ライカの魅力

”ライカ”という名前を聞いてどういうイメージが沸くだろうか?私の世代になると”名前は聞いたことがあるがよく分からない”という程度しかご存じない方が多いのではないだろうか.今回のエントリーでは,ライカの極簡単な説明と魅力を紹介したい.

– ライカとは?

ドイツのライカカメラ社(Leica Camera AG)のカメラである.創立者のエルンスト・ライツ(Ernst Leitz)が,光学機メーカー”エルンスト・ライツ”社(Ernst Leitz Optische Werke) を設立しカメラを作った.ライカとはLeitz + Camera = Leicaという意味であり,”ライカ”ブランドが有名になり会社名もライツ社からライカカメラ社に変更された.

参照:ライカ – Wikipedia

– どういうカメラ?

ライカには,大きく二つの種類のカメラがある.
M型ライカ(M-System Leica):レンズ交換式距離計連動式カメラ(Rangefinder = レンジファインダー)
R型ライカ(R-System Leica):レンズ交換式一眼レフカメラ(Single Lens Reflex = SLR)

参考:
レンジファインダーカメラ – Wikipedia
一眼レフカメラ – Wikipedia

レンズを交換できるカメラを一眼レフと思っておられる方は多い.その理由は,日本のカメラメーカーをはじめとして,現在生産されているレンズ交換式カメラは,圧倒的に一眼レフが多いからである.なぜレンジファインダーカメラが少数派なのか?それは,1954年にライツ社が発表した初代M型ライカ”M3″に起因する.現在と違って1950年代は,レンジファインダー式カメラが主流であり,世界中のカメラメーカーが良いレンジファインダーカメラ開発に奮起していた.そんなときライツ社の技術者オスカー・バルナック(Oskar Barnack)が開発したライカM3は,他のメーカーがレンジファインダー開発を諦めるに十分なほど完璧なカメラであったらしい.その衝撃で他のメーカーは,レンジファインダーを諦め,一眼レフ式カメラに移行していったと言われている(諸説あるが・・)

– レンジファインダーカメラと一眼レフカメラはどちらが優れるのか?

M3の登場により世界のカメラメーカーは一眼レフに移行したことは先に述べた.それから50年.世界のカメラ市場は日本メーカーが圧倒的にリードしており,そのカメラのほとんどは一眼レフカメラである.ライカカメラ社は正直ほとんど売れず,最近倒産寸前まで行きそうになった.この現状により,一眼レフが優れていてレンジファインダーが劣っているという風に世間では見られている.甲乙を付けることに意味があるとは思えないが,事実,ライカカメラ社もR型という一眼レフを開発している以上,一眼レフが主流であることは間違いないであろう.

しかし,ライカカメラは今でもすばらしいM型ライカを販売しており,私が魅力を感じるのもやはりM型ライカである.この魅力を紹介するには,簡単に一眼レフとレンジファインダーの仕組みと写真の撮り方を解説しなければならない.

一眼レフ:
一眼レフのファインダーを覗くと,レンズを通した世界が見える.レンズを通しているので,望遠レンズなら遙か遠くの世界が,広角レンズなら人間の目で見えるよりも遙かに広い世界がファインダーで確認することができる.シャッターを押すとそのファインダーで見えた世界がそのまま,フィルムやディジタルの場合はCCD/CMOSなどのセンサーに記録され写真に残る.方式でいえば,携帯カメラ,コンパクトディジカメ,写るんですなどのインスタントカメラもファインダーで見えたものが写真に写るという点で同じ方式といえる.

