320kt 被害範囲想定

本日(9/3) 午後0時29分に北朝鮮が(公式発表で)水爆地下実験を行ったということで少しまとめておきます。また東京駅付近で炸裂した場合の被害想定をプロットしてみました。
最近、こんなきな臭い内容ばかりで萎えますが。あくまで外交交渉で解決すべき問題で私としては工学的にどういう程度の物かを客観的に紹介するものです。

<今回の水爆実験について:現時点の情報と推測で>
・2016年9月の実験では、実験による地震の規模はM5.3と推定され韓国機関の推定でTNT換算10キロトン程度と見積もられていました。(参考までに広島原爆は15キロトン、長崎は20キロトン程度)
・米国USGS等の発表により本日の実験による地震の規模はM6.3であることから、地震の規模で比較すると32倍となります。
・今日いろいろ資料を調べていますと冷戦時代に核地下実験における地震規模と核爆弾のTNT換算値に関して研究がされており[1]、今回の地震規模がM6.3である場合、TNT換算で320キロトンの爆発規模と想定されます。先ほど日本政府はM6.1と発表しましたので、160キロトン程度の可能性もあります。ここでは320キロトンと想定して進めます。
・水爆というのは原爆よりも可愛いイメージですが、原爆よりも圧倒的に強力な熱核兵器で、米国・ロシアなどは冷戦時代に開発が完了しており、ロシアが行った世界最大規模の水爆「ツァーリ・ボンバ」は、50000キロトン(50メガトン)級でその衝撃波は地球を3周しました。
・日本政府としては、航空自衛隊のT-4を飛ばして、実験後の空気に拡散した核物質を計測に行っています。直後の放射線を計測することで、原爆か水爆か、ウランかプルトニウムかなど推測できるためです。今回北朝鮮は、水爆実験に成功したと発表していますが、原爆、水爆の間に技術的に少しハードルが下がるブースト型という方式もあり、どの程度まで開発が進んでいるか調べる必要があります。
・さて、今回の320キロトン程度が仮に小型化に成功(=ICBMなどのミサイルに搭載するため)し、ミサイルとして着弾した場合の被害想定を、ネブラスカ大学医療センターの資料[2]を参考に雑に想定してみました。

<320ktの被害想定領域>
(1) 完全破壊領域:半径2.1km
(2) 致死領域:半径2.0km
(3) 深刻な消失領域:半径6.6km
(4) 窓硝子が割れる領域:半径14km
上記の推定を元に、東京駅を中心に描いてみました。中央区・千代田区の中心地は壊滅・致死し、渋谷・港区・江東・荒川まで深刻な破壊がおき、世田谷・足立・江戸川・品川領域で窓が割れるという厳しい結果となりました。原爆の10倍以上のエネルギーです。

<まとめ>
・今回の実験は、地震の規模から推測し、原爆の10倍以上の水爆相当と考えられるエネルギーが放出されたと考えられます。それを推測すると160kt~320kt程度となり、4枚目のグラフ[3]にあるように、キノコ雲が40kmを越えるクラスのエネルギーとなります。
・実際に東京都内でプロットするとその深刻さが分かりますね。打たれたら終了なので、それをどう外交で抑えるかですね。
・このクラスの実験は、冷戦時代、1980年頃に盛んに行われており、核保有国から見れば、30年以上遅れのことをやっていますが、逆に言えば、先進保有国は30年以上使ってもいないし、実験も行っていないのでちゃんと動くかわかりません。そういう意味では後発とはいえ現状「ホット」であることは結構重要な視点だと思います。30~40年前の物を直ぐスイッチいれて動くわけでもないですし技術者も世代交代しています。
・私としては、ミサイル飛翔などに比べて、今回の核爆弾(実験)に関しては専門外なのでちょっと調べないといけないのですが、政府としては無駄に深刻度を発表もできないでしょうし、マスコミ各社も詳しい人はいないでしょうし、工学的に嘘を発表していないかなど、やはり自分で概算して検証していかなければならないと思っています。

参考資料:
[1] Nuclear Explosions and Earthquakes, Bruce A.Bolt, 1976
[2] Radiation Injury From A Nuclear Accident Or Terrorist Attack, University of Nebraska Medical Center
[3] Mashroom cloud, Wikipedia

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