今クールのフジテレビ月9ドラマは、”ガリレオ”というドラマでした。第3回位(?)と最終話だけ、たまたま家に居たので見ることができました。福山雅治さんが天才物理学者を演じ、天才的な頭脳で様々な事件を解決していくという物語でした。第3話(?)では、大きな地震が起こる不思議な家の事件で、その振動を解明する計算式に、バネの振動に関する運動方程式がかかれていたため、少しは数学者の監修が入っているのかな?という印象でした。しかし、最終回はとても酷い内容でした。東京が吹っ飛ぶ規模の破壊力がある時限爆弾装置に、柴咲コウさん演じるヒロインが閉じこめられるというどうしようもない内容だけでなく、その装置の外観の酷さ(古臭さ)と、その回路基板があまりに酷いものでした。その装置を天才的な(?)頭脳で解体していくわけですが、DIPタイプのいわゆる74ロジックIC(標準ロジックIC)が数十個ついているようなボードがあり、とても最先端とは思えないものでした。プログラマブルな論理回路が当たり前のこの時代に、明らかに20年位前の古い回路であり、途中でWindowsの起動音が聞こえたりと回路を少しでも知っている人なら、”あり得ない”の大合唱が聞こえてきそうな回路でした。極めつけは、時限爆弾のカウントダウンタイマーに赤と青の2つのラインがつながっていてどちらを切るか迷うというベタな展開でした。結果は、赤でも青でもなく、奥に埋もれていたピンクのラインを切ることで爆発直前にタイマーが止まるという展開でしたが、今回のエントリーでは、映画・ドラマでよく見受けられる時限爆弾の赤・青の2本ラインに実際に出会したときにどちらを切れば良いか考察してみたいと思います。実にくだらないエントリーです。
まず、仮に出会した時にやるべきことは逃げることです。回路を考える前に逃げるようにしてください。このエントリでは、もう爆発まで10秒を切っており、10秒以内では、爆発規模を考えて自分が助からない、または今回のドラマのような展開で知人が爆弾に備え付けられている場合でかつ、なぜかポケットにニッパーが入っている場合を仮定しています。また、”赤・青”の2本のみ爆発カウントタイマーにつながっていると仮定します。ガリレオの最終回の様に、青・赤以外に何十本もある場合は、たとえ10秒でも安全な場所を探すほうが賢明です。
条件である”青・赤の2本のみタイマーにつながっている”というシステムを考えた時に、どういう回路構成が成立しうるかいろいろ考えて見ました。まず、いちいち犯人が青・赤のラインを使って、しかも一つを切ったら爆発で、もう一つならタイマーが止まるなんていう設計にするのか?かなり疑問ですが、とりあえずこの仮定を元に考えてみました。
*パターン(1):爆弾を起動させる電源ラインを赤・青で引き回し、タイマー側のスイッチで起動させる方式
切るべきライン:赤・青どちらを切ってもタイマーは止まらないが、爆発はしない。
解説:一般的には一番ありがちな回路である気がします。おそらく、赤・青ともに”太い”ラインが使われている可能性が高いです(直線抵抗を減らすため)。しかしこの回路だと、1/2の確率で間違えたら爆発するという条件を満足できません。
*パターン(2):爆弾を起動させるスイッチを制御するデジタルラインを赤・青で引き回す方式
切るべきライン:赤・青のどちらを切っても”爆発する”か、”爆発しない”である。
2本のラインを、ディジタル信号とディジタルグランドで使う場合です。その信号により爆弾側のスイッチを制御し、爆弾を起動させる方式です。ここで図のPull up / Pull downの部分がポイントです。おそらくスイッチを制御するディジタルラインが切断されたとき(浮いた時)の処理はなされている可能性が高いと思われます。つまり、ラインが切断されたときに、スイッチが入るか、スイッチが切れるかは犯人が意図的に仕組むことができます。しかしここは、おそらく”切断時はスイッチが切れる=爆発しない”設計にしている可能性が高いのではないかと思われます。理由は東京を吹っ飛ばす程度の爆弾であった場合、その回路の開発中にラインの切断などは起こりうる現象であり、安全側を考えるとここは切れる方向に設定している気がします。こう考えると、この回路の場合、青・赤どちらを切っても、”タイマーはとまりませんが、0秒になっても爆発しない”ことが考えられます。この場合も1/2の確率で爆発する仕組みになっていません。
