ASUS Zenfone3 RAW(DNG)撮影・現像カメラテスト。カラーチャートによる独自DNGプロファイルの作成。

前回の記事(Asus Zenfone 3 (ZE520KL)カメラテスト (比較Canon EOS M3, Sony Xperia Z1))の通り、ASUS Zenfone3 (Z017DA, ZE520KL)は、特定のAndroidアプリを用いる事でRAW撮影(DNG形式)が可能です。一方で、その出力されるDNGデータは、Zenfone3のカメラ固有のカラー調整・変換プロファイルデータが埋め込まれておらず(提供されておらず)、Sony製カメラモジュール(IMX298)から出力された生データをそのまま出力しているような画像で、なかなか扱いが難しい物でした。もちろんAdobeの公式でZenfone3のDNGプロファイルなどは公開されていません(今後も無いでしょう)。もう少し詳細に書くと、Zenfone3はカメラモジュールとしてSony IMX298を用いているわけですが、そのモジュールはR,G,BのベイヤーRAWのデータを出力し、それを多少誇張することも含め見栄え良くカラー調整を行いJPEG撮影・出力を行っています。ASUSの公式カメラアプリなどでJPEG形式で撮影した場合は、その見栄えの良いカラー調整・変換がされた上で保存されるのですが、RAWで撮影した場合に、その色味などの変換プロファイルがDNGには記録されておらず、センサー値そのままが記録されているような印象でした(階調にも少し余裕がある感じ=絵としては軟調に見える)。そこで本記事では、そのセンサー生値に近いDNGデータを、カラーチャートなどを用いて色補正プロファイル(DNGプロファイル)を独自に作成し、また暗部・明部の階調レベルを少し詰めることで、それなりに画像を追い込む現像フローを紹介します。

◆RAW(DNG)撮影Androidアプリについて
RAWで撮影が出来るAndroidアプリは、FV-5, AZ Camera, Manual Cameraなどがありますが、色々試した結果、本記事ではAdobe Photoshop Lightroom(andorid) のカメラ機能によるRAW撮影で行います。
また、全ての画像はクリックすると元画像(元サイズ)にリンクしているので、ピクセル等倍で確認したい方はどうぞ。
私のPC(Windows 10 Pro 64bit)の環境は、最新版のAdobo Photoshop CC, Lightroom CCです(Creative Cloudで更新しているため最新版)。

◆AndroidアプリのRAW撮影している様子(スクリーンショット)
20161023_adobephotoshoplr_android
Android App : `Adobe Photoshop Lightroom Android v.2.1.2`

・RAW(DNG)保存可能
・White Balance(WB)変更可能
・ISO変更可能(ISO 50 ~)
・シャッター速度変更可能(しかし、0.5秒より長いシャッター速度は設定できず←悔しい)
・絞り調整:できません。そもそも可変絞りがZenfone3カメラについていません。
・セルフタイマー機能が可能なので、以下からの撮影は全てタイマーを使ってシャッターボタンを押した時のブレを軽減しています。

◆x-rite ColorChecker Color Rendition Chart (いわゆる24色カラーチャート)撮影
ザ・定番のカラーチャートx-rite製を用いてRAW(DNG)撮影を行い、独自のDNG Profileを作成します。作成には、Adobe公式のDNG Profile Editorを用います。

20161023_asuszenfone3_ze520kl_colorcalib1_2048
このように角の4点をドラッグして、色を取り込みます。

20161023_asuszenfone3_ze520kl_colorcalib2_2048
自動で読み込んで変換カラープロファイルを作成した様子です。ザ・定番のx-riteチャートですと、角の4色を設定するだけで、全色自動で読み込んでプロファイルを作ってくれます。

*留意1 ここで本来なら環境光として5000Kの高演色蛍光灯などを用いるべきですが、その機材が用意できず撮影しているので詰めが甘い状態です。
*留意2 x-riteのカラーチャートですが、8年位前に購入したものであり、色が変化している可能性があります。

これで作ったProfileをCameraRawのプロファイルフォルダにエクスポートします。Windowsである場合、
例:C:\Users\YOUR_USER_NAME\AppData\Roaming\Adobe\CameraRaw\CameraProfiles このようなフォルダになります。
ここにプロファイルファイル(拡張子.dcp)を置いて、Photoshop, Lighroom (Windowsアプリの方です)を再起動します。
品質を保証しませんが、私の作成したプロファイルを使いたい方はどうぞ。(コメント欄に一言是非)

Asus_Z017DA_Zenfone3_ZE520KL.dcp
DCP Copyright(C) spacewalker.jp

◆作成したDNGプロファイルを使ってCameraRAWで現像を行うテスト。プロファイルの違いによる色味の違いの確認

20161023_asusz017da_zenfone3_ze520kl_cameraraw_compare_default
Zenfone3のRAW(DNG)デフォルトプロファイル

20161023_asusz017da_zenfone3_ze520kl_cameraraw_compare_profileapplied
今回作成した独自DNGプロファイルを適用した状態

