今日のエントリーは、一眼レフカメラ、ハイヴィジョンカメラなどの最新のカメラ道具の技術的な観点と、いろいろな写真を見て感じたことから、この1,2年後に発表されるであろう、”一般人”向けの新しい”領域”のカメラを予見する。私が書かなくても当然開発は始まっているだろうが、一応紹介しておく。
新しい領域のカメラとは、下のCの領域である。
(A領域)高精細静止画:ディジタル一眼レフカメラ
(B領域)中程度静止画+中途半端な動画:コンパクトディジタルカメラ
(C領域)静止画+ハイヴィジョン短時間動画:”新しいカメラ”
(D領域)ハイヴィジョン動画+中程度静止画:ハイヴィジョンビデオカメラ
私のようなカメラ好き、高画質好きは、Aの高精細静止画を撮れる一眼レフカメラおよび、Dのハイヴィジョンビデオカメラを持っていれば、静止画、動画ともに問題なく記録することができる。しかし一般の人が家族の旅行、ピクニック、普段の生活を撮る際に、この2台を気軽に持ち出せるだろうか?
この動画機能と静止画機能の共有は昔から要求とマーケティングが働いており、
(B)コンパクトディジカメにSD(非ハイヴィジョン)クオリティの数十秒の動画機能
(D)ビデオカメラに、メモリーカードを指して画質がイマイチな静止画機能
このように、静止画、動画ともにそれぞれ不足機能を補おうと発展してきている。ちなみに、一眼レフは、クイックリターンミラーが搭載されている限り動画撮影はできない。EOS-1RSで付けたペリクルミラーや動画専用のイメージセンサーを搭載しない限り、今の一眼レフの仕組みでは難しいであろう。そういう意味で、一眼レフという領域は今後も高精細、超高解像度の静止画という領域を進み続けると思われる。
さて、話を戻そう。(B)のコンパクトディジカメの動画機能は、今後一般的になるハイヴィジョンクオリティには程遠く、やはりおまけの動画機能である。一方(D)のビデオカメラの静止画機能であるが、私の持っているCanon HV10の静止画など普通の写真レベルでは問題ないクオリティを持っているが、そもそもいつもビデオカメラを持ち歩くというのは難しい気がする。
そこで(C)領域の提案である。提案もなにも技術的に順当な進歩と言えばそれまでであるのだが、コンパクトディジカメにハイヴィジョン動画撮影を短時間できる機能のカメラができれば、一般の人は静止画、動画を1台で事足りるのではないかという提案である。
現在、多くの方がコンパクトディジカメを持っている。カメラ店に行っても、各社、各種非常に多様な製品が揃っており選ぶのも難しい。一般の人の選択基準はやはり画素というのが未だにあり、1000万画素を超えるコンパクトディジカメも珍しくなくなってきた。ここで、ハイヴィジョン映像の画素数を考えてみる。今のところフルスペックハイヴィジョンと呼ばれる解像度は1920 x 1080 = 約200万画素である。現在のコンパクトディジカメでは200万画素を裕に超えており、ハイヴィジョンの解像度だけならクリアできる。つまりコンパクトディジカメで静止画は800万画素くらい、動画機能はそのうち200万画素を使ってハイヴィジョン動画撮影(短時間)ができるカメラが一般の人にはとても使いやすく、そしてまもなく発表されるであろうというのが、今回のエントリーの”新しいカメラの予見”という部分である。
上にも述べたようにこの新しいカメラは、まだ発売されていないとはいえ、明らかにコンパクトディジカメの技術的な延長にあるように見え、いちいち”C領域”という必要もない気がする。しかしあえてこの領域に置いたのは、”短い動画”という映像表現にひとつの名前を与えてみてはどうか?という提案である。
今回ハイヴィジョンカメラを買って初めて気がついた訳ではないが、動画を1分以上撮ることは一般の使い方ではほとんどない気がしている。大変すばらしい映像番組であるTBSの世界遺産も良く見てみれば、同じテイク(1回の連続録画)で1分以上の映像はほとんどなく、そのほとんどが15秒程度の映像のつなぎ合わせである。今のCMを見ていれば、15秒もしくは30秒でかなり多くの情報を伝えることができ、1分以上撮ることは、実験の映像、運動会の映像くらいの日常生活ではあまりない状況ではないだろうか(運動会も1年に1回の行事程度)。1分以上の動画を残すのであれば、(D)のちゃんとしたハイヴィジョンビデオカメラを用意すればよく、ほとんどの場面では1分、むしろ15秒前後の短い動画さえ撮れれば十分だと思うのである。この短い動画というのを、”短い動画”じゃなくて、”動写真”なり、”ショートフォト”なり、何か適当な名前と文化を与えてみてはどうだろうか?
私の写真(静止画)を好きな理由の1つは、”時間軸がないのに時間を感じられる”ことにある。フランスの有名写真家アンリ・カルティエ・ブレッソンが”決定的瞬間”という言葉を作った。その時しかない瞬間の写真こそ、その写真から、”時間の流れ”を感じ、妙にドラマチックに感じるものだと個人的に思っている。短い時間だからこその、その前後を妄想する面白さかなと思っている。
一方で動画の面白さは、赤ちゃんの大きな目の瞬きだったり、音声も含めた泣き声であったり、声変わりする前の自分の声だったり、草花の風に揺れる姿だったり、動きだからこそ表現できることである。JR東海の京都のCMなんかは、あの短い動画のなかに、京都の桜の散る様子や舞妓さんの歩く姿を含め大変すばらしいものである。
この静止画、動画の良いとこ取りで、”短いながらも”、”動きのある”動画ということで、”短い動画”という文化ができて、そのコンテストなどあれば良いなぁと思うわけである。そういう文化があれば、動画を撮る際に、”短い動画”的に撮ろうとする意図が働き、無駄に長い動画の蓄積を防ぐことができる。
”無駄に長い動画”というのが実は裏に込めた意図である。最近、メモリーカードの高容量化、低価格化で、だらだら写真を撮っていないだろうか?またビデオカメラもあまり考えずにだらだら撮っていないだろうか?ディジタルの恩恵ではあるのだが、その弊害として撮ったはいいものの、実際には見ないという問題が発生していると思う。私もフィルム時代は1枚50円という感覚があったので集中して撮ったものだが、ディジタルでいつもカメラには5Gのメモリーを入れていると、つい連発して写真を撮ってしまう。その写真はハードディスクを圧迫し、遂にはDVDなどのメディアに記録されるわけだが、ハードディスクからデータが離れた時点でその写真を見る機会は一気に減る。静止画でそうなのだから、動画で、それをやりだしたら編集が大変でますます撮っただけの動画になってしまう。
この”短い動画”という文化、ジャンル、言葉を作るべきと提案しているのは、
・時を大切にする
・無駄なデータを増やしすぎて結局見ないことを避ける
・短い間に意図を込めるという練習になる
など良いことが起こるのではないだろうか?というように考えるからである。何か良い言葉を作って、写真、動画と、”短い動画”という3ジャンルみたいなものができればよいなぁと思っている。
考え方としては、
・Digital Stage : Photocinema
・ソニー : 音フォト
のように、静止画をスライドショー的に音楽付きで再生させるものに近い気がする。この静止画スライドショー+音楽は、結婚式などで既に定番になりつつあるが、ものすごく素敵な見せ方だと思っている。
さて、そのC領域のカメラであるが、まもなく発表されるのではないかと思っている。メーカーはおそらくソニーではないだろうか。本音を言うとソニーはそれほど好きではないのだが、やはり要素技術の開発などの目ざとさはさすがで、彼らのプレスリリースを追いかければこの新カメラが出来上がってしまう。その先見性を大切にし、少し叩かれている品質管理を復活させ、世界のソニーを復活させてほしい。
・ソニー超高速CMOSセンサー
・ソニー メモリースティック PRO-HG
H.264エンコーダLSI : 各社
ハイヴィジョンの解像度は200万画素程度ということは先に述べた。しかし画素だけではなく、毎秒60フレームで記録できないとハイヴィジョン映像にはならない。また、その高速のデータを圧縮し、メモリーカードに高速で記録するためにはもう少し技術的な課題がある。上の3つの新技術を用いれば不可能な話ではなく、早ければ2007年にも、ハイヴィジョン動画撮影ができるコンパクトディジカメが発表されるかもしれない。バッグに入れておき、静止画も動画も撮影できるカメラは、たぶん売れる気がする。少なくとも私は欲しい。
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P.S. 何度も今回のエントリーを消そうと思った。とにかくハイヴィジョン動画が取れるコンパクトディジカメと、短い動画という文化があれば良いということを伝えたかったのだが、うまくまとまらず、結果的に酷い文章になってしまったためである。まぁ、もともと綺麗な文章をかけるわけではないので、このまま公開することにした。