*パターン(3):タイマーなどは爆弾側に含まれており、タイマーの時刻データのみ青・赤ラインで配線している方式
切るべきライン:どちらを切ってもタイマーの表示は止まるが、爆発は止められない。
パターン1が仕組みとしてはありがちですが、現実的な回路で考えると、この方式も多い気がします(2本しか配線がないという条件なので)。この方式の場合、どちらを切っても時刻カウントの表示は止まりますが(むしろ表示されなくなる)、爆発自体を制御するタイマーが止まらないので爆発は回避できません。この場合も1/2の確率で爆発する仕組みになっていません。
*他のパターンも当然あり得ます。
結論
■赤・青で迷う必要はない。
映画などによくある赤・青の2本のみがタイマーから出ている時限爆弾は、1/2の確率で爆発するというシステムは少ないのではないかと思われる。もちろん1/2の確率で爆発させる回路は考えれば実現できますが、犯人がいちいち複雑な回路を組む必要性がないと思われます。むしろ、”どちらでも良いから切るか、切らないか”を悩むべきである。
■青でも赤でもラインは切るべきである。
犯人も爆弾開発中に誤動作を防ぐためにある程度フェールセーフな設計にしている可能性はあります(たとえば、タイマーにつながっている2本が何らかの原因で開発中に切れたときにも爆発はしない設計)。そのため、どうせ切らないで爆発してしまうなら、”切った方がいいのではないか?”と思われます(言い切るのも危険ですが・・・)パターン3の場合があるので、タイマーの表示が止まっただけでは安心せず、少しでも逃げるべきです。
全くもってくだらないエントリーとなりましたが、現実問題として、2本のラインしか出ていないようなタイマーはまずないでしょう(笑)また、もしラインを切ることを考えるのであれば、タイマー近くのラインではなく、爆弾を発火させる直前のラインを切るべきです。おそらく高電圧・高電流が掛かるので、ラインは太いはずです。太い線を探しましょう。
というわけで、”ガリレオ”の最終回を含め、ライン2本のどちらを選ぶなんていうシチュエーションはあり得ないので、そろそろこのベタなシーンはやめてもらいたいものです。
お、おくが深いですね!!
なんとなく仕組みを理解できるようなできないような。
ray☆hana さん>
実はかなり適当な内容で恥ずかしいのですが・・・。
とりあえず、爆弾を見つけたら逃げましょう(笑
まじうける!!!
こういうところを細かく分析するところが直己さんらしくておもしろいですね!
なるほどテレビを作る側も色々勉強しなくてはなのですね :)
爆弾におけるフェイルセーフというのは、
通常メインスイッチを入れるまで各種トラップを
停止させておくものが多いとどっかで読んだような。
で、テロなどで使われる爆弾は発見されて解体作業を
されることを前提に設計されるので、煩雑な回路になっても
解体担当を惑わすためのトラップをいくつか入れている
のではないかと。たとえば、光学、振動、ジャイロ、
デジタル、タイマー、その他もろもろの複合トラップですな。
あと、爆薬のメインであるC4は電気信管で爆発させるのが
一般的ではあるけど、リレーコイルを使って配線を切った
瞬間に逆起電流がC4に複数埋めた雷管に通電するように
しておくという方向かな。
もしくは、無線回路と電池、電気雷管をC4に埋め込んで
デジタル回路が停止した瞬間に電波をとばすように
しておくとか。あとは、爆弾のそこにC4をどかすと
飛び出るピンを作っておいて、それにも雷管を
つないでおくというトラップもあったな……
まぁ、赤と青っていうのはドラマの絵的に面白いからって
だけなんだろうけど、上記の各種トラップなんかを含めて
現実的に爆弾解除をやろうとすると、それこそ24みたいな
本格ドラマになっちゃう。そんなこと、テレビドラマで
やってられませんってことなんだろうな。
でも、そんなことやってるから、日本のドラマって
いつまでたっても子供だましな部分が抜けないんだよね。
おまけに脚本家も、原作付きを書き直すようなのが多いし
まともにオリジナルを書ける脚本家が少ないのも
大きな問題だったりするところはありますがな。
テレビの制作側も、そういう勉強をしたり作ったりできる
時間と予算があればいいんだけど、というかそれをやろうと
しているのかが激しく疑問……。適当にドラマ作ってない?
