毎朝5:45 – 6:30までジョギングをしている.なぜその時間か?それは,6:30にラジオ体操が世田谷公園であるからである.脂肪が燃焼を始める20分以上のジョギングということで30分くらい以前は走っていたのだが,最初の20分は意味がないと聞くと,10分しか脂肪が燃えないのは悔しいということで,いつのまにか45分走ることになった.早朝6:30の世田谷公園は壮観である.おじさま,おばさまたちが100人以上すっと集まってきて,持ちあったラジオでラジオ体操をやっているのだ.私は明らかに最年少であるが,1日1回は体の全ての筋肉を緊張させようという理由で”全力”ラジオ体操をやっている.”全力”ラジオ体操とは,ラジオ体操と同じ体操なのだが,指先の伸ばしっぷり,ジャンプの高さ,回転スピード,全て全力なのだ.
そんな生活を続けている内に1人のおじさまを見つけた.そのおじさまは,世田谷公園のシンボルである噴水の塔を手前にとらえ,その後ろに広がる世田谷公園の空を毎朝写真を撮っているのである.最初は,たまたま噴水と空を撮っているのかな?と思ったのだが,この4ヶ月間毎日同じ構図で写真を撮っている.実は最近わかったことなのだが,そのおじさまは,世田谷公園から見える朝焼けを定点撮影している写真家だったのだ.毎朝時間が変わってくる朝焼けに合わせて,全く同じ構図でカメラを構え,空を観て,空を撮っているのだ.同じくその後はラジオ体操もまざってやっており,その回りの人の話しぶりからしても,どうやら有名人のようだ.そのおじさまは,4×5(4inch x 5inchの大きさのフィルム)の大判カメラを使って定点撮影をしている.ちょうど始めたばかりの大判カメラで疑問が何点か生じていたので,今日話しかけてみることにした(以前も何回か話してははいたが・・) 今日はその会話を通して感じたことを紹介したい.
そのおじさまは,写真雑誌ではなく,美術雑誌(油絵,水墨画,写真など,美術全般)に写真作品だけではなく,世田谷公園の定点撮影でのエピソードなども踏まえコラムとして掲載されるほどのすごい人だった.個人で写真展もやっており,その招待状の写真は,世田谷公園の空の雲が,冠を被った天女のような形をしており,そこに鳳の形をした雲が近づいているような綺麗な写真だった.そう,世田谷公園の空を単純に撮っているのではなく,朝焼けの色と,不思議な形の雲を追いかけている写真家なのだ.
今日は,ちょうど撮影のタイミングにお話をうかがうことができ,実際の撮影中も1つ1つ解説してくれた.雲の動きは空好きのミヤシタでさえも気が付かないほど,細かく感じ取り,ここがぱっと消えるとか,ここの雲がすっと移動するとか,本当に雲を生き物のように楽しそうに表現した.朝焼けの綺麗な色がでるのは1日でたった数分.その瞬間を毎日毎日そういう目で狙っているのだ.その刻々と変わる雲を,撮影に作業が多い4×5(大判カメラ:フィールドタイプ)を手際よく撮影していく.おじさまは,私と同様で完全な自己流写真家である(私は写真家じゃないけど・・).作品展をやるときに,誰に師事したのかと聞かれるのが一番頭に来るらしい.写真は師匠で決まるものではない.確かにそうだ.そしてその通りに,おじさまの写真は高く評価され,雑誌に今月も掲載されている.
このおじさまを通して,写真の見方をまた教えられた気がする.一番感じたことは,写真を追いかけずに待っていること.定点で毎日5分程度の時間を,良い光・良い色・良い雲が出るまで待ち,その瞬間を残しているのだ.逆に私なんぞ,どんどん前に出ていって,くだらない写真を連発している.決定的瞬間のとらえ方が,おじさまの受動的と,私の下品な能動的とで対称的だと思った.能動的な写真も絶対に良い写真は撮れると思うし,そういうタイプのプロの写真家もいると思う.しかし,私は”時間軸がない”のに,その空間だけでなく時間を残せるところに魅力を感じて写真をやっている以上,何となくおじさまのようなスタイルに憧れを感じてしまった.
写真家という地位を確立した写真家集団マグナム・フォト(MAGNUM PHOTOS).その創立者には,有名なロバート・キャパ(Robert Capa R)とアンリ・カルティエ・ブレッソン(Henri Cartier-Bresson)がいる.カルティエ・ブレッソンは,今でこそ普通に使う言葉であるが,”決定的瞬間”(The Decisive Moment)という言葉を初めて使った写真家である.カルティエ・ブレッソンは,全ての場面に決定的瞬間は存在し,「その瞬間は,こちらから望んではいけない.向こうからやってくるのをつかむ.それを待つ.」と言っている.そうブレッソンも”待っている”=受動的なのである.写真なんて人を真似てもしょうがないのだが,テクニック・写真技法を真似るのではなく,そんなスタイルは真似てみたいと思った.
一方,ロバート・キャパも素敵な言葉を数多く残している.自分がその中で好きなのは,「写真を芸術と言っている奴は,素人である」という言葉.プロの厳しさなどを述べたものであるが,やっぱり今みたいに自由に楽しく写真を続けるためには,素人のほうが良いなと思っている.
少々話がずれたが,今日のおじさまの話を聞いて,おじさまの空を観る目に大変感動してしまった.おじさまは明らかに世田谷公園からの空を最もよく観て,知っている人物である.私は宇宙の道で食っていくつもりであるが,宇宙(そら)に対する違った見方を教わった気がした.刻一刻と変わる宇宙を止まって見る.そんな新しい見方を自分なりに感じた日になった.つい話し込んでしまい,今朝は脂肪が燃焼していない.
こういう話の後にはガツンと強烈な写真を載せたいのだが,まだまだである・・.とりあえず,何か載せとこうか・・.決定的瞬間ということで,瞬間ではないが,”現在の三茶住民しかわからない”写真を(笑
対抗ティッシュ配り
お久しぶりです。休憩中@会社です。
写真が綺麗でいつも感心しながら見てます。
この写真につい笑ってしまいました。
必死なんですね。。。
mamiさん>
お仕事お疲れさまです!!!
写真・・・もうちょっと上手くなれるようにがんばります.何か撮ってほしいもの,まだ証明写真などあれば是非リクエストを^^)v
いやはや,写真わかりました?ルネ.必死です.
脂肪は燃えずとも、魂が燃えるようなお話でした(熱)!!!
空について熱く語り合う二人のシルエットこそ素敵な図です。
*miho*さん>
ういーありがとう!!本当に素敵なおじさまで良い出会いでしたわ.空は生きていることを実感しました.
早朝、三茶駅近くで会いましたね!
写真を芸術と言っている奴は,素人である
↑私にとっても身が引き締まる言葉です
ほろろさん>
三茶にいましたね!!
いやはや最近、三茶は気が抜けないです(笑
ほろろさん>
そうですね~。私はクリエイティブにいないので、素人っぽく気楽にたのしんでいきます~