レンジファインダー(つまりライカM型方式)
レンジファインダーを覗くと,肉眼で見える普段の世界がそのまま見える.つまりファインダーは倍率を変更するレンズを通しておらず,ただの覗き穴である.しかし,そのファインダーにはレンズに応じて大きさが変わる小さな”枠”が表示されており,撮りたい空間をその枠に入れてシャッターを押す.つまり望遠レンズだと枠が小さく,広角レンズだと枠が大きく見えるだけで,覗いた空間が縮小,拡大されて見えるわけではない.私はこの方式の方が極めて自然だと思っている.人間が普段生活しているときに遠くにあるものを肉眼で拡大して見えるわけではなく,肉眼で見える空間のうち,見たい対象のものだけに注意を向けている.レンジファインダーはまさにこの方式で,空間の撮りたいものに枠にあわせて切り取る方式なのだ.
(注:厳密にいうと焦点のあわせ方など多くの違いはあるが,撮り方という点ではこの点に差異がある)

一眼レフ方式は,撮りたい物に拡大して見えた空間がそのまま写真になる点で,”写真を撮る道具”として使いやすい方式であり,世界的にも主流となった.一方レンジファインダーは,撮りたい物を肉眼で見える世界から切り取るという,普段の生活に近い方式である.つまり,レンジファインダーには,一眼レフにあるような極端な望遠や広角レンズは存在しない.人間の目で見える世界しか基本的に対象としていないのだ.写真を効率良く残すという点では確かに一眼レフの方が機能的に優れていると思うが,レンジファインダーには一眼レフにない撮影感覚がある.

・肉眼そのままの空間から気になったものを切り取る感覚
・一眼レフにあるミラーの動く動作がないので,撮影に下品な音がしない.極めて静か.
・一眼レフに比べてカメラのサイズがコンパクトに抑えることができ,ふと散歩に持ち歩こうと思える.

実はこのレンジファインダーの魅力だけでライカM型を使っているのではない.ライカM型にしかない魅力があるからだ.

– ライカM型の魅力とは?

ライカの魅力は本音を言うとこんなエントリーで伝えられるとは思っていない.それは私自身ライカの魅力を知る前は,いろいろなカメラ本・雑誌などで紹介されているライカの記事にやや疑問を感じていたからである.その時私は,キヤノン,ニコン,ミノルタをはじめとする最先端のカメラを利用し,しかもディジタルに完全移行が完了しており,まさに写真を効率よく量産するという姿勢でカメラ・写真を楽しんでいた.工学部の性か,写真を撮ること,見ることももちろん好きなのだがカメラという機械をいじるのが好きで,カメラ雑誌を読んでは各社のカメラの差異,特徴などを追いかけていた.基本的に新製品が紹介されるカメラ雑誌に定期的に,新製品でもないライカM型が素晴らしい写真とともに掲載される.ここに何とも違和感と疑問を感じずにはいられなかった.なぜそんな古いカメラを未だに取り上げるのか?古い方式のレンジファインダー(当時使ったことは無かった)はそんなに魅力なのか?常に頭の片隅にライカへの疑問があった.そんな疑問の中でも実際に使ってみようと思わなかったのには訳があり,カメラを始めた頃,中古カメラ屋でライカのM型を手にとった覚えがあった.金属カメラで持ったときの印象は冷たく,そしてファインダーを覗いても肉眼と同じ世界が広がっているだけ・・・.ピントのあわせ方もわからず,シャッターを押しても一眼レフのようなバシャリといういい音もしない.こんな経験がライカへ疑問を持っていた理由だと思う.

ある時オークションで完全に未使用の中古ライカ(M6)を見かけた.定年退職を迎えたフェリーの船長さんで,ライカM6を新品で3台購入し,2台を使用し1台はコレクションとしてとっておいたものをオークションに売り出していた.しかもライカとしてはあり得ない低価格であったので即決購入をし,ついに半信半疑のままライカを手に入れてしまった.ずいぶん一眼レフに慣れていた時分でライカのシャッターを切った瞬間・・・”ん?”
正直言うとビックリした.一眼レフのバシャリという音に既に慣れ,町中で撮り歩いた経験などからうるさいとまで感じていたシャッター音がほとんどなく,そのレリーズを押し込んだ時の手に返ってくる柔らかな感覚がものすごく心地よかったのだ.そして次のシャッターを撮るためにクランクを巻き上げた時,またビックリした.カメラ機械として精巧に作られているからか,本当にしなやかに適度な重さをもったフィルムの巻き上げ感だった.レンズのピントヘリコイド,絞りヘリコイドを回してみると,日本のメーカーのレンズにはない何とも表現し難い柔らかく滑らかな感じであった.カメラ自体が今まで撮りまくっていた一眼レフとは全く違い,精巧で丁寧で気品すら感じるものであったのだ.そしてカメラの大きさ,手にすっぽりと収まりそのデザインもお洒落で,一気にライカの魅力にとりつかれた.私が感じた魅力は写真の写りには一切作用しないカメラ自体の魅力であった.

