近赤外撮影(皇居東御所・若洲海浜公園)

先日の投稿`赤外線カメラのススメ(Canon EOS Mの赤外線カットフィルターの除去改造)`で紹介した近赤外波長改造カメラで撮影した写真の紹介。
撮影後のRAW現像処理がまだまだ難しいですね。そもそも可視波長は写っていないわけですから、それをディスプレイに表示するためにR,G,Bのチャネルにどう振り分けるか?に関して正解はありません。好みの現像手法が見つかるまでいろいろテストですね。
近赤外なので、夜間撮影は難しいですし、太陽光の方向によって風合いがだいぶ変わりそうです。
今日の若洲海浜公園と皇居は天気も良く綺麗でした。

Canon EOS M (IRカットフィルター除去改造)+ EF-M 11-22mm + Kenko PRO1D R72 (77mm) (720nmカット波長IR透過フィルター) + 三脚 : RAW現像(DPP + DLO + Photoshop)

* 参考


Canon EOS M (IRカットフィルター除去改造)+ EF-M 11-22mm : つまり全波長撮影

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赤外線カメラのススメ(Canon EOS Mの赤外線カットフィルターの除去改造)

本業の人工衛星開発では、植物の活性度を宇宙から観測するために近赤外バンドのカメラを搭載しています。そこで撮れる画像が実に面白くて、プライベートでも赤外線カメラを作ってみようかなと思いRSコンポーネンツを久しぶりに検索してみたら、イメージセンサを個人でも普通に買えることが分かりました。まだまだ種類は少ないけれどOn Semiとかオムニビジョンとかのイメージャーが1個単位で普通に売っています。これとFPGAを買ってきてCマウントの産業用レンズを用いれば普通に赤外線カメラを作れるななんて妄想していましたが、そういえば、型落ちのEOS M(初代)はめっきり稼動率が減っているので、カメラを0から作るのではなく改造しようかなと。そこで、赤外カットフィルターを外し、赤外透過フィルターを用いて赤外線カメラ(近赤外カメラ)として第2の人生を歩んで貰うことにしました。海外ではIR72, R72 (720nm付近でカットするフィルターを用いるため)写真と呼ばれ赤外線写真はかなりポピュラーです。

EOS Mに限らず、一般的なディジカメは、RGGBのベイヤーパターンのCMOSイメージセンサーを搭載していますが、センサー自体は、いわゆる人間の可視光波長(B,G,R)以上の赤外領域まで感度があります。
しかしカメラとして販売するときに赤外光はカメラ内にフィルターを設けてカットし、可視光領域のB,G,Rのみセンサーに記録しています。

EOS MのCMOSイメージセンサーとは異なりますが、先ほどのRSコンポーネンツで売っているOnSemiのCMOSイメージセンサーのDatasheetを参照すると。

20160418_onsemi_spectralres
参照:LUPA4000: CMOS Image Sensor, High Speed, 4 Megapixel

図にあるように、可視光と赤外(近赤外)との境が650~750nm位であり、このOnSemiのセンサーでも、(青くハッチをかけた領域)R,G,Bそれぞれ近赤外領域にも感度があります。

現在、一般的な市販ディジカメで赤外波長をカットしている理由として、
・そもそも人間の目で見えない
・可視光域と赤外域では波長の違い(屈折率の違い)により焦点距離が異なり、可視光域に合焦させても赤外光域はピンボケする。(つまり余計なものはカットする)
・上記の理由のため、レンズ設計も可視光域で性能が出るように設計している。
・一部の衣服が透ける可能性があった(盗撮防止)

盗撮防止に関しては、各社素材メーカーが工夫を取り入れ(赤外域も乱散させるような素材)、現在は盗撮は不可能だと思います。(記事で犯罪者を助長させないため)

本業の人工衛星では近赤外領域は植物の活性度判定等に利用しているため一般的ですが、市販ディジカメではほぼ撮影は不可能です。
そこで、今回はカメラを分解し赤外カットフィルターを外し、イメージャーに赤外光も届くように改造します。赤外カットフィルターを外すだけでは、B,G,R,IRと可視光~赤外までの広い波長(スペクトル)をセンサーで受けてしまうので、実際の撮影では、赤外光を透過するフィルター(つまりB,G,Rをカット)を使って、赤外光だけセンサーに届けるようにします。本来人間には見えませんが、赤外だけの波長を用いた写真は少し変わった表現ができるのでEOS Mの第2の利用には面白いかなと。
赤外透過フィルターは、方式も手法もいろいろありますが、たとえば、Kenko/TokinaのPRO1D R72(720nm付近からカット)などがあります。他にもHOYA R72, B+W 092など赤外写真は海外でポピュラーなので海外通販となりますが数点販売されています。

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EOS M(初代)は2台ありました。まず、使い込んだ古いEOS Mを改造しました。赤外写真をパシャパシャ撮っていたところ別の理由でシャッターが壊れてしまったので、結果的にはもう一台のEOS Mも同様の改造をすることに。

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T-16のトルクスレンチだけが特殊ですかね(たしかT-16だったと思います)。T-16前後の各サイズのトルクスがあると安心です。最後のイメージセンサーを取り外すところでトルクスが必要なので、工具として持っていないと開けたまま放置することになります。
また、細いニッパーと細いラジオペンチは必須。

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どんどん分解。

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この背面筐体部品を取り外す時は注意です。緑の丸のコネクタが接続されています。またこのフレキシブルケーブルがねじれに弱いので、取り外し、取り付けの時も細心の注意を。

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20160418_eosm_circuit1_2048
注意ポイントを緑に丸で示しました。この2つのコネクタは注意です。普通のラジペンでは挟もうとして空振りして配線を切ります(切りました(笑))
細いマイナスドライバーなどでぐりぐり追い出した方が良いかもしれません。

