のみくいやひさご 呑喰屋・「瓢」 – HISAGO –

 三軒茶屋のすずらん通りに,呑喰屋「瓢」はある.前回紹介した“DOOM” Dining Barの姉妹店で,以前DOOMの和食シェフであったくぼちゃんと,バーテンダーのK5くん,元寿司職人のカイセさんの3人が織りなす”和”にこだわり,”和”を大切にした呑喰屋である.”瓢(ひさご)”という珍しい単語を辞書で調べてみる.

ひさご【瓠・匏・瓢】

Ⅰ (古くは「ひさこ」とも)
1 夕顔・瓢箪(ひょうたん)などの総称。また、特にそれらの果実。なりひさご。《季・秋》
2 1の実をくりぬいて作った容器。水・酒・穀物などを入れる。
3 (「杓」「柄杓」)水などをくむ用具。1の実を縦に二つに割って用いたところからいう。後には、木を刳(く)って作り、柄をつけたものなどもいう。ひしゃく。
4 紋所の名。1にかたどったもの。丸に一つ瓠、抱き瓠、三つ寄せ瓠などがある。
Ⅱ (ひさご)連句集。一冊。浜田珍碩編。元禄三年刊。芭蕉と珍碩・乙州・正秀らを中心とする近江国(滋賀県)蕉門の連句五歌仙を収める。俳諧七部集の一つ。

Kokugo Dai Jiten Dictionary. Shinsou-ban (Revised edition) Shogakukan 1988/国語大辞典(新装版)小学館 1988

 瓢は,ひょうたんの総称でお酒などをいれていたことから,お店の名前になったという.私は,瓢に対して”居酒屋”という表現はどうもしっくりとこない.居酒屋というと,大手チェーン店みたいな何となく”テキトー”なイメージがあるからである(本来はそういう意味ではないようだが・・).DOOMと同様に,お酒を飲めるだけではなく,がっつりと和食を食べられるお店という意味で,”居酒屋”ではなく,お店の名前にもある”呑喰屋”がしっくりとくる.
 その和食は,くぼちゃんとかいせさんがカウンターのお客さんと会話をしながらも手抜きなく,おいしく,そして丁寧に作ってだしてくれる.瓢において,料理がうまいのは当たり前で,ここに見た目の美しさが加わる.お造りのようなものはもちろん,宮下特性のお造り丼などもいつも美しい.時事ネタでいうと,得点に関係のない荒川静香さんのイナ・バウアーと同様に,料理の成分には関係のない”見た目”にも,しっかりと気を抜かず作ってくれる.しかし見た目で味は十分に変わるとおもう.食べているときに,料理の味に丁寧さを感じることができるのだ.こんな感覚は海外では絶対に感じることができない.レアで頼んでウェルダンでくるステーキ,アルデンテの3倍くらいの直径でくるパスタ,サイズを言わなかったら牛乳パックのサイズでくるコーラ,そんな国ではこの感覚は皆無であり,この感覚をもつ国の文化を持っていることに感謝をしたくなってくる.
 お酒を出してくれるのはK5くん.何せ男の自分から見ても超かっこいい.300種類ある瓢の焼酎をお客さんに説明し,シェフの作った料理を席まで運ぶ.移動も多く行動としてバタバタせざるを得ないポストでありながら,K5くんはそれを極めてクールにこなす.多忙だと顔に出やすい私の性格からすると,K5くんの振る舞いは見習いたいなぁと思う.
 結局,瓢につい足を運んでしまうのは”人”だと思う.その人たちが一生懸命お酒・料理をつくり,気軽に相手をしてくれる.とても基本的なことで,何も珍しい話ではないのかもしれない.しかし,こんな基本的な事が,世の中のお店には実現されていないことが多く,こんな基本的な事でつい足を運んでしまう緩やかな動機になるんだと思う.
 最近,とても大切にしている漢字がある.”間”.”間”には読み方がたくさんあって,そのどれもがとても素晴らしく日本的で,極めて美しい意味を持っている.瓢はその中の,間とかいて”あい”と読む”間”かなと思っている.”間・合”(あい)を辞書で調べてみると.

あい(あひ)【間・合】
(「あい(合)」と同源で、両者の相向かうこと、ところ、の意から転じたものか。時代的には「あいだ」の方が古く、また、類似の語に「あわい」もある)
(1) 二つのものの間をいう。
1 物と物との間。あわい。ま。
2 人と人との間柄。関係。仲。
3 酒杯のやりとりの際、二人の間にはいって第三者が代わりに杯を受けて酒席の興をたすけること。「あいの又間」*評判・秘伝書「あひをなどとて人出る事あるべし」
4 「あいのしゅく(間宿)」の略。
5 「あいのて(間手)」の略。
6 人形浄瑠璃で、太夫が語る文句と文句との間を三味線だけでつなぐ演奏。短い旋律で、おもに文意を助けて印象を深めるために行なう。
7 「あいきょうげん(間狂言)」の略。
8 「あいがたり(間語)」の略。
9 「あいごま(間駒)」の略。
10 「あいのもの(間物)」の略。

Kokugo Dai Jiten Dictionary. Shinsou-ban (Revised edition) Shogakukan 1988/国語大辞典(新装版)小学館 1988

 ここでいう間(あい)が何とも瓢で感じることが多く,何とも居心地が良いのだ.
 三軒茶屋に来られましたら,是非瓢に足を運んでみてください.それぞれ感じ方は異なるかとおもいますが,3人の一生懸命さと,”間”を宮下的には感じるとても素敵な空間だと思います.

のみくいやひさご 呑喰屋・「瓢」 – HISAGO - @ ぐるなび

姉妹店:DOOM Dining Bar @ ぐるなび

 瓢もオープン前に写真を撮らせて頂いた.そのときの写真を掲載.

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入り口の暖簾

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入り口の提灯

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店内カウンター

のみくいやひさご 呑喰屋・「瓢」 – HISAGO –」への2件のフィードバック

  1. アルデンテの3倍くらいの直径でくるパスタが出てくる国にいる私としては、二日続いたエントリーはなんとも魅力的すぎて苦しみさえ感じてきました。
    単にspacewalkerの描写力、撮影技術ではないぞ!?!?
    こうなったら、帰国を機に必ず行かせていただきます=333

  2. no name さん>

    最後の=333で誰だかわかっているけど、帰国楽しみにしています。気をつけて帰ってきてください。いかにまずいものを食べているか実感してください(笑

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