というのが常に頭をよぎります。
わかばさん>
あの赤・青のチープな設定が見ていて痛いことが多いですね。Tyokutaさんも書いているように制作費と時間の制限があるわけですが・・。
Tyokutaさん>
Tyokutaさん詳しいですね(笑)。物の本を読めばある程度このあたりの詳しい知識は得られるようですね。(全く興味ありませんが)。もちろんトラップを掛けることは簡単ですが、マイコンのPoRでの挙動などを考えても、確実に爆発させることを考えるといちいちそこまで複雑にするのか?という印象です。
アメリカドラマが日本でブームになっていて、それこそレンタルショップの棚がシーズンなんたらで埋まっている状況ですが、日本のドラマよりはお金と調査も掛かっている気はします。日本は視聴率=人気俳優みたいな構図が未だにあるようなので、酷い脚本のドラマが多いですよね。
いやぁ、このたぐいのドラマとか漫画とか山ほど見たからなぁ。
自然とこのたぐいの知識が……。解除方法もそれと同時に
知るわけですが、このまま実際に解除をかけると確実に
爆発するなw
まぁ、アメリカのドラマにも屑みたいなのがあるんで、
それが日本まで届いてないだけなんかもしれないけどね。
やはり予算と時間は何をするにも重要なんだなぁと
思います。
3月末ぐらいに帰国するんで、飲み行きませう。
なんかずーっと言ってる気がするけど。
Tyokuta さん>
まぁ、本気の犯人だったら解除時に爆発させるように工夫はするでしょうね(笑
もう今は、レンタル屋がアメリカドラマばっかりです。24くらい金がかかっているドラマは良いとして、最近はブームにのってくだらないドラマも輸入されていて、もう少し吟味して輸入してもらいたいものです。
帰国楽しみにしています。
ちょーベタベタ(笑)
でも今年の夏くらいにアメリカ国内テロの再現ドラマの
翻訳をしたときにも,こんなベタな展開が盛り込まれていたよ...
ベタと言えば,深夜にベタ男とベタ女がベタな恋愛ドラマを
演じてその展開をクイズ形式で当てる番組があったのを
思い出しました.ベタベタなツボをこれでもか!と集めた
あの番組は最高だったんだよー!
reiさん>
しっているよ!くりいむのベタドラマだよね。あれ、超好きでした。主人公がパンを食いながら朝急いでいて角でぶつかったりするんだよね(笑)ベタすぎる・・。
映画「アビス」で、白と黄色のライン(黒と青だったかも)で、黄色のライトで照らしたら見分けがつかず、一か八かで切る、というシーンがありました。
ごんざぶろう さん>
こんにちは。
アビスをはじめ、ダイハードなどでも、この展開って多いですよね・・。衛星などはアウトガスの関係で真っ白なケーブルが多いから無理ですね(笑
面白い考察ですね。私も少し考えてみました。
通常、爆弾の解除にはバッテリーに液化窒素を注入して
化学反応を止めて電力を切る方法が一般的だったと
思います。私が爆弾犯なら爆弾のケースに高周波振動検知のセンサーを入れてドリルの振動に反応するトラップにしますね。
(液化窒素を注入するには爆弾のケースに穴をあけねばならず、その場合ケースをドライバーでこじ開けられるような構造にはしないはず。よって通常はドリルか何かで穴をあけたはずです。)
no nameさん>
実際には、切ったら止まるなんていう優しい犯人は少ないですよね。これだけMEMSあたりの振動ジャイロなども一般的な時代ですし、破壊活動検知など容易に検出できますよね。
ただ爆弾処理班って本当に大変な仕事ですね・・。