先日、美濃焼を訪ねに岐阜県多治見市・土岐市周辺に行ってきました。とりあえず日本の有名所の窯元はいろいろ回ってみようかと。有名窯元と焼き物はウェブでいくらでも調べられますが、やはり数が多くてウェブを斜め読みしても頭に入りませんし、やはりどういう点に特徴があるのかよく分かりません。そこで、時間を見つけてはその土地を訪ねて、地元の美術館・博物館で歴史を学び、できれば窯元に赴き、地元販売店を回ってみようと思っています。先日も京都の旅で樂焼の美術館に行ってきました(参考:”茶の起源”を辿りに京都へ赴く(一日目))がやはり地元に行くと見聞が広がりますね。可能であれば、安価なその土地の作品(抹茶茶碗など)を買ってこられればと考えています。もちろん有名な焼き物の土地では人間国宝やら国宝・重要文化財で数十万・数百万越えは当たり前の世界ですが、安価な物でもその土地の特色が現れている茶道具を購入できれば行ってきた記念になるかなと。その特徴を掴んでおけば、茶の湯の先生の道具や、各茶事、美術館に行ったときに自分の物と比較して何が違うのかなどを分かるのではと思っています。ウェブだけ見ていてもよく分からず、実際に使って確かめないと違いの分からない古い頭の構造なもので・・・。
旅の目的:
1)美濃という土地を訪れる。
2)美濃焼の歴史を学ぶ
3)数多くある美濃焼の種類の見分けくらい出来るようになる
4)(可能であれば)美濃焼らしい、美濃焼を買ってくる。
さて、美濃焼ですが、美濃焼という総称の中に多くの焼き物名があります。瀬戸黒、黄瀬戸、志野、鼠志野、織部、黒織部、織部黒の有名どころから、美濃唐津、美濃伊賀など細かいところまで入れるとかなりの種類になるようです。そもそも愛知県瀬戸市の瀬戸焼と歴史的に一緒?(場所も近く)と判定されていて瀬戸黒・黄瀬戸に”瀬戸”という名前が付いていたようです。実際には、瀬戸焼とは別の系統だと分かり、瀬戸黒、黄瀬戸は”瀬戸”の名前がついていながらも、美濃の地オリジナルとのこと。美濃唐津・美濃伊賀なども、美濃と唐津のコラボと考えるよりは、美濃の地で焼いた唐津風などと理解するのが良い様です。
参考:美濃焼Wikipedia:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BE%8E%E6%BF%83%E7%84%BC
美濃焼といえば、現在の岐阜県の多治見市・土岐市に多くの窯元・ミュージアム・販売店があるのですが、どこに行くべきかの観光情報がネット上に極めて乏しいと言わざるを得ません。少なくとも多治見市と土岐市は分断されて情報が公開されているのと、そもそもそれぞれのサイトの情報が乏しく、どこに行けば良いのかなどがネットだけでは全然わかりません。是非、美濃焼の総本山サイトをつくって、場所・時間・オススメコースなどの情報をまとめて欲しいものです。
こういう焼き物の地を訪れるのに難しいのは、焼き物も用途や価格帯が多岐に渡っており、私の様に茶道具として陶器を見たい人か、一般ダイニング用途の皿などを探しているとかで見学したいコースが変わります。前者だったら、博物館で歴史を学び、できれば窯元で実際の釜の見学や体験、そして焼き物を買うのも、大衆焼き物ではなく、茶道具としての観点で集められたお店などを訪れたいと思っています。
実際には、多治見駅の改札降りた所の観光窓口で現地マップを頂き、そこで窓口の方にいろいろバスの時間などを聞くことができました。あの現地マップがウェブに上がっているわけでもないので困った物です。現地で聞けば良いじゃんと言われればそれまでですが、実際にどのくらいの時間がかかるかなど事前に分からないとスケジュールも立てられないなと。
参考にならなかったけど、一応関連サイト
私として、事前に関連場所をGoogle Mapsのマイプレイスにプロットしたので、一応紹介。
Google Maps マイプレイス “美濃焼巡り” :