この感覚が嬉しくて,研究室のカメラを持つ後輩などにシャッターを切ってもらった.すると”違いがわかりません・・・・”.たぶん私が過去に中古屋でライカを手に取った時と同じ感覚だったと思う.はっきり言ってカメラ雑誌に書いてあった魅力などを読んでライカ好きになったのではなく,一眼レフなど多く使用し,その後実際にライカを使うことでこのライカの魅力を感じている.だからこんな拙い文章のエントリーでライカの魅力を伝えられるとは思っていないのだ.

とはいえライカの魅力を是非伝え,一人でも経営が奮わないライカカメラに貢伝していただきたい.そこで極めて安直であるがライカの格好いい(かわいい?)姿を写真で紹介する戦略とする.私は一眼レフとの差異がきっかけでライカの魅力に至ったが,初めてのカメラがライカでもその魅力は十分に感じていけると思う.いつか一眼レフを触ったときにいかにライカが良くできたカメラか感じることができるであろう.ライカは小さいカメラなので,女性などにもお勧めのカメラである.むしろ日本の黒くて大きなダサいカメラなど使って欲しくない.ある撮影の仕事で一緒になった女性モデルさんがライカをたすきがけにして持っていた.最近カメラを趣味で始めたらしく,形がかわいいのと”あるブランド”が魅力で買ったという.そのブランドとはエルメスである.

ライカカメラ社復活にエルメス社が筆頭株主となり多くのお金を援助した.その関係から3年前とんでもないライカが発表された.Leica MP Hermes Edition (ライカMP エルメスエディッション).ライカのMPという最新型のM型のボディとストラップに最高級エルメスの革を使ったという限定モデル.値段は130万円.ブランド戦略などと批判を浴びたがやはり日本から多くの購入があったらしい.限定とはいえさすがに値段が高いのでまだ購入することができる.さすがに私は手が出ないが,実際エルメスの革が極めて美しくなんとも素晴らしいライカである.

leicamphermes.jpg
Leica MP Hermes Edition

ライカは高級なカメラだと思う.他のメーカーに比べるとすべての物が高いが,その分極めて精巧に大切にしっかりと作られておりちょっと落としたくらいでは壊れない.しかも相当な壊れ方をしない限り修理が可能である.50年前のライカM3は現在でも修理可能である.つまり一生のカメラなのである.人生の大切な思い出を残すカメラという道具に少々お金をかけることは決して無駄遣いだとは思わない.今逆に何十年も使える道具が他にあるだろうか?携帯電話でも”写真”が撮れる今,とても素敵にお洒落に気持ちよく”写真”が撮れ,また普段の生活に近い空間を切り取るというレンジファインダー式のライカをこれからも愛してやまないと思っている.

先日,ネットで知り合ったライカ友達に子供が生まれた.病院で子供の写真を撮った後,カメラ屋に走ってライカMPを買ったという.娘さんの誕生日と同じ日に買ったライカを物心が付いたらプレゼントするそうだ.ライカなら誕生年のワインを買っておくのと同じくらい味わい深く,そして壊れることのない素敵なプレゼントになると思った.

注意:最近アユがCMしているように現在ライカカメラ社はパナソニックと組んでレンズなどを提供している.しかしあんなものは”ライカ”ではない.コンパクトディジタルカメラを買うならルミックスではなく,フジのファインピックスをおすすめする.

– 比較的中古市場で安く出回っているライカM6の紹介

20051029_leicam6_1_2048

Leica M6
Leica M6 Silver + Leica Summicron 50mm f/2 Silver

Leica M6
Leica M6 Silver
背面

Leica M6
Leica M6 Silver + Carl Zeiss Biogon 35mm f/2 T* with food

Leica M6
Leica M6 Silver + Leica Summicron 50mm f/2 Silver

Leica M6
Leica M6 Silver
背面のフィルム感度設定.横に革が見えると思うが,エルメスエディッションはこの革とカメラストラップがエルメスの最高級革なのである.

