東京日本橋から福島第一原発周辺まで車で放射線計測をしてきた(その3)

以前の関連記事をまずご覧ください
東京日本橋から福島第一原発周辺まで車で放射線計測をしてきた(その1)
東京日本橋から福島第一原発周辺まで車で放射線計測をしてきた(その2)
東京日本橋から福島第一原発周辺まで車で放射線計測をしてきた(その2.5)

番外編:
車載ガイガー+GPSによる東京都の放射線マップ作成(2011/06/17)

********** ”その3”の記事は以下より ***************

さて、最終(の予定)の記事”その3”です。気づいた事を箇条書きで紹介。

1)最も述べたいこと:”放射線が強い地域の自然は本当に素晴らしいものでした”

福島市から東に向けて原発方面に向かいました。線量はどんどん上がってゆき、恐怖感を感じましたが、それよりも思うことは現地の自然の美しさでした。
本当に自然の豊かな場所に、新緑の美しさ、田畑の綺麗さ、とにかく素晴らしい地域でした。
こんなに綺麗な場所がこの線量(簡単に1μSv/h越え)は本当に悔しく、残念で仕方がありません。
自転車好きの人間としては、線量のない時期にこの綺麗な自然をツーリングしたかったです。

写真がしょぼくて申し訳ないのですが、綺麗な福島の風景。

2)他のサーベイメーターとの比較(GM-45は低めに値がでる傾向があった)


一緒に持って行ったGM 計数管式サーベイメータ(TGS-121)

私の安物ガイガー(GM-45)に比べて定番とも言える、むしろ管理区域のある研究機関であればまず置いてあるサーベイメーターを2台持って行き比較しました。
GM-45と比べて、低線量(0.1~0.2μSv/h)程度であれば、GM-45が高めにでて、0.5μSv/h以上になってくると、TGS-121の方がGM-45よりも高い値を示す傾向がありました。
2台のTGS-121でもやや値に差はありました。この写真は、撮影日時 2011/06/11 13:49:20とEXIFに記録されています。ここでの線量を比較してみます。

GM-45 1.32μSv/h
TGS-121 (No.1) 画面左 3μSv/h
TGS-121 (No.2) 画面右 2.1μSv/h

線量が強い地域は、GM-45に対してTGS-121 No.1は、約2倍、No.2は、約1.5倍程度を概ね示していました。
TGSの方が精度が良いことを考えると、GM-45の放射線マップの数値の最大2倍程度と考えても良いかもしれません。

3)胸ポケットに入れておいた線量計がちゃんとカウントされていた

普段、放射線を扱う際に、胸に線量計を入れて、厳密に管理された”放射線管理区域内”で各種試験を行います。
1日の試験が終わって管理区域を出る際に、線量計が、”0(ゼロ)μSv”であることを確認して、ああ、今日も全く問題なしということを記載するわけです。


線量計の電源をONして、リセット(0000μSv)にして、胸ポケットにいれました。ちょうど福島市あたりから使い始めたかな。


浪江、いわきなどを車で通過して帰宅の頃の値。ちゃんと2μSvを示していました。線量計が0(ゼロ)ではないのを始めてみました。
改めて強い線量地域だと思いました。ちゃんと今までの積算被曝線量を個人記録管理をしているので、今回の値もちゃんと記録しています。

これが現実なんですよね。今までは”管理区域内”で普段0(ゼロ)μSvを確認して試験完了していたのに、管理区域でもない屋外(計測は車の中)どこにいても、たった1~2時間で受けてしまう線量の強さに恐ろしさを感じました。

4)防災対策法による、”立ち入り禁止区域”と、地方警察による職務質問。

浪江の近くで、車を止めて放射線を計測していたところ、警察から職務質問を受けました(笑)
最近は留守の家での空き巣被害が多く、全国の警察が当番制で原発界隈の地域を見回っているとのこと。
更に東京ナンバーの車は目立つらしく、声を掛けてきました。車にはノートPC+ガイガー、複数のサーベイメーターで怪しさ満点です(笑
事情を説明し、そもそも20キロ圏内に入っているわけでもないし、問題なく開放されました。現地の見回りも大変ですね。

さて、今回の原発近くの車載計測では、約4~5カ所の立ち入り禁止検問にあたり、それ以上は原発に近づけませんでした。


ここは今回の計測で最も線量が高かった場所。津島中学校の先あたりです。TGS-121のサーベイメーターで10μSv/hを越える非常に高い線量でした。
警察も胸に線量計を付けていました。あの場所では6分に1μSvずつカウントアップされていくでしょうし、大変なお仕事ですね。心配です。
ちなみにここは、20キロ圏よりもずっと離れていて、原発からは30km近く離れています。線量が強すぎて、20kmよりももっと遠いこの地点でブロックしているようでした。


<その1で紹介していますが、再度表示。測定してきたデータのKMLファイルです>
ALLデータ:ポイントと線(表示が重い) : https://www.spacewalker.jp/rad/20110611_fukushima_radiation_all.kml
線データ:線のみ(軽い) : https://www.spacewalker.jp/rad/20110611_fukushima_radiation_lines.kml
ポイントデータ:ポイントのみ (少し軽い): https://www.spacewalker.jp/rad/20110611_fukushima_radiation_points.kml


葛尾村での立ち入り禁止。このように簡易立ち入り禁止も。これは無人だったし、違う理由での立ち入り禁止かな?