如何でしょうか?少しプロファイルを適用した画像の方が色鮮やかに見えますね。技術的には色補正がそれなりに正確になっているはずです。
しかし、Zenfone3でJPEG画像で保存した写真と比べて、どうも階調的にカチっとしておらず、色褪せて、白っぽく見えます。

◆Zenfone3カメラ出力のJPEG画像と、上記までのプロファイルを適用して現像したRAW画像のヒストグラムを比較し、レベル補正で調整する。

Zenfone3のASUS公式カメラアプリでJPEG保存すると、先述の通りASUS公式のカラー調整(見栄えの良いような誇張も含む)が適用されてJPEGに保存されます。
このJPEG画像と、上記までに行ったRAW(DNG)現像で開いた画像のヒストグラムを見比べて、ASUSがどんなカラー調整を行っているかざっと予測して、その補正を真似てみます。

20161023_asusz017da_zenfone3_ze520kl_histogram
左側:RAW(DNG)撮影+独自カラープロファイル適用済みの画像とヒストグラム
右側:Zenfone3 Asus公式アプリJPEG保存の画像とヒストグラム

この写真だけでなく、いろいろな被写体に対してJPEGとDNGを比較した結果、DNGの方が上下に階調の余裕があるケースが多いことがわかりました。カメラモジュールから生値として出てくる画像に対して、JPEGは上下余裕の階調分をカットし(いわゆる累積個数による暗部・明部のカットですね)、コントラストを上げてパッと見の見栄えを良くしている印象です。その辺りの傾向を掴みDNGで開いた画像をレベル補正で上下切り詰め、中間調を変更するとかですかね。(実にテキトーです)

20161023_asusz017da_zenfone3_ze520kl_cameraraw_dng_jpen_profile_levelcc1_2048
RAW(DNG)撮影+独自DNGプロファイル適用済みの画像にレベル補正でダイナミックレンジ一杯になるように暗部を詰めて、中間調を調整した画像(もういじりすぎ)

以上の様な感じで、とりあえずRAW撮影+DNGカラープロファイル適応+レベル調整のフローが出来ました。

◆Canon EOS M3とZenfone3の撮影比較テスト

20161023_canoneos_m3_ef35mm_f1_4l_no1_2048
Canon EOS-M3 (APS-C) + EF35mm F1.4L USM : ISO100, RAW, DPP+DLO, f=35mm, F=4

20161023_asuszenfone3_ze520kl_hasselblad_officialapp_no1_2048
ASUS Zenfone3 公式カメラアプリ JPEG撮影。ISO50, SS=0.5秒

20161023_asuszenfone3_ze520kl_hasselblad_dng2jpeg_no1_2048
(今回作成したフロー) ASUS Zenfone3 + Adobe Photoshop Lightroom(Android)アプリRAW(DNG)撮影 + 独自カラープロファイル適用(PC Windows Adobe Camera RAW) + PC Windows Photoshop レベル補正 : ISO50, SS=0.5秒

*クリックすると拡大

◆まとめ
1) カラーチャートを使って独自のDNGカラープロファイルを作成し、適応した上でレベル補正などを行えば、Zenfone3のRAW撮影はそれなりに使えることが分かりました。
2) 最後の比較画像で、ASUS公式カメラアプリのJPEGと、本記事でのRAW現像フローJPEGを比較すると、後者の方がやや画質が痛んでいない印象です(背景の風炉先など後者の方がノイズが柔らかい)。また、前者(ASUS公式アプリJPEG)は、手前のカメラの`Hasselblad`ロゴの上下が青く偽色が発生していますが、後者では発生していません。
3) Zenfone3の公式カメラアプリのAWB(Auto White Balance)はやや甘く、頼りない印象があります。その点、RAWでの現像フローに目処が経っているため、RAWで撮っておいて後でPCで追い込むということが出来るかと思います。
4) Zenfone3の公式カメラアプリは、動きも快適でシャッター速度も30秒まで調整できるなど割と良く出来ています。それを考えると、撮影時にWBと露出補正をちゃんとすればJPEG撮影でも大丈夫だと思います(この記事の意味がなくなりますが・・)
5) Androidアプリ版のAdobe Photoshop Lightroom(Android)のアプリでも簡易的な現像処理は行えますが、上述の通り、カラーDNGプロファイルが無いため、JPEGの様な色に追い込む事が難しいと思われます。
6) 上記比較画像では、ISO50でいわゆるZenfone3の持っている最高性能で撮影しています。とはいえ、EOS M3のAPS-Cのイメージャーとの比較では明確に違いますので、やはりミラーレスカメラなどの立場はまだまだありますね。
7) こんなに苦労してイチイチRAW撮影をZenfone3でするよりも、iPhone7, P9, Google Pixel(たぶん)など、RAW撮影を公式にサポートしているスマホを買う方が賢明かもしれません(笑)
8) Androidアプリ版のAdobe Photoshop LightroomをRAW撮影すると、動きがやや重く、AFでの合焦も遅いので気持ち良くは正直撮影出来ません。(ASUS公式カメラアプリは快適)。またシャッター速度もRAW時は、0.5秒以上伸ばせないなど、夜景時には結構痛い状況です。

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