Leica M6
Leica M6 Silver
全て撮り終わった後のフィルムの巻き上げクランク

Leica M6
Leica M6 Silver
シャッターレリーズとフィルム残量表示窓

Leica M6
Leica M6 Silver
フィルム残量表示窓:全て彫り込みである.ここまで精巧な物は現代には少ないと思う.

Leica M6
Leica Summicron 50mm f/2 Silver
絞りヘリコイド・ピントヘリコイドは極めて精巧に動く.

Leica M6
Leica M6 Silver
R印は,リバースのRで全てを取り終えたあとこのリバースレバーを倒してフィルム巻き上げを行う.

Leica M6
Leica M6 Silver
ドイツ製

Leica M6
Leica M6 Silver + Carl Zeiss Biogon 35mm f/2 T*
今までの写真で気づいた人もいるかもしれない.ライカのボディにカールツァイスのレンズが付いている.ライカとコンタックス(カールツァイス)といえば,完全なライバル会社でありこの組み合わせは昔ではありえないことである.しかし,時は経ちカールツァイスがライカのボディに搭載できるレンズ(ZMシリーズ)を昨年発表し話題を呼んだ.ライカの精巧なボディと空気まで写し込むと言われるカールツァイスの夢のコラボレーションも現在なら可能である.

Leica M6
Leica M6 Silver
フィルム巻き上げクランクとシャッタースピード調整とシリアルナンバー.シリアルナンバーを調べることで,開発の年を調べることができる.つまり生まれた年のライカを探すことも可能である.実際にそれをねらって中古市場を探している人は多い.

Leica M6
Leica M6 Silver + Leica Summicron 50mm f/2 Silver
私はライカのレンズなどで使われているフォント(書体)がカクカクしていて好きである.

Leica M6
Leica M6 Silver
本当にフィルム巻き上げがし易いように工夫されているクランク.使っていて気持ちが良い.

20060107_leica1.jpg
ストラップを付けたLeica M6 Silver + Carl Zeiss Biogon 35mm f/2 T* ZM

P.S. ライカM型はM3が最初でM3 > M2 > M1 > M4 > M5 > M6 > M7 + MPという発展をしている.現行機種はM7とMPである.

20060321_ohokayama_fest1.jpg

ライカの魅力」への5件のフィードバック

  1. 若いときは金が無いので国産の一眼レフで写真を撮ってたけど段々と堪える。
    そこで奮発して念願のM3を入手、M6,M4-2,MPと何と12台ライカはいくら集めても飽きない。 40年前のM3はオーバーホールしてシャッター幕からギアまで新品になる。 国産でこんなカメラ有るか? ニコンSPもどうせM3の亜流。
    不滅のカメラである。

  2. 祖父の遺品整理でライカM6を見つけて、検索した結果、
    このページに来ました。
    早速、使ってみた感想としてはライカのすごさ、偉大さに魅了された祖父の気持ちが分かったような。
    そんな気持ちになりました。
    これからも愛用していこうと思います。

  3. mm2さん>

    コメントありがとうございます!
    検索で来ていただいてコメントいただけるのは嬉しいことです。

    お爺様のライカとはとても素敵ですね!!ライカはもともと戦車に踏まれてもフィルムは守ると言われたほど頑丈なカメラであり、どんなに古くてもちゃんと修理ができますので、是非大切にしていただきたいです。

    レンジファインダーは、見たままがファインダーとして使えますので、より人間がモノを見る感覚に近いと思っています。私も大切にしていきたいと思っています。

  4. 何だか見にくい書込みが多いページだな。銀塩同志でやり合うのはどうだろうか?デジタル化が急速に進む昨今、そんな事よりも一般大衆がもっとフィルムのアナログプリントの美しさを享受でき得る環境の整備にエネルギーを費やして貰いたいものだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください