかに説明しましたが、FIRの3ウェイ1001タップくらいでフィルターをかけて、AVアンプで音圧調整したのですが、結果として、さっぱり音がよくありませんでした。なんでしょう・・・。全く認めたくないのですが、一番期待していたAudioTechnologyのミッドが恐ろしく音が悪く、何だかなぁっていう感じでした。結局、SEASのウーファーとScanSpeakのTWの2ウェイで使っていたのですが、正直隣のB&W 805に全くかなわず、解体してしまいました。よって、あれだけ金と時間をかけて残念極まりない音質でしたので、こっそり終焉させました(笑

    私のオーディオ構成は特別たいしたものではありません。金がないので10万くらいのプリメインですし、本当に大したシステムではありませんが、また機会があれば紹介いたします。

  5. 本当に素晴らしいプロジェクトですね!
    僕もaccutonのスピーカーユニットで 自分のスピーカを作っていますが
    まだ たったスピーカーユニットやコンデンサを買いました.

    自分のスピーカを作るのは 簡単なことじゃなさそうですね.
    色々な面倒なことがあります.

    私は台湾人なので 日本語がなかなかできません 申し訳ありません.

  6. kevinlin101さん

    日本語上手ですね!十分に意味は伝わっていますよ。

    これからスピーカーを作るのですね。いろいろ大変かと思いますが、がんばってくださいね!

    私は忙しくて、このrapidoスピーカーは完成していませんが、kevinlinさんに負けないようにこちらも開発を進めます。

  7. こんにちは。スピーカー作りを趣味としているものです。

    面白そうなスピーカーを作られてますね。
    おせっかいですが、少しアドバイスです。
    図3のグラフを見るに、ウーハーのバッフルステップ補正をしていない様ですが、
    したほうがずっと良いですよ。

    ざっくり言うと、1次のコイルの値を+1mH程度大きくして、
    それにあわせてツイーターのレベルを下げればOKです。
    あわせて、2次のCや3次のLの値もフラットに成るように要調整です。

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