https://maps.google.co.jp/maps/ms?msid=215077276734274781333.0004d31711ac372f393e3&msa=0
さて、スタートは多治見駅から。改札口出たところの観光窓口は行くべきです。この窓口機能がウェブに上がっていた欲しいものです(できれば、多治見+土岐を超越して)
多治見市美濃焼ミュージアム。 最初にここに行くのはオススメです。多治見駅から、周遊バスで向かうことができます。駅の観光窓口で300円チケットを買っておけば、一日で何度でも周遊バスに乗り降り可能なのでオススメです。1時間に1本程度なので時間は注意が必要です。
公式サイト:http://www.tajimi-bunka.or.jp/minoyaki_museum/
さて、このミュージアムで美濃焼の歴史の大半は学べるのでとてもよいミュージアムだと思いました。瀬戸黒・黄瀬戸から始まった美濃焼の歴史や、現代の日本国宝連発の現代美濃焼の作品が見られます。一度種類の違いが分かってしまえば大した事がないのですが、このミュージアムで実際に作品を見ることで、美濃焼の多くの種類の差がよく分かるようになりました。
この志野焼は、人間国宝の加藤孝造先生の志野焼です。ミュージアムには、簡易的な茶室的な空間があり、現代の人間国宝の人達の抹茶茶碗で薄茶を頂けます。正直、頂いた薄茶自体は残念なレベルと言わざるを得ませんが、加藤先生の茶碗を実際に使わせて頂き、いろいろ感じた事がありました。
さて、周遊バスの時間を見て、バスに乗り。
修道院前で下りました。この神言修道院(多治見修道院)は男性の修道士のみの修道院としては、日本でも珍しいようです。院内でブドウを作っていて自家製ワインなどもやっているようです。
修道院前で下りたのは、この美濃焼園という美濃焼の販売店を訪れる為です。この後に行く”本町オリベストリート”でも販売店は多いのですが、結果的には茶道具として考えた場合はこの美濃焼園はなかなか良い品揃えだと思いました。 店主もマニアックです。茶道具としての美濃焼の各種(志野・織部・・・)が5000円くらいから数百万円クラスまで数多く扱っているので予算に合わせて選ぶことができるでしょう。
美濃焼園サイト:http://www.minoyakien.co.jp/
さて、美濃焼園のサイトにも解説してありますが、美濃焼園は2つに売り場が分かれています。
この”美濃工芸館”は、美濃焼園のすぐ左隣に隣接しています。
美濃焼といえば、安土桃山時代に大成し・・と400年以上の歴史がありますが、現代の美濃焼の作家先生たちにも2つのベクトルがあると美濃焼園の店主は考えて居るようです。つまり、本来の歴史ある美濃焼を目指している伝統的な作家と、いわゆる現代の美濃という土地で新しいスタイル・自己表現している作家と。この”美濃工芸館”は、前者の古き桃山時代の伝統的な美濃焼を目指した作家の作品を集めて販売しているとのこと。このコダワリは美濃焼園のサイトにがっつり書いてあるので興味があればご覧くだされ。
これはどちらが良いかは好みにも寄るので甲乙付けがたいですが、私は工芸館の方で抹茶茶碗を選ばせて頂きました。今回の旅では、美濃焼らしい”志野焼”と、個人的に造形がかっこいい”瀬戸黒”をさがしていましたが、瀬戸黒の方は高価で手が出ませんでした。やはり、瀬戸黒は引き出さないといけないため、手間がかかり、多くは焼けず、そのあたりの関係でなかなか安い瀬戸黒はありませんでした。
さて、駅の観光窓口で聞いたところ、美濃焼を買うなら”本町オリベストリート”に何店か集まっているので・・と紹介されました。美濃焼園から少し距離がありますが、歩けない距離ではないのと、バスのタイミングが悪かったので徒歩で向かいます。
本町オリベストリートに到着。美濃焼の販売店が集まっています。
参考:多治見の観光スポット(本町オリベストリート始め、いろいろ紹介されている)