ここも本格的に立ち入り禁止。20km圏境界。


ここはいわきの北側の立ち入り禁止。ここは原発まで20km境界。

何カ所か、立ち入り禁止ブロックがかかり迂回することに。一方で車載で計測していると、20km境界はあまり関係なく、線量が高くなったところに検問が置かれている。
つまり、ちゃんと関係者は線量を測っていて、政府発表の20km圏とか関係なく、境界を設けているようだった。
おそらく5km, 10km, 20kmとなし崩し的に避難区域を広げてきたので、今更30kmとか拡大できないとかあるのだろうかと。そもそも風などに影響されるのに、円形の避難区域設定も無理があると思います。

5)まとめ

今回の車載計測を通しての一番印象が残っているのは、1)で紹介した線量が高い地域の自然が非常に美しいということ。私も田舎出身と同様に非常に自然が豊かで綺麗な場所でありその場所が、高線量であることは残念で仕方がないです。
また線量が高い地域で普通に子供がマスクなどもせずに、バスを待っている姿を見かけた。とにかくちゃんと情報が伝わっているのかなど心配な気持ちになりました。
私のシステムと同様に、車載ガイガーシステムなどがぽつぽつ出現しているので、いろいろな情報が集まってくるかと思います。より細かいホットスポットなどが見つかり、リアルタイムでメッシュ的に測れる体制を早く整えたいものです。

東京日本橋から福島第一原発周辺まで車で放射線計測をしてきた(その3)」への7件のフィードバック

  1. miyashitaさん、こんにちは。
    それにしても、miyashitaさんの行動力には頭が下がります。
    基本的に私は原子力にたいしては積極的に賛成派ではありませんが、絶対否定派という訳でもありません。
    しかし、今回のmiyashitaさんの計測データや先日のニュースでも、子供たちの尿から放射能が検出などの報道があると今の国や東電の対策には疑問を抱かざるを得ないですね。
    やはり、そのためには数多くの情報が必要になるんでしょうね。

  2. こんにちは。

    コメントありがとうございます。
    放射線に関しては学術的な面では専門ではないのですが、人工衛星開発に放射線の取り扱いは必須でございまして、事故前からよく扱っていました。
    そこで、管理区域の中でおっかなびっくり扱っていた放射線の数倍の量が普通に外であふれているという今の状態はもう異常すぎて不安を持っています。
    私個人としては自ら測って、主観的な判断ができるようにと今回福島まで行ってきました。いろいろ見えてくる物がありますね。

  3. こんにちは。
    早川先生(火山ブログ)の「汚染地図を作るが急務」という言葉に触発され、奮起一転、「歩いて作ろう汚染地図」(仮称)というサイトを立ち上げようとしてます。

    まず差し当たって、ガイガーロガーとGPSロガーとを使って測定されたデータを可視化(KMLファイルに加工)する部分を構築するにあたり、KMLファイル中で軌跡に色づけする方法について悩んでいたのですが、こちらのサイトを発見し随分と参考にさせて頂きました。どうもありがとうございました。

    当方のサイトで「参考にさせて頂きました」と表示させてもらおうと思ってますが差し支えありませんでしょうか。
    URL欄の先で既に表示させてしまってますが、まだ検索エンジンにもヒットしてない無名サイトでして・・・
    差し支えあればすぐに削除なり致します。

    あと、spacewalker 様のところでは、GM-45 というカウンターを用いられているとのこと。
    できればこちらの機種にも対応したいと思ってまして、もしできましたら、サンプル的なもので結構なので、カウンターが吐き出した生ログを送って頂くわけには参らないでしょうか。

    突然のコメントで申し訳ありません。

  4. こんにちは。

    貴殿サイトで弊サイトをご紹介いただくことは全く問題ございません。サイト名および、記事などへ適当にリンクを頂ければと思います。

    私の方でも同等の活動をしておりますので、いろいろなところで新しい計測情報が増えてくると良いですね。
    gm-45は標準ログがございません(私はlinuxで使っているもので)。よろしくお願いします。

  5. 素早いコメント感謝しています、ありがとうございました。

    Linux で取り込んでおられるのは拝見したのですが、CR+LF で行区切りされた風な単純なデータがシリアルから落ちてきていて、そのままシーケンシャルファイルとして保存されているのかなと錯覚してました。すみません。

    私のところは、自分の足を使って計測してなくて(こちら名古屋でして・・・)、実値計測して来られた方のを加工してあげるだけの方向性なので、あまり苦労してないと言えば苦労してないです。。。

    今後ともよろしくお願い致します。

  6. 了解いたしました。

    是非一度現地へ計測に行かれると、いろいろな事を得られると思います。
    放射線以外にも得る事、体感することがありますので、機会がございましたら。

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