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イメージセンサーユニットは、3本のトルクス+バネによりオフセット量(チルトも)が調整されています。
分解時に、この「出っ張り部」の出っ張り量(3点)を測っておくと良いでしょう。

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イメージセンサーまわり。青っぽく見えるフィルターが、今回取り外す赤外カットフィルターです。

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左が赤外カットフィルター、右はセンサークリーニングユニットですね。

20160421_canon_eosm_cutf9_2048
パリっと割ってしまいます。

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左がCMOSイメージセンサー、右上がセンタークリーニングユニット、右下が割った赤外カットフィルター

赤外カットフィルターを取り外したので留意が必要です。つまり本来ならこの赤外カットフィルター内を通過してイメージセンサー面で結像するものが、`無し(空気)`になってしまうので、撮影時に無限遠が出ない可能性があります。つまり遠くの風景にピントが合わない可能性があります。その対策として、赤外カットフィルターがついていたところに、アクリル薄板を貼るなり、組上げ時にセンサー面をオフセットする必要があります。この辺の原理が分からない方はあまり手を出さない方がいいでしょう(なんて・・・。)

私はセンサー位置のオフセットで対応してしまいましたが、CLAREXなどのアクリル薄板を貼っても良いかもしれません。
参考:CLAREX(クラレックス)製品:精密板

他にも、カメラとレンズの間のマウンター部に薄板を挟んでも良いかもしれませんが、EF-Mマウントだと狭くてあまり置く場所がありませんね。

20160421_canon_eosm_cutf12_2048
どのネジから外したっていうのはちゃんとメモ。

分解の参考サイト:https://www.scotttorborg.com/canon-eos-m-teardown

*************

さて、実際の撮影結果です。

20161107_img_7150_2048
Canon EOS-M(IRフィルター除去) + EF24-70 F2.8L USM : RAW F5.6, f=24mm, ISO100, Tv 1/1000, WB=白熱電球(3200K)
*IRフィルター除去で撮影しているため、可視光(BGR) + 赤外光を含んだ撮影です。WBが白熱電球(3200K)でこの色であることにお気付きください。本来、朝の晴天の順光ですから5200K位が適正ですが、赤外光も受光しているためこのようなWBになっています。

20161107_img_7151_2048
Canon EOS-M(IRフィルター除去) + IR透過フィルター(760nm) + EF24-70 F2.8L USM : RAW F5.6, f=24mm, ISO100, Tv 5sec, WB=白熱電球(3200K)

一つ前の写真のセッティングに赤外透過フィルター(カットオフ波長:760nmくらい)を付けて撮影したものです。
撮影時間が5秒になっていることにお気付きください。可視光をカットしてしまっているため、センサーへの光量は大幅に減少し、同ISO, 同絞り(F値)では、Tv 1/1000からTv 5秒に大幅に撮影時間が長くなっています。手持ちでは困難なレベルです。

また、上記2つの撮影は赤外透過フィルターの有無だけではなく、ピントがズレるので撮影時にMFでピント調整をしています。

次に上記の2枚の画像をモノクロ化してみます。

20161107_img_7150bw_2048
Canon EOS-M(IRフィルター除去):可視光+赤外光写真からモノクロ化

20161107_img_7151bw_2048
Canon EOS-M(IRフィルター除去)+赤外透過フィルター(760nm):赤外光のみ写真からモノクロ化

いかがでしょう。後者の赤外光のみですと、植物(木の葉っぱ)などが良く反応しているので白っぽく見えますね。また、レンズは上述の通り可視光で性能が出るように設計されているため、赤外で使うと少しボワボワ見えます。

では、この赤外光カメラを何に使うのか?私もいろいろな被写体で試しましたが、上で紹介したような植物を含む風景写真も面白いですが、人物(ポートレート)がとても面白い事が分かりました。私は滅多に撮りませんが。
人物を赤外で撮ってモノクロ化をするととても面白い写真表現になります。まずは瞳の写り方が特徴的になり、人肌がとても滑らかに写るなど、可視光からのモノクロ写真とは全く違う印象になりかなり面白いです。予想外でした。
ポートレートを撮る方は是非お試しくだされ。ただし、シャッター速度の関係で、晴天時にF1.4の明るいレンズで、更にISO1600位にしないと手持ちで撮影できないので注意が必要です。

参考までに、flickrの赤外ポートレートグループのリンクを紹介します。人肌が実に滑らかになる点に注目ください。これはいわゆる「フォトショップ」加工せずにそのままこうなります。理由はなんでしょうね。レンズが可視光域に最適化されているので赤外域では少しズレているのが良いのかも(?)しれません。あと熱赤外に近いので体温がボケに見えるのかな?
Infrared Portraits | Flickr

また、赤外線による風景撮影は画像検索してもらえればいろいろ見つかるかと思いますが、少し紹介
Hi-Def Pics – 12 Beautiful Photos of Infrared Trees
Infrared Tree Photography
10 amazing facts about beautiful infrared forests
風景の簡易(安易)デジカメ赤外線写真(Mr. FUKUHARA, T)

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Canon EOS M + EF-M 11-22mm + 55mm -> 77mm Stepup ring + Kenko PRO1D R72 (77mm)

20161113_img_4621_2048
Canon EOS M + Mount Adapter + EF 35mm F1.4L + 72mm -> 77mm Stepup ring + Kenko PRO1D R72 (77mm)

中古でかなり安く買えるEOS Mを赤外カメラに改造するのはなかなか面白いですよ。
次回以降の記事で撮影したいろいろな写真を紹介したいと思います。

2016/11/12追記:近赤外撮影に関する記事を書きました → 近赤外撮影(皇居東御所・若洲海浜公園)

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