まずは、澤千でランチ。どうやらこの辺りは鰻で有名みたいですね。美味しかったです。
ランチ後、本町オリベストリートのお店を全て回りました。写真はその一つの”うつわ亭”
この”うつわ亭”さんは、お店も広く、綺麗で美濃焼のいろいろな物(食器など多数)扱っていました。茶道具以外の物は何でも揃う感じでした。
その他何店舗か見ましたが、やはり茶道具として見たときの品揃えは(個人的な感想では)イマイチでした。
結局、本町オリベストリートの各店舗を回り、そのまま多治見駅に向かって、(その途中でも一店舗あったかな)戻りました。
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今回は、ミュージアム、美濃焼園、本町オリベストリート全店舗を回りましたが、多治見の他のスポットといえば、市之倉地域です。市之倉さかづき美術館と、幸兵衛窯が有名です。今回は時間の関係で回れませんでしたが、是非次回訪れてみようと思います。幸兵衛窯の加藤亮太郎氏は、私の4つ上で歳も近く精力的に作品を作られています。先日、しぶや黒田陶苑でも作品を拝見しましたが、瀬戸黒の抹茶茶碗が非常に素晴らしかったです。
さて、家に帰ってきました。今回の旅は、岐阜市在住の友達と一緒に回り、写真の柿のお菓子をお土産に頂きました。早速、志野茶碗と共に。今回悩み抜いて買ってきた志野茶碗は、高価な物ではありませんが、なかなか良い形と色で良い感じです。何気なく選んだのですが、この旅の後に行った三井記念美術館で見た”国宝:志野茶碗 銘 卯花墻”と同じ模様でした(卯の花(宇津木)が咲く「垣根」)。単純にしっかりと模様が入っていて茶碗の正面がはっきりとしている方がいいかなと思って選んだのですが・・・・。
今回、窯元や土岐市の方には足を運べませんでしたが、美濃焼の歴史・種類に関してかなり理解が進みました。茶人”古田織部”と、美濃焼の織部焼が直接関わっていた事実は残っていないようですが、桃山時代の大茶人達がこの美濃の土地にいろいろな茶道具を注文していたのはおそらく間違いありません。その茶の湯と深い関わりがあり、歴史ある美濃を訪れたことはとても良い経験となりました。旅の目的の数多くある美濃焼を見分けるのは、おそらくできるようになったのかなと思っています。
次は、備前、萩、伊賀+信楽のいずれかを訪れようと計画しています。薄っぺらいウェブ知識を、実際に訪れて体験を伴う知識(体知識)に替えていきたいと思います。また、茶の湯に関してはウェブ全盛で、オンライン通販全盛のこの時代に、できるだけ現地の物は現地で購入するという指針で行こうと思います。ウェブですとSEOでしたり、無謀な価格競争なりで、前に検索されてくるのがテクニック面の傾向があり本質が伝わっていない可能性が高いので。
すごいですね。お家に茶道具が次々と増えていっているなと思っていたら、海外へ茶道具を持って行くなんて。また、帰国したら、もう多治見ですか。フットワークがいいのと、早いですね?私個人は楽家11代慶入の掛分黒楽茶碗のように黒にうまく箆をつかって黒模様、黒のグラディエーションが入ったのを作ってみたいなといつになるかわかりませんが思っています。引き続き楽しみにしています。
多治見に行ってきたのは、ウクライナ出張前の1月中旬です。記事の順番が前後してしまっていますね。
この連休は再び京都へ行ってきました。雪景色の京都きれいでした。
はじめまして。お茶道具を見に多治見に来ています。あまり情報がない中、旅の目的が全く同じこちらの記事はとても参考になりました。特に美濃焼園は、行ってみたらお休みだったのにもかかわらず、お店のご主人が開けてくださり、3時間もいろいろお話くださるなど素晴らしい出会いとなりました。諸事情で11月にお店を締めることになり、様々な思いがおありのようです。明日また伺って、工芸館の方も見せていただくことにしています。ありがとうございました。