消費者心理として、撮影とは単なるデータ保存というより「記憶を誰かと共有する」という行為の占める割合が大きいということをどこかで聞いたことがあります。
確かにそうだなぁと思うのですが、Miyashitaくんの言うとおり、「1分程度の高画質動画」で記憶共有ができたら更に素晴らしいなと。
ただ一方で、これまでも携帯やコンパクトなデジカメにショートムービー機能が盛り込まれていたりと、高画質じゃないけど機能は結構整っていた。それなのにあまり拡がっていかないのは、やはり周辺インフラの問題もあると思います。
つまり、一般ユーザーが「短い動画」を共有するためのサービスが無い。YouTubeとかGREEとかあるけど、なんか違う。クローズドな動画共有サービスがあればいいんだけどね。
あともう1つ大きな問題として、ビデオ撮影を「される」ことに対する心構えの仕方が皆無だよね。写真なら「ピース」とか「ハイ、チーズ」とか「1+1は?」みたいな独特のノリが、被写体になることへの不安とか気後れを緩和しているような気がする。
動画共有のためのサービスが拡充されて、且つそういった心理的な不安を打ち消すようなノリを含んだ動画文化の醸成が必要、ということでしょうか。
shumaくん>
マーケティングセンスでコメントありがとう。
共有という感覚なのですね!それは考えもしない心情でした。たしかに私も写真は見せたいと思うことがありますし、根底の感情な気がしました。
おっしゃるとおり、ハイヴィジョンの動画はまだ環境的に早すぎて、パソコンも16:9の高解像度、ハイヴィジョンテレビが当たり前、BDは誰もが使っている(今のDVDの状況のように)という環境が前提条件で技術的にはまだまだ先のことな気がします。
さらに被写体として1分どういうポーズをすればよいかというのはおもしろい感覚ですね!風景ばかりとっている私にとって考えなかった発想です。そういう意味で”短い動画”は、あくまで、人物も風景としてとけ込んだ状況や、何かピアノを演奏するなどの、ポーズではなくアクション的な被写体となりそうですね。
早かれ遅かれハイヴィジョン動画撮影が可能なコンデジは出てくるので、そのあたりただの技術発展じゃなくて、写真技術・文化としてあればよいですね。
なかなか面白く読ませて頂きました。私も同じようなことを期待していたので興味を持って読みました。たまたまヤマダ電機でサンヨーのXacti DMX‐HD1Aというムービーカメラを知りました。なかなかな優れものだと思っているのですが、最低照度やカメラ感度ISOレベル等は大いに不満なのですが手の平サイズで軽く静止画五百万画素でビデオ撮影中も静止画5百万画素可は良いと思っています。同画素数で連写o.2秒間隔で6枚も魅力。ハイヴィジョン1280×720を店頭で見たらその映りに驚きました。(そもそもハイヴィジョンとはどういう数値なのか教えてほしいです。)しかし全体に明るさが今一つ、F値が3.5(38ミリ)3.5(380ミリ)で他と比し少し暗い。今日の最新ニュースで最低感度・ISOともに改善され710万画素の静止画にしたそうです。8G‐SDHC対応ともなっていました。携帯性は抜群と思っています。ヤマダではHD1Aがなんと60600円で10%ポイントついていますが新型比較で購入の気持ちが揺れ動いている者です。手のひらサイズに多くを期待しても?という点からすると妥協して充分なスペックかと思うのです。
宇野さま>
はじめまして、コメントありがとうございます。
つたない文章で恥ずかしい限りです。
Xacti新機種でましたね。私もちょうどお昼休みに確認したところです。Xactiは、動画、静止画境界なく撮れるお気軽カメラとしては良い位置にいるカメラですよね。SDHCにも対応しているということで、最近のSDHCの妙な安さも含めかなり期待できそうですね。VictorからはFullHDのビデオカメラも発表されましたし、今年はBDも含めハイヴィジョンの実質的な元年でしょうね。ちょっと店頭でXacti確認してみます。